『映画スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!』のネタバレ感想


ウエイトをしっかり絞ってやるべきことをやり抜いた、という感じの上映時間70分。
70分とはいえ、無駄肉が無いだけで、ボリューム感的には2時間強の大作と同等です。
メインの観客である幼女野郎たちにめいいっぱい楽しんでもらうために、
東映アニメーションが本気を叩きつけてきたぜ……っつーのが自分の感想。
退屈させることなく観客を惹き込んで、映画のテーマを、「感動」という心の動きに形態変化さ
せて伝える。日本よ、これが映画だ。


映画冒頭は、おなじみのライト解説。
その…なんだ、「ライトを持ってないお友達」については、もっとサラリと流してください(笑)
「心」という書字をバックにメッセージを下さるれいかお嬢様の心遣いはありがたくとも、
いや、まあ、嬉しいけどね、
ウン、その、あーゆー劇場において、自分のような者はなるべく息を潜めて、存在の気配を消
して映画を楽しみたいというか、そういうミッションなのだと思うのです。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

幼い頃、風ヶ丘で暮らしていたみゆきは一冊の絵本を手に取る。
花咲つぼみ並みに内気な女の子が、絵本をまねて笑顔を作ってみた ――― それが、星空み
ゆきという物語の大きな変換点であり、スマイルプリキュアという物語の始まり。
両サイドがお団子(和菓子)だった髪型も、チョココロネ(洋菓子)に換装。


世界の絵本大博覧会の説明をセリフでチャッチャと進めて、
みゆきたちが楽しむくだりは、オープニングの中で済ませる。
ハイ、世界の絵本大博覧会・完。

個人的には、各キャラのテレビシリーズのOP置き換えシーンで
キュアビューティの氷剣のシーンが、スイカ割りになってた所がツボ。
真面目な表情で、何かがずれてるのが青木れいかの魅力なのか。
しかし、
スクリーンから金角・銀角が抜け出してきた → 「今の3D技術はすごいですね」と素直に感
心する場面、ほけーっと見上げてて、危うく潰されるところだった。
なおが気が付いて引っぱってくれたから、ケガせずにすんだものの……。
ツッコミ担当のあかねにはハリセン装備で全力でやってもらわんと、この娘、いつか死ぬ。

序盤バトル、5プリキュアは属性モード全開で臨みます。
キュアビューティの氷塊砲弾×2や、キュアピースの電磁掌打など。
ほぼ数秒ですがサニー&マーチの体育系コンビの連携攻撃もありました。戦闘やビビるシー
ンでは本当に息がぴったりで羨ましいくらいな二人。

助けたニコに連れられて、絵本の世界へGO!
キラキラしたCGエフェクトな空間をフリーフォール。体育系コンビ、お互いの身体に抱きつきな
がら失禁寸前。この二人、「吊り橋効果」で、より深い仲になってしまいそう。

本日無料、絵本の主人公体験コース。
しかし、ニコの憎しみが物語の混乱を招く。笑顔抹殺作戦、始動!
カゲに操られた物語の主人公たちが、プリキュアに襲いかかる。
……が、ここで助っ人参上。
「西遊記」の牛魔王、一寸法師の青鬼、鬼ヶ島のオニ。
上映時間70分しかないのに、ここで新キャラ投入とは如何(いか)に?と思ったのですが、
特に牛さん、熱血的な性格とセリフで短時間のうちにキャラを立て、
脇役のポジションを越えないラインを堅持しつつ最後まで活躍、
観客にプリキュアと同程度の好印象を抱かせる。これはすごい。
「オマエたちの物語を、オマエたちがやめてどうする!?」
ここは任せて先へ行け…からの「さて、もう一暴れするか」など、牛さんのセリフの一個一個が
渋い。あと「牛さん言うな」とかもいい。


忘れていた記憶を取り戻したキュアハッピー。
全ては、あの日、絵本の中のニコと交わし、そして果たされずに忘れ去られた「約束」
キュアハッピーもさすがにスマイルじゃいられない……と観客誰もが思ったが、
キュアサニーこと日野あかね、推して参る!
起き上がったと思ったら、ぎゅっとハグをきめてハッピーを押し倒す。
他のメンバーびっくりですよ。第36話のブライアンって何やったん!?
「ハッピーが逃げるで♪ スマイルスマイル♪」
その前に、あかねの初恋の思い出が逃げてまうで…?
ちなみに押し倒したシーンで、二人の唇が重なっていたとかの情報が多数あり。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

クライマックスは、魔王の城。
カゲに操られた絵本の主人公たちが再び立ちふさがり、プリキュアを追いつめる。
倒れたサニーたちを「全部みゆきのせい。かわいそう」と哀れむニコ。
しかし、太陽サンサン愛妻パワー・キュアサニーが、そんな事言われて黙って寝てるわけがな
いのです。
「ウチ、みゆき好きやねん。好きやから、ちょっとぐらいボロボロになってもかまへん!」
これに以下ピース・マーチ・ビューティが続きます。「大好き」「愛してる」「わたしの嫁です」
身体が力尽きてなお、想いのパワーで立ち上がる。それがプリキュアだ!

序盤のVS金角銀角に続いて、「プリキュアらしさ」をぶち込んだ戦闘描写は燃えます。
女の子だから出せるカッコよさ。
桃太郎の振り下ろした刀の峰に舞い降り、靴の裏から凍結を伝播させて破壊とか。


ついに魔王登場。
さすが映画ラスボス、攻撃のエフェクトに重みがあります。
プリキュアも全開モードで挑みます。
ハッピーを呑み込もうとしたカゲの巨蛇を、ピースの全力サンダーボルトが内部から破壊、
次のカゲの巨蛇を、ビューティの天に向けて放つ手刀が一刀両断、
別の巨蛇を、サニー&マーチが烈火烈風の融合砲撃にて真正面から粉砕。

決着をつけるべくロイヤルレインボーバーストで挑みますが
巨大な闇のパワーで迎え撃たれてしまいます。不死鳥撃墜。

逆転のカードは、劇場の子供たちの手の中に。……そう、ミラクルつばさライト。
絶望を笑顔で塗りつぶせ。
「笑顔で包む愛の光」ウルトラキュアハッピー降臨。
空を翔(かけ)れば暗雲が消し飛び、地に降り立てば世界が花で満たされる。
ウルトラキュアハッピーの両手の動きに連動して、純白の羽が魔王を包み込み、
ハッピー空間へ連れ去ってしまいます。
ハッピー空間とは地軸を操作して生み出された一種のブラックホールで、
そこではハッピーの説得能力が3倍に強化されるのです。
「笑顔最高ッスよ。ねっ、魔王さん」 → 魔王陥落。早っ。

笑顔の輪から外れていた魔王も、最終的にはニコたちと一緒に輪の中に入ることが出来て大
団円。

ラスト。
かつてニコからみゆきへと伝えられた笑顔は、より大きなハッピーとなって、
ニコのもとへ帰ってきました。
ニコの絵本に生まれた新たな白紙のページ。
そこに描いていくのは、誰もが笑顔になれるハッピーエンド。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

さて、物語がハッピーに幕を閉じましたが
しかし、ひとつ大きなミステリーが残ります。
ニコの絵本のラスト数ページを破いたのは誰か?

映画内では何の情報もありません。
……が、猫塚は自分なりに考えてみた。犯人は魔王。

本来の絵本のラスト、ニコを捕らえた魔王が普通に倒されてハッピーエンド。
絵本のエンディングにニコたちの笑顔があっても
そこには魔王の笑顔は無かったのではないだろうか?
本当は魔王もニコたちと一緒に笑いたかった。
幸せそうに笑う皆が羨ましかった。それは絵本に対する憎しみとなり、
そんな結末なら無いほうがいいという呪いとなり、魔王の闇の力を増幅させた。
現実の絵本のページを引きちぎれるほどまでに。

結果、生まれたのは、笑顔の失われた、永遠に結末の来ない物語。
こんな感じではないだろうか、と。