逢 瀬 01


「それにしてもさー、せつなってば嘘つくのうまいよねー」
「えっ?」
「あたしや美希たんもブッキーも、三日間ダマされっぱなしだったもん。せつながまたラビリンス
に戻っちゃう ―― って。
 実はラビリンスの再建もすっかり片付いてて、これからはずっとこっちにいられるんだよね」
「……………………」
「そうだよね?」
 何も答えられなかった。
 短い休暇としてもらった三日間。
 今日はその最後の日。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 

 控えめな音と共に、わずかにドアが開かれる。
 猫でもなければ通れないほどの小さな小さな隙間から、ぬるまった夜気が忍び入ってくる。
 桃園ラブが「んっ…」と小さくうめいて、半ば眠りに落ちていた意識を揺り起こした。
 真っ暗い寝室の内側。廊下へと続くドアの隙間からこぼれる光景もまた真っ暗。
 ベッドに横たわっていた少女が、上半身を起こしながら笑いかける。 ―― 誰もが親近感を
覚える、世界中の幸せをギュッと凝縮したみたいな笑顔。
「そんな所に突っ立ってないで入ってきなよ、せつな」
 中学三年生になり、女性らしさを帯びつつある思春期のカラダ。一年前、二人の少女が出逢
った頃よりも、胸の辺りの肉付きは良くなっている。反面、ウエストは無駄なく引き締まってい
る。すらりと伸びる四肢も同様だ。日々のダンスのレッスンをさぼっていない証拠だった。
 静かにドアが開かれてゆき、人ひとりが通れるスペースが生まれる。でも、そこでもまだため
らう気配。
「…………」
 ラブは何も言わず、彼女が入ってくるのを待ってやった。もし、彼女が入ってこずに立ち去る
のなら、その選択もちゃんと尊重してあげたい。

 待つこと数十秒。
 ようやく決心がついたのか、白磁の顔(かんばせ)をやや俯(うつむ)かせつつ、少女がラブの
部屋に入ってきた。
 ラブを燦々と振舞う太陽とするならば、いかにも生真面目そうな月のイメージ。故郷再建に向
けて働いているせいか、同年代の少女よりも大人びた雰囲気をまとっている。
 東せつなの姿は、ラビリンスに戻る前とあまり変わっていなかった。元より少女として美しく完
成された肢体の持ち主であったのだ。
 かつてラビリンスが<管理国家>であった昔は、前線で任務に当たる精鋭だったから、厳し
い節制が骨身に叩き込まれている。しなやかな細身のプロポーションは、平和な時期を経ても
一向に崩れていない。
 ただ以前に比べて、少女の身体に美しく芽吹いた第二次性徴の証しが、彼女をやわらかな
印象で包んでいた。
 髪も、少し伸ばしてみた。
 今年の春先、帰郷する前の最後の夜に、ラブがベッドの中で、その墨を流したように黒い髪
を指で何度も梳(す)きながら、
「せつなの髪は綺麗だね。ずっと……こうやってさわっていたいくらいだよ」
 そう言って褒めてくれたから。

 夜目のきくせつなは、ふとラブの髪に目をやって「あっ」と小さくつぶやいた。
 フワッとしたボブの髪は、頭の両サイドに、ぴょこっ、とシュシュで束ねられてアップさせられて
いたから。アクティブさを感じさせる、いかにもラブらしい髪型。
 せつなの視線に気付いたのか、ラブが「えっと……あはは」と明るく笑う。眠る者の髪型では
なかった。さっきまで、せつなが来てくれるのをずっと待っていたのだ。
 だんだんと増してきた眠気(ねむけ)の誘惑にあらがえず、ついベッドに潜ってウトウトしてし
まったけれど。

「…………」
 せつなが、入ってきた時と同じく、静かにドアを閉じた。言葉は無い。赤いパジャマ姿でラブの
ベッドに歩み寄り、その縁にそっと腰掛ける。
「…………」
 ラブのほうも何も言わない。ピンク色のパジャマをゆっくりと脱ぎ始める。
 せつなも、手を動かして、微かな衣擦れの音を部屋に響かせる。
「……前から思ってたんだけど」
 ラブが、暗闇の中でもはっきり分かるせつなの白い背中へ、チラッと眼差しを這わせて続け
る。
「せつなって、いっつも下から先に脱ぐよね」
「…え?」
 きょとんとした表情になって、せつなが振り向く。先にワイヤーなしのブラジャーを外そうとして
いるラブとは違い、自分はショーツの両側に指を差し入れ、軽く腰を浮かした姿勢で既に太もも
の半ば辺りまで下ろしてしまっていた。
「…………」
 なんだかよく分からないが、急に恥ずかしさを覚え、ショーツを穿きなおした。そして、ラブをま
ねてブラジャーから外しにかかる。
「…どうして今まで教えてくれなかったのよ」
 ちょっと恨みがましそうなセリフを口にするせつなに、ラブが眉尻を下げて「たはは…」と笑
う。
「別に間違いってワケじゃないから」
 そんなやり取りをしているうちに、二人とも生まれたままの姿になる。
『ちゅっ…』
 唇同士を重ね合わせる、軽いキスの音。二日前、最初の休暇の日にイジメられた感触が、
せつなの中で早くもうずき始める。

「入るわよ」
「うん」
 掛け布団を軽くめくって、せつなが裸身を滑りこませる。ラブの体温がこもっていて、ほんのり
とあたたかい。自然と手を取り合って、向かい合わせに横たわる。
 裸同士。まだカラダも重ねてないのに、くすぐったいような感触。イケナイことをしているという
自覚はあるけれど、嬉しさがこみ上げてきてしまう。
「ラブ…」
 せつなの呼びかけに反応して、ラブが両目を閉じる。
 さっきよりも長めのキス。
 お互いの唇のやわらかさに酔いしれる幸せ。それをたっぷりと味わう。
 離れたせつなの唇が、恥ずかしそうにつぶやく。
「ガマン……できなかったの……」
「ふ〜ん。 ―― ってことは」
 うっすらと瞼(まぶた)を開いたラブが、その瞳にくすぐったくなるような笑みを湛えて、せつな
の両脚の付け根に手を差し入れた。まさぐる指先が、熱い湿り気を帯びた部分にたどりつく。
「……しちゃったんだ」
「か、軽くよ」
「どんなこと想像しながらやったの?」
 ラブが裸体を寄せながら尋ねる。せつなが恥ずかしそうに目をそらすが、それでも視線によ
る追求をやめない。ついにせつなは自白した。
「おとといの夜の……アレ」
「アレって?」
 カァ〜っとせつなの顔が赤らんでいく。だからこそ、ラブはあえて聞き返したのだ。
 羞恥心を募らせているせつなに、イジワルな追い打ちが仕掛けられる。
「ねえ、せつな、アレって何? ちゃんと言って」
「ラ、ラブがやったんじゃないっ。わたしが恥ずかしいからやめてって言ったのも聞かずに…」
「何が恥ずかしかったの?」
「お…お尻を……舐められるのが……」
「お尻の ―― どこ?」
 せつなが観念したように両目をつむった。そして、声を震えさせて答える。
「お、お尻の ―― 穴よ」

 これ以上ないくらい顔を真っ赤にして、せつなが口をつぐんだ。恥ずかしい記憶がありありと
脳裏によみがえる。掛け布団の下で、もじっ…と裸身をくねらせた。
「わたしは、そんなところ嫌って言ったのに……」
 ラブの手がわき腹に伸びてきた。くすぐったさに、自然と甘い声でさえずってしまう。
「あっ…やだっ…」
「せ〜つなっ」
 子犬のようにラブがじゃれ付いてくる。飼い主を困らせて喜ぶ、いけない子犬だ。
 やわ肌を舐める指先は、腰の後ろへと滑ってゆく。
「…やっ! こら、ラブっ」
 お尻のやわらかな丸みを滑り落ちていこうとする手の平を、せつながパシッと後ろ手に払う。
「どうして? ……気持ちよかったのに?」
「ラブって…その……そういうのが好きなの?」
 赤らめた表情に困惑の色をにじませて、せつなが恥ずかしがる。ラブの裸身にぴったりと素
肌を重ねて、その背中におずおずと両手を這わせた。
 ぎゅっ。
 そのやわらかな身体に抱きついてみる。
(ラブのカラダ……あったかい)
 はむっ…と唇でくわえたラブの耳たぶを、軽く引っぱっておねだり。
(ハイハイ、わかってるって。せつなはコレが欲しいんだよね)
 ギュッ…!
 きつく抱きしめ返されると、一糸まとわぬ少女たちの裸身が、さらに強く密着。お互いの体温
の熱さに、官能を高ぶらせる。
「あたしはただ、せつなをね……どうやったら一番いじめられるかなぁ…って」
「それでお尻?」
「恥ずかしかったでしょ? あんなところ舐められながら、せつなはず〜っと……」
「……だ、だって、わたし…………」
 そう言って顔を伏せる。思い出したせつなの裸体が、ぷるぷると羞恥心に震えた。
 おとといの夜、ラブの優しい指使いと丹念な舌使いをたっぷりと全身に浴び続けて、完全に
力の抜けてしまった肢体が、抵抗むなしく裏返されてしまったのが始まり。
 ラブが、ぐっしょり汗ばんだ尻肉の谷間に顔を押し付けて、口にするのも恥ずかしい場所に
対して舌を使い始めたのだ。せつなが『キュッ』とお尻の穴をすぼめた。

 ――― ひっっ…? 嫌よ、そんな所……やめてっ、ラブッ……

 もちろん、彼女の懇願は聞き届けられない。
 汚いと感じている部分を、細やかな舌の動きに舐め洗われてゆく。むずがゆいような……じ
れったくなるような刺激だった。排泄に似た感覚がうずいてくるのが物凄く恥ずかしい。
 まるで、その瞬間をラブに覗かれているみたいだと思うと、拷問にも等しい恥ずかしさがこみ
上げてきて、枕にしがみついて羞恥の涙をポロポロと流してしまった。
 それでも、後ろの穴をイジメ抜くみたいに激しく舐めまわされたり、また、ねっとりと舌先で愛
撫されたりしている内に、せつなの顔は『ポ〜ッ…』と法悦の色に彩られ始めた。
 時折、「やめて」と洩らす声からは、抵抗の響きがすっかり失せていた。
 お尻の穴を舌で責められながら、同時にしどけなく濡れた秘所をラブの指にいじりまわされ、
せつなの理性があやふやになるまで、くり返し、何度も絶頂の感覚を味わわされた。
 日付が変わって夜明け近くまで、せつなのプライドを粉砕するような恥戯に彼女の下半身は
もてあそばれ、朝になった時には、自分ではまともに歩けないほど足腰がフラフラになってい
た。

「ラブは……むちゃくちゃやりすぎるのよ……。やっと取得できた休暇なのに、あのせいで二日
目なんて夕方までベッドから起きられなかったし……」
「たははっ、でも、その日はあたしが付きっ切りで看病してあげたじゃん」
「わたしが感謝してるなんて思ったら、大間違いよ」
 せつなが大きく溜め息をついた。
「美希とブッキーがお見舞いに来てくれた時、こっそり隙を見て、掛け布団の上からお尻つっつ
いて遊んだでしょ。……もう、それされる度に思い出しちゃったんだから!」
「せつなが顔を真っ赤にするから、二人とも余計に心配しちゃってさ ――― 本当のこと知った
ら、きっと大爆笑だったよねっ」
「ラ〜〜ブ〜〜?」
 羞恥と怒りの入り混じった表情が詰め寄ってくる。ラブが反射的にその顔から逃げる。
「こらっ、目をそらさない」
「…ハイ」
「本当に、ちゃんと反省するのよ?」
 せつなが声を和らげて、自分から優しく唇を重ねにいく。
『ちゅっ』
 キスの音を響かせたまま、二人の唇はやわらかに結ばれ続けた。
 この行為を何よりもの証拠として、二人の心が甘やかに溶けてゆく。

 せつなはラブが好きで。
 ラブはせつなが好きで。
 
 離れた二人の唇は、彼女たちの"愛情の熱さ"にすっかり蕩けていた。
(でも、全然物足りないや……)
 ラブが、せつなから強引にキスを奪う。なされるがままに、せつなは唇を預ける。
『ぢゅっ…ちゅ…ぢゅぢゅっ……』
 やわらかな唇が、執拗なキスでむさぼられる。せつなはラブの腕の中で悶えながら、従順に
唇を差し出し続けた。そのいじらしい態度がますますラブの興奮を高めたのか、唇の吸われ方
も激しくなってきた。
「ンッ…んんっ!」
 せつなが息苦しさのあまり首を弱く振るが、唇は解放してもらえない。
 ゾクゾクぅぅっ ――― 。
 せつながたまらなくなって、ラブの背中を狂おしく撫でまわした。もっとしてほしい、と訴えてい
るのだ。
(ラブとキスしたままだったら死んでもいいっ!)
 せつなの無抵抗な唇が、淫らなくちづけに嬲られて ――― 女としての悦びを募らせてゆく。
(んっ…)
 唇を割ろうとする、つややかな真珠みたいな感触。それがラブの舌だと分かると、せつなは
当たり前のように口を開いた。
(早く来て……ラブぅ……)
 せつなが舌を喘がせて待つ。
 ぬるり…とした熱い感触。唾液にまみれたそれがせつなの舌を捕らえて、絡みついてくる。瞬
間、せつなが両目をギュッとつむって、裸身を軽く痙攣させた。
「んんーっっ!」
 びくっ…びくっ…と、せつなの裸身に断続的に走る快感のわななき。彼女に密着しているラブ
が、それを全身で感じ取った。
(せつな……簡単にイッちゃった……)
 まずは軽く絶頂を迎えたせつなが、汗ばみ始めた裸体を『ぎゅうううっ』とラブの身体に押しつ
けてくる。しっかり抱きしめてくれるラブの腕の中で、ぶるるっ…と震えて快楽に溺れる。
(ん〜ん……カワイイよぉ、せつなっ)

 せつなを休憩させるために、ラブがゆっくりと彼女の口から舌を引き抜く。 ――― すると、せ
つなはイジワルされたと言わんばかりに切なく、とろん…とした表情になって、
「あん、だめぇ…ラブぅぅ…」
 今度はせつなのキスが、ラブの唇に『ちゅっ』という甘い音を響かせた。そのまま乱暴に舌を
差し入れてくる。
(せつな強引……)
 ラブの口の中で、二人の舌がちろちろと舐め合いながら愛し合う。
(あたし、もっとせつなを感じたい)
 ラブのほっそりした右脚が、もぞっ、と動き、せつなの美しい両脚の間にもぐりこむ。
(アッ…!)
 せつなが、ぶるっ…とカラダを震わせて、それに反応。ためらうように、ぎこちなく、ラブの身
体に被さるように体位を変えて、しなだれかかる。
「……しても…いい?」
 せつなが蚊の鳴くような声で訊ねる。
 ぐりっ。
 ひざで軽く刺激されたせつなが、鼻にかかった喘ぎを洩らした。
「あンッ……もお、ラブったら……」
 いとおしそうにぼやき、せつなが情欲の疼きにたぎっている腰を這わせた。

 ダンスのレッスンで磨き上げられた太ももの感触。そのむっちりとした太さを、両脚の付け根
辺りで挟みこんで、グッと締め付けてみた。
 濡れそぼった恥部が、吸いつくように密着。その感触だけでもう、また達してしまいそうにな
る。
 ゾクゾク…ッというわななきが、少女の全身に走った。
(こんな風に…ラブのことを欲しがっちゃうなんて……ウウッ…)
 せつなが心の中でうめきを洩らした。否応なく突きつけられる自分のあさましい感情が、ナイ
フのように胸に食いこんでくる。
 ラブが、ねちっこく絡み合わせていた舌を解いて、唇を離した。
「せつな……早く踊ってみせてよ……」
 彼女の淫らな催促に、鼓膜がとろけた。せつなの気高い理性は一瞬で地に落ちる。
「精一杯がんばるわ」
 せつなが上半身をギュッと密着させたまま、ゆっくりとしたペースで腰を使い始めた。ラブの
太ももの表面を舐めるように軽やかに、時には『グッ!』と強く押し付けながら。
 健康的な弾力に満ちた太ももに、ねっとりと愛液を塗りたくり……ラブの真っ白い太ももを脳
裏に描きつつ、それを汚す倒錯感に酔いしれる。
「ねえ、ラブ。わたし、ちゃんと踊れてる?」
「うん、せつなの腰……いやらしくて、いい」
 背中を抱くラブの両腕が、するすると滑り落ちてゆく。
 その行く先を感じたせつなが「アッ…!」と声を上げた。
「だめよっ、ラブっ!」
 せつなが大きく瞳を見開いて、いじらしい表情で抗議する。
 さわっ…と腰の後ろを撫でたラブの手の平が、さらに下へ。
「でもね、せつなの場合、ここをイジメてあげたら、もっといやらしく踊れるんじゃないかなぁ?」
 嫌嫌と頭(かぶり)を振るせつなをいじわるく無視して、量感のある彼女の尻肉をムニッ…と
つかんで、左右に割り広げた。
「ああっ…、お願いっ、ラブ、明日帰れなくなっちゃう」
 せつなは切なげな表情で、尻の穴をキュゥゥ…ッと可愛らしくすぼめる。ラブの指が来たら、
簡単に揉みほぐされて陥落されると分かっていながら、無駄な抵抗を試みてしまう。
「ふ〜ん、お尻はやめてほしいんだ?」
 とっさにせつなが首を縦に振る。ぐぐっ、と尻を割る手の力が弱まったのを感じて、ホッとした
色が表情に戻ってくる。
「じゃあ、その代わり、あたしからのプレゼント貰ってくれる?」
 ラブの言葉に軽く胸を弾ませて、せつながあっさりとうなずく。
「うん。ほしいわ」
 ……ラブの瞳の奥底に沈んでいる、悪意ともいえる感情には気付かない。

 カタチの良い臀部から離れた両手が上がってきて、密着するカラダの間にスルリ…と潜りこ
んできた。せつながくすぐったそうに身をすくめて、物欲しそうな声を洩らす。
「ラブ…、あっ、あっ…んっ……ンッ!」
 せつなの胸をいらうラブの両手は、搗(つ)き立ての餅のような軟らかさを味わっていた。同時
に瑞々しさに弾ける果実の肉感も。白い軟らかな皮膚の下に、たっぷり詰まっているのが指に
伝わってくる。
「せつな、ラビリンスに戻る前よりもおっぱい大きくなってる」
「ラブが……あの日、いっぱいイジメてくれたから。そのおかげかも」
 丁寧な手つきで、ゆったりと乳房を撫でまわされる感触を愉しみながら、うっとりした表情で答
えた。帰郷前の最後の夜、まるでミルクをねだる幼子のように一生懸命胸にむしゃぶりついて
いたラブを思い出して、せつながクスクス…と甘ったるく笑う。
 即座にラブがまぜっかえしてきた。
「でもさぁ、たった一晩でこうはならないよねぇ、せ・つ・な?」
 せつなが視線をそらして、「だって…」と口ごもる。
 言い訳めいた表情を作り、せつながベッドに両手をついて上半身を起こした。ラブの裸身の
上で軟らかく潰れていた乳房がたわわとこぼれて、なまめかしく揺れる。
「わたし、ラビリンスに戻ってからも……ずっと、ラブとしたことを思い出して……」
 乳房を下からすくい上げるみたいな手つきで、ラブが優しく揉みしだいてくる。やっぱり自分の
手でするよりも何倍も気持ちいい。
「せつなのおっぱい、白くてフワフワ。マシュマロみたいだ〜…」
 ラブが両手を裏返して、手の甲でも軟らかさを味わう。
 なめらかな皮膚の感触と、その内側の溶けているような軟らかさ。さわっていると、まるで生
クリームで両手を洗っているみたいな……。
「ねえ、ラブ、今度は口でしてほしいの……」
 せつなが右手で髪をかき上げ、あだっぽい口調でおねだりしてきた。いつの間にか止まって
いた腰の動きも、緩やかに再開させた。ラブの太ももをぬめらせた愛液を潤滑油にして、前後
にゆっくりと滑る。 

「ほら、せつな、おいで」
 乳房から離れた両手が、せつなに向かって大きく広げられた。
 せつなが裸身をずらして、胸の位置をラブの顔の前まで持ってくる。
「ラブに舐めてもらうのを想像しながら、自分で何度もさわった……」
 少し寂しげな表情で、せつなが告白した。ラブへ向けた眼差しには、たまらないほどの愛しさ
を募らせていた。
「でも、ぜんぜん物足りなくて、いつも満足できなかったの」
 ほんのり薄桜色を刷(は)く乳輪の中心で、ぷっくりと充血した乳頭がラブの唇を待ちわびて
いた。彼女の吐く息がそこにかかっただけで、カラダが我慢できないほど卑猥なうずきを覚え
る。
「あぁぁ……うぅ…」
 完全に溶けてしまった声を、口からこぼした。
 ちゅっ…。
 ソフトクリームを味わうみたいな、甘いくちづけ。
 せつなの乳首が、花びらのようにやわらかな唇についばまれる。
「ふああああ……っ。あんっ、ラブうぅぅぅ」
 鳥肌が立つような感覚を全身に走らせて、ぶるるる…っっと激しく身を震わせた。快感として
は弱くても、それを補って余りある『想い』が彼女の情欲を狂おしく昂ぶらせる。
「ふふっ、せつなってば、すごく反応してる。……じゃあ次はね、こんな事しちゃう」
 ぺろっ…ぺろっ…。
 まずは優しく乳首を舐めてから、くりくり…クニクニ…と舌先で飴でも転がすみたいに刺激。
「あはァァッ!?」
 せつなの背筋が、ビクンッッ…!とそり返る。若々しい乳房が、ぶるんっ、と跳ねてラブの口
から離れた。
「ハァ…ハァ……そうよ、これが……わたし、欲しかったの」
 うっすらと汗ばむ白い肢体が、掛け布団の下で妖しくうねった。今度は反対側の乳房をラブ
の口の前に持ってくる。
「こっちにも……ちょうだい」
 腰を這う『ぞぞっ』とした感覚が止まらない。白い裸身を支える両腕のヒジは、今にも崩れてし
まいそうだった。
 せつなが荒く息を乱して、はしたない要求を口にする。
「もっと…さっきよりも乱暴に舐めてっ。ラブの舌で…乳首が溶けちゃうくらいがいいのっ!」
 閉じた両瞼(まぶた)の上で長い睫毛(まつげ)をピクピクと震わせて、表情全体を淫らな期待
で染めた。
「そうだね。プレゼントの前に、ちゃんと準備しないと」
 熱い息を吐くラブの口が、差し出された乳房の先端を「かぷっ」とくわえた。
「ううう……っ」
 せつなが裸身をわななかせて、全身に歓喜の陶酔感を行き渡らせる。
 ラブの口が『ちゅうううっっ…』と部屋いっぱいに音を響かせ、乳頭をきつく吸引。
 胸先が乳輪ごと引っぱり伸ばされる感触に、せつながググッ…と裸身を弓反らせて、歓喜の
ままに喘いだ。
「くっ! あああああーーーーっっ………、そうよっ、ラブ、もっとめちゃくちゃに……!」
 腰の奥で、びしょびしょに濡れた恥肉が『ビクッ!ビクッ!』と痙攣しているのが分かる。もう
上半身を支えてはいられなかった。
 両ヒジが、かくんっ、と落ちた。白い乳房をクッションにして、ラブの顔面を軟らかに押し潰す。
 感じすぎて、せつなの両目の端から涙がこぼれていた。
(だめっ……これ以上気持ちよくされたら、頭真っ白になっちゃう……)
 ハァハァ…とせわしなく息継ぎするせつなの口が「うっ!」とうめいた次の瞬間、真一文字にき
つく結ばれた。
 全力疾走後のように熱くなった裸身の下で、さらに強く『ぢゅぢゅッ…ぢゅっ…!』と乳首を吸
われる音が鳴ったからだ。
(だめぇっっ、本当に意識が飛んじゃう!)
 ずいぶんと感じやすくなったカラダ以上に、心が貪欲に飢えていた。ラブと離れ離れになって
いる間、ずっと物足りない自慰でごまかしてきたのだ。
 激しいめまいのような感覚に続いて、理性が真っ白く塗りつぶされる。
 胸にむしゃぶりついているラブを乱暴に引き離し、唇をぶつけるみたいにキス。
「ラブッ…ラブ……んっ……むぐ……はぁっ、ラブぅぅ…む…ンッ……あぁっ、ラブッ!」
 ラブの名を何度も口にしながら、彼女の唇を大きく割って、舌を求めた。ピチャピチャピチャと
鳴り響く音が、その後に続いた。狂ったようにラブの舌が舐められる。