蝉時雨 01


 8月の半ば、午後に差し掛かった日差しの中でセミが盛大に合唱を続けている。
 夏の風物詩たる求愛の唄 ――― そう言えば聞こえがいいかもしれないが、街を席巻する鳴
き声は警報ベルのごとき騒々しさ。ただでさえ暑い夏の熱気をいっそう駆り立てていた。


 降り注ぐ陽光に雪城家の屋根は焼かれるように熱せられ、屋内の気温は36度にまで達して
いる。ジッとしているだけでも汗が滝みたいに出てくる。扇風機の風量も『強』にしているが、閉
め切った部屋の蒸し暑さには到底かないそうにない。
 ここは、まるでサウナだった。
「ふうっ…」
 雪城ほのかが、本のページをめくる指を止めて、汗でびっしょりと濡れた太い眉をぬぐった。
 豊かな黒髪はつやつやしく、雪の色めいた白い背中を流れ落ちている。
 美しく整った目鼻立ちに加えて、月光のように澄んだ表情。
 手にした本の文字を追う眼差しは、部屋の暑さにも負けず涼しげで、瞳には奥ゆかしい聡明
さが宿っている。それがこの白皙の令嬢に知性的な魅力を与えていた。
 可憐な細身を彩る白い乳房のカタチも美しい。大きさはまだ発育途中だが、瑞々しい軟肉が
胸の前で綺麗な稜線を描いている。
 15歳とはいえ、腰の辺りは既になまめかしい色気を匂わせていて、尻部の丸みから太もも
にかけての肉感は、見る者の情欲を煽(あお)ってしまうだろう。

 全裸での読書。
 惜しげもなく晒した裸身を、熱い汗の粒が幾つも流れ落ちていく。
 さっきから彼女の腰掛けた椅子の身じろぎがやまない。ほのかが本から目を放さず、ペチリ
と軽く叩いて静かにさせようとするが、びくっ、びくっ…と余計にうるさくなる。
「……お水飲む?」
 ようやく視線を本から外して、尻の下へ話しかける。こちらもほのかと同じくらい汗をかいてい
て、熱中症が心配だった。
 ほのかが腰を浮かせて、水滴のまとわりついた2リットル入りのペットボトルを手にした。中身
のミネラルウォーターはまだ冷蔵庫に入っていた時の冷たさを十分に残している。
 ペットボトルのキャップを外し、飲み口を近づけていくと、椅子が「そうじゃなくてぇ…」と切なげ
に訴えてきた。それでも唇にあてがってやると、おいしそうにゴクゴク喉を鳴らして飲む。
 ほのかは、彼女のそういう素直なところが好きだった。
(……座り心地も結構よかったし)
 四つん這いの姿勢を取らせた全裸の少女へたっぷりと甘い眼差しを注いで、ほのかが表情
をほころばせた。

 美墨なぎさは椅子ではない。スポーツ好きの健康的な15歳の少女だ。今日は、ちょうどいい
姿勢だったということで座られてしまった。それだけである。
 狐色の髪は小ざっぱりとセミショートの長さに抑えられて、彼女の持つアクティブな魅力を損
なわないようにしている。
 まぶしい太陽の下が似合う顔立ちは人懐っこそうで、しかし強い意志を瞳に乗せた瞬間、頼
り甲斐のある表情に颯爽と変化するのだ。ほのかのハートが何度篭絡(ろうらく)されたこと
か。
 均整の取れた肢体は基本的に無駄な肉がなく、胸や尻のやわらかな丸みが彼女を女の子
だと証明するばかり。
 スマートに引き締まった裸身は汗にまみれていて、激しい運動直後のようだった。

(汗まみれのなぎさって、なんかいじめたくなっちゃう)
 ほのかがざわめく胸を落ち着かせ、再び座りなおして本に目をやった。しかし、椅子がこまか
く揺れるせいで文字が読みづらい。
「なぎさ」
 パシッと尻を叩く。一瞬は動きが止まったが、すぐにモゾモゾと腰を動かし始める。
「ねえ、ほのかぁ、いいでしょぉ……」
 両ヒジと両ひざを床に着いて、水平にした背中でほのかの体重を支える。 ――― この姿勢
自体がツラいわけではない。両手首は手枷で拘束されているが、これも問題ない。
 ただ、ガマンできないのが……肛門に塗られた薬のかゆみ。
 ほのかを背中に乗せたまま、びく…びく…びく…と小さく腰を悶え動かす。
「これ、すごく効く……かゆくて、あぁんっ、たまんないっ…うう〜〜っ」
 手枷を繋ぐ鎖がカチャカチャと音を立てる。今すぐ尻に手を回して、かゆい部分をぼりぼり掻
きたいのに、それが出来ない。

 虫刺されの数倍のかゆみをもたらすが、人体には一切無害な塗り薬。
 別になぎさはお仕置きを受けているわけではない。これは、ほのかが二人の夜の営みに特
殊な華を添えるために作った薬の臨床試験だ。
 ほのかは絶対に大丈夫だと人体への安全性に自信を持っているが、それでも彼女のカラダ
に使う前に、なぎさがまず自分のカラダで試させることにしたのだ。
 結果、ものすごくかゆい。たまらなくかゆい。
 人体に影響はなさそうだが、狂いそうなほどかゆい。
「ねえ、ほのかぁぁ……薬のテスト終わりにしようよ〜〜?」
 尻の穴を責め抜くかゆさに耐えきれず、なぎさが尻をガクガクと揺すった。
 ほのかが「そうねぇ…」と考え込むふりをしてみせる。実は10分ほど前に、なぎさの尻たぶを
割って、ひどいかゆみにビクビク収縮している可愛い肛門をチェックして何の異常も出ていない
ことを確認している。この臨終試験は、いつ終了しても問題ない。
「じゃあ、あと5分経ってからもう一度チェック。それで異常が出なかったら終了しましょ」
「あぁぁ〜んっ、あと5分なんてありえなぁぁいっっ」
 淡白な口調のほのかに対して、情けない悲鳴を上げるなぎさ。
 心の中で、小悪魔なほのかがペロリと舌を出した。
 多少の罪悪感はあるけれど、せっかくだし……あとちょっとだけ、なぎさがかゆみに悶える姿
を愉しんでいたい。 
(でも、なぎさも限界かしら?)
 さんざんガマンを続けてきた彼女だが、かゆみをこらえることを放棄してしまったらしい。太も
もを交互に動かして、腰を盛んにくねらせ続けている。
「なぎさ」
 静かな呼びかけとは裏腹に、なぎさの尻を躾(しつ)ける平手打ちには容赦が感じられない。
引き締まったヒップの丸みが、パンッ!と景気よく鳴る。
 なぎさが「くぅん…っ」と気持ち良さそうな上げた。マゾヒズムに酔っているのではなく、ぶたれ
た痛みによって、肛門のかゆさが多少紛(まぎ)れたらしい。
「ほのか、これいい……もっと……」
 ぶって、となぎさが尻を揺すってみせた。

 ほのかが本を閉じる。クスッ、とやや意地の悪い微笑が口もとをかすめた。
「いいわよ。なぎさを屈服させるのは、好き」
 背中から下りたほのかが、なぎさの尻を正面にしてひざを着き、さっそく右手を振りかぶっ
た。
(遠慮なく、思いっきり!)
 健康美あふれる尻肉の丸みを打ち据え、パンッッ!と強めの音を響かせた。
「ふうッ…、んっ…」
 なぎさが四つん這いの姿勢でうめく。白い尻の表面 ――― 平手打ちを食らった部分がほん
のりと赤く染まっている。
 パンッッ!
 続けて尻がぶたれる。ビクンッ!となぎさの尻が跳ねる。さらにもう一発。
 パンッッ…!
「ああッ…、あーッ、もっと叩いてぇっ」
 スパンキングの痛みが尻に響いて、この狂いそうなかゆみをごまかしてくれる。尻穴のかゆさ
に悶える腰を後ろに突き出して、おねだりするみたいにモジモジ動かす。
 けれど。
「駄目、ぶつのは終わり。手が痛いもの」
「…は?」
「なぎさのお尻が固すぎるのよ。叩いたわたしの手のほうが痛いじゃない」
「じゃあ、あたしのお尻はどーなるのよぉっ!?」
 右手首から先をプラプラさせているほのかの前で、びくっ、びくっ、びくっ…と小刻みに悶えて
いる腰に目をやり、ほのかがおざなりに実験を終了させる。
「観察完了。お尻の穴には異常ないみたいだし拭いちゃうわね」
「うん…、何でもいいから早くしてね」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 

 ヒクヒク悶えているアナルを一撫でするように、筆の毛先がスッと這った。なぎさの短い悲鳴と
共に、びくんっ、と腰が飛び跳ねる。その汗ばんだ尻の反応を面白がるように、ほのかの手が
動く。
 ススッ…。
「ひひゃはぁぁ…っ」
 四つん這いの姿勢から突き出された尻が情けなく左右へ逃げ回る。ペチンッ、とほのかの平
手がそれを軽く打ち据え、ジッと出来ないなぎさを叱る。
「こーらっ、なぎさ、動かないの!」
「む…むりだってばあ。くすぐってないで早く拭いてよぉっ」
「だから拭いてるじゃない、この筆で」
 かゆみ薬の効果は、いまだ顕在だった。こそばゆさに耐えかねてキュキュ…ッとすぼめられ
た肛門へ、筆先を再びスス…スス…と滑らせる。
「うはあぁぁあああ…っ!」
 うぞぞぞぞぞ…っ。
 なぎさの背中を言葉に出来ない感触が駆け抜けた。アスリート選手のように美しく引き締まっ
た腰が、ほのかの目の前でガクガク崩れそうに震える。
「うあっ…うううっ、なんで筆で……もっと…ちゃんとした紙か何かで拭いてよぉ」
「駄目。お尻の穴はデリケートなんだから。こうやって低刺激なタッチで、優しく ――― 」

 コショ…コショ……。

「ひいいいいっ!」
「もう、ラクロス部のエースでしょ、なぎさは? もっと頑張って耐えて」
「ラクロス関係ないしぃっ、あぁ〜んっ……ありえなぁ〜いっ」
「ほら、逃げちゃ駄目よ」
 びくんっ!びくんっ!と暴れる尻をほのかが押さえつけた。柔らかな筆の毛先が、排泄の小さ
な穴をほじくろうとねちっこく動き続ける。
(ふふっ、なぎさには悪いけど……たのしいっ♪)
 お尻の穴がデリケートだから筆を使って ――― などというのは、言うまでもなく口実。ほのか
好みの均整の取れたしなやかな肢体が、ろくに抵抗も出来ずに悶えさせられている姿は興奮
を誘わずにはいられない。
「ねえ、もっと優しく拭いてほしい? ほら、なぎさ……ねえねえ、ほらほらぁ。ふふふっ、お尻動
かして逃げちゃダーメ♪」
 かゆみにうずいている肛門を、サディズムな筆使いが責め立てくる。「くうっ…」となぎさが声を
詰まらせてうめいた。

 ビクッ! ビクッ、ビクッッ! ビクッ!

 突き出された尻が激しい痙攣に襲われる。
「ああーっ、ああ゛あああ……、これ以上ヤダぁ…、もう終わりにして、ほのかぁ」
 哀願する声に混じる悦びの響き。
 両手を拘束されたまま虐(いじ)められるのに興奮して、全身が熱くてたまらなくなる。股間か
らはネットリと分泌液が垂れ始めていた。
(でも…! お尻のくすぐったさ……限界っ……)
 薬のかゆさと筆先のこそばゆさによって、腰から先が悶え狂っている。これ以上続けられた
ら正気ではいられなくなりそう。
「ううううう、お尻…、お尻かゆいよぉぉぉ……」
 かゆい。
 かゆい。
 かゆい。
 両目に涙を浮かべた顔がブンブンと左右に振られる。
「ほのか、何でもするからっ…許して……」
「やだっ、なぎさったらぁ、そんなに遠慮しなくていいのよ」
 ほのかはニコッと笑って、なぎさの訴えをあっさり流した。もちろん、彼女の肛門を筆先で撫で
続けながら。
「こうやってなぎさをオモチャにするのって、しあわせ……」
「ほのかの鬼ぃっ! 悪魔ぁっ!」
「そんな口をきく子には……うふふっ♪」
「あっ、あああっ! ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」
 ――― スポーツに励んでいる健全な思春期のカラダを、筆一本で陥落させてしまうのは痛快
だった。ほのかが執拗な筆責めを行い、若々しい尻を跳ね踊らせる。
(なぎさ、そろそろ本気で泣いちゃうかしら……? ふふっ、かわいいっ)
 そろそろ慈悲をかけてやる頃合だと思い、手にした筆をクルリと返して、木製の柄の先をぴ
たりとなぎさの肛門に添えてやる。
「うわぁっ!?」
 さっきまでとは違う感触に驚いて、なぎさの腰が、びくぅっ!と飛び跳ねた。しかし、それが何
か分かると自分から尻を振ってこすり付けてきた。
「…………っ」
 恥も外聞も気にしていられない。なぎさがせわしなく尻を動かして、かゆみに犯された肛門を
ゴシゴシこする。
 その様子はひどくあさましくて ――― 。
 普段はまるで太陽の申し子のように溌剌(はつらつ)としている少女が見せる堕ちた姿に、ほ
のかがゴクリ…とツバを飲んだ。腰の奥で性欲が昂ぶる。
「なぎさ、わたしがちゃんと拭いてあげる。その代わりに ――― なぎさの膣(なか)をメチャクチ
ャにさせて」

 透明なソフト樹脂のディルドは双頭タイプだ。二人が繋がって気持ちよくなれるよう、なぎさや
自分の膣を何度も指で調査してから手作りした張形(はりがた)。やや反り気味のそれを秘唇
にあてがって、ほのかが官能的な溜め息を洩らした。
(ん、きもちいい……)
 なぎさをいじめてサディスティックな興奮に昂ぶったせいで、少女の性器はすっかり濡れそぼ
っていた。トロトロに熱くぬかるむ肉の襞が、挿入されるディルドを愛おしく締め付ける。
 ぶるっ…。
 早くも歓喜が裸体を貫く。
 自分を愉しませる側を膣に収め、双頭ディルド本体に付随するハーネスで腰に固定。なぎさ
の後ろで両ひざを着き、もう一方の先端を四つん這いの姿勢で突き出された腰へ向ける。
 アナルに塗りこんだかゆみ薬はきれいに拭き取ったものの、まだ少しムズムズした感覚が残
っているようだ。健康的に引き締まったヒップの丸みが小さく上下にひくついている。
(………………)
 微妙に誘惑的な腰の動きに、ほのかのイタズラ心が軽く刺激された。
「な〜ぎ〜さ?」
「ひっっ!!」
 尻たぶの割れ目に、ぴとっ、と添わされたディルドの先っぽ。なぎさがとっさに腰をよじろうとし
たが、両手で押さえつけられてしまう。
「早く自分で挿(い)れないと、変なところに入っちゃうわよ? ふふふっ」
「やだっ、ありえないっ!?」
 明るい声音で告げられた内容に、なぎさが顔を引きつらせた。
 ほのかの装着している双頭ディルドから尻穴を逃がすように腰を上げ、その人工物を股の間
へと招く。ソフト樹脂の固さを感じながら、なぎさがゆっくりと腰を使い出す。
「んっ…、後ろ向きだと、ちょっと挿(い)れづらいかも……」
 ディルドの先端に熱くとろけた秘貝を押しつけ、ぬるり…ぬるり…と滑る感触にじれったさを
覚えつつも、なんとか膣口へと導くことに成功。
「ンッ、ンンンンッ……」
 指よりも太い異物を、ぐっしょりと濡れた性器の奥へうずめてゆく。膣内を満たす固い感触
に、汗だくになった裸体がブルッ…!と震えて、よろこびを訴えた。
(これ…好きっ! ほのかと一つに繋がってる……!)
 なぎさの膣壁がきゅうっと収縮する動きが、双頭ディルドを通じてほのかの膣(なか)にも伝わ
る。指や舌では味わえない、大切な部分で深く繋がってしまう感触。二人の少女の背に、恍惚
の震えが走る。
「わたしたち、一つだね、なぎさ」
「うん…、あっ、ほのか動いた……」
「今のは別に動いたってほどじゃないでしょ? そんなに動いてほしいなら、今からたっぷり動
いてあげる」
 ほのかの両手が恋人の尻を強くつかむ。なぎさが反応して「アアッ…」とうわずった声音で喘
ぐ。優しく開始された腰使いに乗せて、閉め切った部屋に二人の嬌声が響きだした。