逢 瀬 02
「ん〜〜〜〜〜……っ! ぷはっ」
長すぎるくちづけが終わると、ラブの口もとが愉快そうにほころんだ。がっついてくるせつなの
姿が、おかしかったらしい。
(せつな……)
荒く息を乱して喘ぐ彼女の唇を、今度はラブのほうから奪いにゆく。せつなを一層昂ぶらせる
ための演出として、わざと乱暴に。
「……〜〜〜っっ!」
せつなが声にならない歓喜をキスで伝えてきた。
お互いの唾液でネトネトになった舌同士が、濡れた音をいやらしく響かせて絡みあった。
(大好きだよ、せつな)
ラブの汗ばんだ手の平が、せつなの頭をギュッ!と抱いた。黒髪に指を這わせて、何度も激
しく手櫛を通した。その度に「ンッ…ンッ…」とうめいて裸身をピクピク震わせる彼女が、反則的
にかわいらしいと思った。
『じゅっ…ぢゅっ…じゅるっ……ぢゅうぅっっ…ぢゅう〜〜〜……』
大きな音を立てて、やわらかに蕩けた唇を吸い合う。
主導権を握っているのは、ラブのほう。せつなはよっぽど気持ちいいのか、涙のしずくをラブ
の顔にポタポタ落としつつ、従順に唇を重ねてくる。
(せつな……。いい子、いい子…)
子供に対してするみたいに、そっと頭を撫でてやると、嬉しさをにじませて、熱くなった裸身を
すり寄せてきた。
「…ねえ、せつな、もっといい子いい子してあげよっか?」
「うん。して」
濃厚なキスを解いた唇が優しくささやくと、せつなが素直にうなずいた。
愛情のこもった手の平の感触。せつなの綺麗な黒髪を慈しみながら撫でてくれる。
(もっと、もっと撫でて。わたし、ラブのために、もっといい子になるから……)
母親にすがりつく幼子(おさなご)の表情で、うっとりと全身から力を抜いてゆく。
……けれど、どんなに童女のごとく純真に振舞おうとも、じくじくと下半身に疼いている淫猥な
悦びをガマンできるはずもない。
「せつな、そろそろいいかな?」
熱っぽく耳朶(じだ)に吹きかけられたささやきに、より淫らな快楽を求めて首を縦に振る。
二人の少女が貪るようにキスを続けながら、ベッドの上に上半身を起こした。
「…………」
ラブがキスでせつなの注意を引きながら、枕のそばへ手を伸ばした。
揃えておいた道具は、どこの家にでもあるようなプラスチック製の洗濯バサミが二個。赤い本
体の側面を、キラキラと輝くデコレーションシールで飾り付けてある。
何回も使用したが、バネの強さはまだ新品同様。
クリップタイプのギザギザした先端が挟む力は強い。
――― せつなのために、用意したんだよ。
せつなの手の平に、無機質な硬さをグッと押しつける。予想通り、違和感を覚えたらしく、戸
惑いの反応が返ってきた。
「これは?」
「せつなのね、おっぱいの先をコレで飾っちゃうの」
「……これ、洗濯バサミでしょ?」
せつなの困惑した口調に、ラブが「フフッ」と微笑を添えて補足する。
「そうだよ。コレで挟まれたら、すっごく痛い。だから、せつなにプレゼント」
ビクッ、とせつなの手が震えて、二個の洗濯バサミを落としてしまう。ラブの手が静かにそれ
を拾って、再び彼女の手の中に戻した。
即座に拒否。せつながラブの手に洗濯バサミを押し返そうとする。
「あたし、せつなを許してないから」
普段と変わらぬ表情と口調で発せられた言葉。
一瞬だけ、せつなの呼吸が止まった。
決して大きな声ではなかった。
けれど、ラブの言葉は、せつなの鼓膜に重く残響する。
ラブから手渡された二個の洗濯バサミを、のろのろ…と、力の入らない左手で握り締め、ニコ
ッと笑顔を作ってみせた。
「……ありがとう。じゃ、もらうわね」
「着けるの、手伝ってあげるね」
「ええ、お願い」
「それじゃあ、まずは ―― 」
ラブは、せつなと目を合わせようとしなかった。
ほっそりした肢体に、美しい稜線の彩りを添える胸のふくらみ。そこへ、ラブが唇を寄せる。
せつなが「あっ…」とこぼして、白い乳房を揺らした。
『チュッ、チュッ…』という軽い響き。
小鳥がついばむみたいに、胸の先っぽを吸われる。
(ンッ…、あ…気持ちいい……)
自然と心の中で甘い声が洩れてしまう。しかし、左手の内側にあるプラスチックの感触が…
…。
ラブが口を離して、せつなの乳首を指でクニクニとこすって確認する。
「もう少し固くしてからのほうがいいかな。……せつな、貸してくれる?」
せつなの左手から、洗濯バサミが一個だけ取られた。
ラブの手が洗濯バサミの挟み口を広げ、スー…っと乳房の丸みに這わせてきた。
「うう゛ッ……!」
せつなが嫌悪感のこもった声を洩らして、ビクッ、と顔をそむけた。
(こんな、洗濯バサミなんかに……)
ラブの指でもない、口でもない。
ぬくもりのない、ただの『モノ』による辱め。
ギザギザした感触が、充血した乳首をなぞり上げた。途端、鳥肌立つような不快感が、ゾワッ
と胸の先を這いずった。
(ラブのことを考えていよう……)
プラスチックの嫌な感触を、少しでも和らげるために。
「だいじょうぶだよ、せつな。まだ痛いことしないから。そのまま楽にしてて」
ラブが洗濯バサミのギザギザした部分を優しく乳首に這わせ、細(こま)やかに手を動かす。
「 ―――― ッ!」
せつなが、ビクッ!と裸体を震わせて、眉間にきつくシワを寄せた。表情には恍惚と嫌悪の
入り混じっている。
抵抗の気配は無い。しかし、屈辱的な拒絶反応が白い裸身に滲み出ていた。それを嗅ぎとっ
たラブの手つきは、陰険さを増して、せつなのカラダを征服にかかる。
「ふ〜ん…、痛いのがこわいんじゃなくて ――― こういうのでされるのが嫌なんだ」
敏感に喘ぐ薄桜色の乳頭を、ギザギザしたプラスチックの愛撫で、ちょんっ…と下からすくい
上げる。可愛らしく、ぴくん、と身体を震えさせて、せつなが「あっ…」と口を割った。
なまめかしく尖った乳首を、洗濯バサミの挟み口を使って上手にくすぐってくる。プラスチック
の感触は不快なのに、ラブのやり方がいやらしくて感じてしまう。
「う…うっ…く……」
屈辱の反応は、ついにせつなの声からも洩れはじめた。
「せつなのおっぱいの先、どんどん固くなってるよ? ほら…ほらほらぁ……、ねっ」
コリコリしている乳首の感触を、洗濯バサミを通じて味わいつつ、ギザギザの部分を使って、
とてもゆっくりとヤスリがけするみたいに手を動かしてゆく。
せつなが、くっ…と喉の奥で喘ぎ声を押し殺した。
しかし、そんなせつなの意思とは裏腹に、感じきっている乳房の先端を交互に洗濯バサミで
いじられて、まだ成熟前の美しい肢体は、ぴくんっ…ぴくんっ…と悩ましく跳ね悶えている。
「だめっ……嫌っ、ラブの指のほうが…いい。ふぁっ…」
切ない喘ぎに交じって、懇願に近い響きの声が口からこぼれた。
「やめ…て……、こんなっ…洗濯バサミなんて。……嫌よ……気持ち悪い……」
「大丈夫。あたしの手の動きに集中してみて。せつなの気持ちいい部分を、いやらし〜〜く可愛
がってあげてるの……わかるでしょ」
「んっ…」
責め苦に耐える聖女のような白い貌(かお)が、色っぽさを刷(は)く。
洗濯バサミなどという道具に屈しているのではなく、ラブの手にもてあそばれているのだと思
うと、せつなの全身は一気に甘い感覚に支配されていった。
さらにせつなの左手から、もう一つの洗濯バサミも回収された。
「こんな風にされたら、せつなはどうなっちゃうのかな〜〜?」
今度は二個の洗濯バサミが、シンクロした動きで左右の乳首を優しくなぶり上げてくる。
「あンッ……あ、アッ、ラブっ、そんないやらしい……」
「洗濯バサミ…、まだ嫌い?」
「やっぱり…ラブの指のほうが……」
「ふ〜ん? こうされても、そういうこと言ってられるかなぁ〜♪」
「はッ…うっ、そんなっ…グリグリしちゃ…アッ! ああぁ…んぁぁっ!」
プラスチックの硬さで刺激され、白い乳房の先端が微電流を流されたごとく疼く。
せつなが両胸のふくらみを挑発的に揺らして、恍惚の吐息をこぼした。
「次はね、せつな、大きくあ〜んして」
言われた通り口を開く。
左の乳房を責めていた洗濯バサミが持ち上げられ、せつなの口の中へ……。
「うっ…嫌っ!」
せつなが、あからさまな嫌悪を示して顔を後ろに引いた。
「だめだよ、せつな。ハイ、もう一回大きくあ〜んっ」
洗濯バサミが ――― プラスチックの感触が唇に押し付けられた。
大切な部分を汚されたような気持ちで、せつなが涙のにじんだ瞳でラブの顔を見返す。
「せつな、あ〜んは?」
子供を諭すみたいな優しい声。でも、まっすぐ重ねてくる視線が、逆らえない圧力となる。
「……はい」
せつなが観念して、再び口を開いた。……いや、開かされたというのが正しいか。
差し込まれた洗濯バサミが、せつなのツヤっぽい舌を捕らえ、そのギザギザした挟み口にく
わえこむ。口の中いっぱいに広がる嫌悪感。
「ゆっくり……するからね」
ラブの言葉に無言でうなずく。
プラスチックの『歯』が徐々に、しかし、容赦なく舌に食い込んでくる。初めて味わう痛み。
「ん、い…」
「せつな、痛い?」
ラブが洗濯バサミのリングに、くいっ、と指を引っかけ、せつなの舌を引っぱりだした。痛み以
上に、道具によって言いなりにされている屈辱感で、せつなは頬を涙で濡らした。
「……………………」
しゃべれなくなった少女が、そっと両腕を持ち上げ、ラブの腕に触れる。抵抗では無い。許し
を乞う動作とも違う。ただ触れているだけの、か弱い仕草。
それでも、こうやってラブのぬくもりを感じている内は、つらいことにだって耐えられる。
「今のせつなの気持ち、あたし、わかるよ」
洗濯バサミで挟まれた舌を、無様に引き出されているせつなの横顔に、一瞬の優しいくちづ
け。
すぐに唇を離して、洗濯バサミのリングにかけた指を強く引いた。
「…あ゛ッ!」
せつなが苦鳴を洩らしたのは、パチンッ、と音が鳴った後だった。洗濯バサミが外れても、そ
の痛みは舌に残り続けている。
「ねえ、もっと……せつなの嫌がることしていい?」
「いいわ。でも、それをする前に……おねがい」
「うん」
せつなが、つっ…と舌を可愛らしく突き出した。
両目をつむってすぐに、ラブのやわらかな唇が甘やかに添わされた。洗濯バサミに痛めつけ
られた舌を、ラブの唇が、キス以上に優しく這う。
ほっそりした白い肉体をおののかせて、ラブの舌使いに酔う。とろん…、と表情がとろけ始め
た所で、無情に舌は離れていった。
「あ……」
代わりに、洗濯バサミの ――― プラスチックの感触が、せつなの黒髪に添わされた。まるで
神経に直接虫を這わされたみたいな怖気(おぞけ)がこみ上げて、ぶるっ、と裸身が震えた。
「いやっ…」
「目を閉じて……集中して。ちゃんと記憶して、この感触……、ホラ、せつなの綺麗な髪が、洗
濯バサミなんかに……」
ラブが褒めながら指で梳いてくれた髪が、今はぬくもりのないブラッシングでなぶられている。
愛情に包まれた思い出が、安っぽい感触に上塗りされていく。
せつなの胸を悲しみの針が突いた。目尻から頬へ、辱められた涙が静かに伝い落ちる。
(今のせつなの涙……、あたし、知ってる)
白磁の頬を無残に濡らす涙の線を、人差し指の背でぬぐう。
せつなが可憐に睫毛を震わせて両目を開いた。
「ラブは ――― 」
感情が削げ落ちた声。しかし、その響きは、はっきりと分かるほどに震えていた。
そして、そこから先をせつなが口にするよりも早く、彼女の言おうとしていた言葉を、ラブが泣
きそうな声で続けた。
「あたしはね、洗濯バサミで……するのがっ……」
ラブの手から、洗濯バサミが落ちる。
惨めさにうなだれて、唇を開いた。
「………………」
けれど、どんなに頑張っても声が出てこなかった。
――― ラブは洗濯バサミでするのが気持ちいいの?
気持ちいい。そう答えようとして、ラブの ――― どこかが砕けてしまった。
あふれだした涙で双眸を濡らしつつ、せつなの顔をまっすぐに見つめた。
「あたし、せつなが憎い」
せつなの全身から、淫らな熱っぽさが少し引いた。興奮が冷(さ)めたのではない。ラブに感じ
ている愛おしさは1ミリも揺らいでいない。
むしろ、母親が我が子に覚えるような、無償の慈しみが彼女の胸を締めつけてきた。
「………………」
無言。
全てを許すような眼差しを優しく細めて、ラブの手から落ちた二つの洗濯バサミを拾い、そっ
と彼女の手の平に返した。
「このプレゼントを、早くわたしにちょうだい」
一糸まとわぬカラダを、惜しげもなくベッドの上で晒しあいながら……。
ラブの全てを受けとめたい。せつなは、ただ、そう思った。
自分を「憎い」と言った少女の頭を、最大限に愛情を込めた柔らかい手つきで撫でる。
触れられた瞬間、ビクッ!と身をすくめたラブが、徐々にその身体の強張りを解いて、不思議
そうにせつなを見返してきた。
「せつな…?」
「ラブ、いい子、いい子……」
きょとんとした顔が、急に両眉をハの字に落とした。ぎこちない苦笑と共に。
「いい子って言われても……、あたし、せつなに痛いことしようとしてるんだよ?」
「そうね、じゃあ、悪い子、悪い子……ふふっ」
今度はそんなことを口にして、さらにラブの頭を撫でてくる。
ラブの表情が、軽く泣きそうに崩れた。
「せつなを憎いって言ったの……嘘じゃないの」
幸せそうな微笑を浮かべるせつなが、黙ってうなずいた。
ラブが顔を少しずつ寄せながら、胸の底に溜まっていた苦しさを吐きだしてゆく。
「あたし、ラビリンスに帰るせつなを笑顔で見送った……。
ラビリンスの人たちと一緒にがんばっているせつなの姿を思い浮かべてね、最初はそれでい
いんだと思ってた……。けどね…けどね……、
やっぱり無理だった。せつなと離れ離れなんて…、だって、せっかくあたしたちっ……」
「わたしも……」
桃園ラブの熱い吐息に、東せつなの唇が重なってきた。
やわらかさに溶け合った二つの唇は、すぐに元の位置に戻る。
「……でもね、ラブ、仕方ないの。わたしはラビリンスに対して責任を取らなきゃいけないの。ど
んなにラブのそばにいたくても……」
「それなら、どうしてあたしを一緒に連れて行くって言ってくれなかったのっ!?」
「言えるワケないでしょう!? ラブを連れて行ったら、お母さんやお父さん、それに美希やブッ
キー、ミユキさんたちだって……」
「ああっ、そっか! せつなって、あたしよりみんなの気持ちのほうが大切なんだ!」
「そんなこと言ってないッ!」
「…うぅ……うわああぁぁあ……うあぁぁぁああぁぁあん……」
子供みたいに癇癪(かんしゃく)をぶつけてきたかと思うと、いきなり声を大にして泣き始め
た。来年には高校生になる乙女が、恥じらいも無く、まるで赤ん坊のようにただ泣きじゃくる。
「ラブ……っ」
胸の中でごちゃ混ぜになった愛情と母性に、少女の体が突き動かされた。両腕が伸び、ラブ
の白い裸身を力いっぱい抱き寄せる。
あたたかくて、やわらかい。ラブの全ては、せつなにとって<宝石>だ。『憎い』と洩らした言
葉さえも愛せてしまう。
「安心して。今夜は何をされても、絶対にラブから離れないから」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ちろっ…。
まぶたの上を這った舌の動きに、ラブが「んっ」と洩らして、くすぐったそうに身じろぎする。そ
の時だけ、ほっそりした腰の後ろと背中にまわされたせつなの手が力強さを増した。
ラブを逃がすまいとしているかのように。
ゆっくりと間隔をあけて、また次の舌が来る。
「ン…、もういいよ、せつな……」
ぺろっ、と鼻の頭を舐められた。
……ラブが大泣きしてから、20分近くもの間、
ずっとこうやって甘ったるく顔を舐められながら、あやされているのだ。
「もう泣かない?」
「う…ん…」
あごの下を舌先でなぞられているラブが、微かにうなずいた。すでに全ての涙の跡は、せつ
なの舌にぬぐわれてしまっていた。
最後は、二人の唇が熔けそうなほど熱烈なキス。
ようやく、せつなの顔が離れる。カラダ同士はくっついたままだが。
ラブが手の平に包んだ"プレゼント"をギュッと握りこんだ。そして、悔悟の言葉。
「せつなのこと……憎いなんて言って、ゴメン」
しかし、せつなはゆっくりと首を横に振る。
「駄目よ、まだ」
ラブの腰に回していた手を解いて、洗濯バサミを握るラブの手に、そっと重ねた。
まだ、わたしを憎み続けなさい ―― 淑やかにそう促(うなが)している。
「わたしはもっと…ううん、『もっと』じゃ物足りない。ラブの全てを、今すぐ欲しい」
白い顔(かんばせ)をあでやかに彩る花の微笑。
ラブが、ごくり、とツバを飲みこんだ。
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと…………、
自分でしている時も、ラブと一緒にしている時も、
胸を占めているのは、彼女への想いただ一つだけ ――― 。
全身を溶かすほどに沸き立たせてくれる快感も、相手がラブだからこそ。
「洗濯バサミの痛みも……ガマンする。その代わり、今日はとことん付き合ってちょうだい」
カラダが熱い。
口の中にじんわり広がる、ラブの涙の味。胸で脈打つ心臓が、少女のほっそりした裸体に、
性欲を激しく波立たせる。
せつなの白い肢体がなまめかしい白蛇のように、ラブの裸身にまとわりつく。上気して汗ばん
だ肌がなすり付けられる感触。
ぞくっ…、
ラブの唇が半開きになって、濡れた舌を覗かせた。
(あたしも……せつながほしくてたまらないよ)
心も、そして腰の奥深くに響く淫らなうずきも、素直すぎるほどにせつなが欲しいと言ってい
る。唇を重ね、ねっとり熱く舌同士を舐め合わせただけで、「あっ!」とラブが喘いで、腰をガク
ガク震わせた。
「…………」
熱い唇を離したせつなが、意地悪そうに目つきを細めて、ラブの顔を眺める。
何も言わない。ただ、ラブの背中をすべり落ちる右手の平が、引き締まった腰をなぞって、身
体の前方へ……。美味そうな肉付きの太ももに挟まれた濡れ場に指を走らせる。
「あっ…ああ」
軽い絶頂を響かせている最中のぬかるみをまさぐられて、ラブが切なげに裸体をわななかせ
た。
「ラブ、駄目よ、この程度で降参しないで」
淫靡な悦びに濡れる秘所を細指で弄びつつ、左手をラブの頭に添わせて、シュシュで束ねら
れた左右の髪を解く。きついアップから解放された髪に、せつなが愛しげに指を絡ませた。髪
形が変わっただけで、ラブの醸す色香は、グッと悩ましさを増したように思える。
「どうしたの、ラブ? ほら、憎い相手よ、わたしは……」
吸い付くように密着していた裸身を離して、いやらしく汗にまみれた肌を見せつける。
興奮を濃厚に滲ませた眼差しとセットで挑発。
だが、ラブが潤んだ瞳でせつなを見返して、弱々しげに首を横に振った。そして、顔をうつむ
かせて、せつなの視線から逃れる。
「だめ…ごめん、やっぱり出来ない。痛いもん、これ……」
「そんな理由でわたしを許すなんて、許せない。さあ、早くそれをプレゼントして」
ラブの髪を力強く何度も梳いていた左手が、彼女のあごの下に回り、くいっと上を向かせた。
端麗な美貌に浮かぶのは、かすかな嗜虐の色。痛い目に合うのは、自分のほうだというの
に。
糸に引かれるマリオネットのように、意志を感じさせない動きでラブの手が持ち上がる。
ぎこちなくためらう手が、かたちの良い乳房を……やわらかな肉の重みをそっと下から持ち
上げる。もう一方の手が洗濯バサミの口を開いた。
「…………」
罪悪感が、ラブの口を重く閉ざす。
せつなの顔には、嫌悪感と淫らな期待。
胸先で固く尖っているのは、欲情しているとは思えぬほどに美しい乳頭。真珠のようになめら
かな硬さを匂わせる、つぶらな突起。
ギザギザした挟み口が、軽く触れてきた。せつなが「うぅ」と短くうめいて、呼吸を乱した。洗濯
バサミが、敏感な先端を奥深くまでくわえ込んだのをじっと見つめる。
「せつな……本当にいいの?」
せつなは「いい」とも「駄目」とも言わず、ただ興奮した瞳で、これからひどい目に合う乳房を
見下ろすばかり。
乳首の付け根が、ジワジワと硬い圧力に潰されてゆく。皮膚の薄い乳輪ごとギザギザしたプ
ラスチックの口に挟み搾られる。
「う…くうぅ…痛…いぃ……」
こんなにも敏感な部分で、初めて味わう拷問的な痛み。せつなの眉間にシワを刻んで、表情
を悩ましく崩して喘ぐ。
「ほらぁ、だからあたし、痛いって言ったのに……」
ラブが、洗濯バサミのリングに指を引っかける。
グイッと乳首が引っぱり伸ばされる感触に続いて、パチンッ、と洗濯バサミが乳房の先端か
らすっぽ抜ける。一瞬遅れて、ヤスリと化したギザギザの挟み口に強く擦られた痛みが、充血
した乳首を駆け抜けた。
「アッ…ア゛ッ! ああッ、うああぁっ……」
せつなの色白の裸身が、強電流を流されたみたいに激しく痙攣する。たおやかな細腕が、自
分のカラダを守るように胸下を抱く。
「…痛い? せつな、痛いんだ……痛いでしょ」
畳みかけてくるラブの言葉。
胸先の突起を痛みに貫かれているカラダが、その言葉に反応して、ビクッ!と怯んだ。
(感じすぎて敏感になってるから、痛みも凄いのね……)
プラスチックの硬さが、再び乳首の先をなぞる。……なぶりものにされる屈辱感。同時に、背
筋を妖しく這いのぼってくる別の何か。さっきの痛みを、もう一度期待している。
……今度はゆっくりやってくれなかった。
バヂッ、と洗濯バサミが乳首に噛みつく。容赦ない痛みに、せつなの裸身が跳ねる。
「ひぐっ! あはぁっっ……!」
苦鳴がせつなの口を突いた。もう見ていられなくなったラブが声を張り上げる。
「ねえっ! もうやめるよ、せつなっ」
「駄目っ、駄目……、ラブ、続けて…。こっちにも…ちょうだい……」
苦痛と甘美さが混ざり合った声。反対側の乳房も悩ましげに揺らして差し出す。
「ラブと同じに……なりたいの。……いっぱいしたんでしょ? 洗濯バサミで……」
身体の熱さが治まらない。むしろ、蒸し暑いほどの興奮が全身の肌にまとわりついていた。
「おねがい。…ねっ?」
子供を諭す母親みたいな顔で、もう一つの洗濯バサミを握るラブの手を、優しく両手で包んで
持ち上げた。胸もとに視線を落とし、乳首に噛みついている洗濯バサミを眺める。
「これ、キラキラしてて綺麗ね。ラブが飾り付けたの?」
「せつなのイメージに合わせて赤い洗濯バサミ…、それだけじゃ寂しいかなと思ってデコシール
使ってみたの。宝石みたいでしょ?」
二人の熱い唇が、キスで結ばれた。せつなの両腕が脱力して、ゆっくりと下がってゆく。けれ
ど、その二つの手に持ち上げられていたラブの手は留まり続ける。
せつなと唇をむさぼりあいながら、ラブが途切れ途切れの言葉をつむぐ。
「ん…ンッ…。あのね…、せつながいなくて……ンッ、寂しくて……、つらくて……、逢いたいけ
ど、ンン…あんっ、んっ、……逢えないから、それでね……んん〜〜っ」
せつなが強引に唇を押し付けてきた。やわらかな唇が押しつぶされ、ラブから言葉を奪う。
ぷはっ、と唇を離したせつなが、意地の悪い光を瞳にたたえてラブの顔を覗きこんだ。
「自分のカラダで試していたのね。わたしのカラダが味わう痛みを……想像しながら。ふふっ、
ラブったら、本当にイケナイ子」
「恋しさあまって……憎さ百倍、だよ?」
「うん、今夜はいっぱいわたしを憎んで。このカラダに、どれだけラブが寂しかったか、つらかっ
たかを ――― この痛みで教えて」
乳房の丸みに這った手の感触にゾクゾクしつつ、せつなが両瞼を下ろした。無意識に、痛み
に備えていた。
乳首の先っぽを、押し当てられたプラスチックの硬さがなぞる。それが唐突に、グリッと乱暴
にねじ込まれた。「ううぅっ!」とせつなが声を洩らして、汗ばんだ上半身をくねらせた。
力ずくで陥没させられた乳房の先端が、グリッ…グリッ…と洗濯バサミの硬い感触で左右交
互に強くねじられる。
「い…い…痛い……痛いっ」
女囚のように哀れに睫毛を震わせて、せつなが身悶える。
パッ、と洗濯バサミが離れた。でも、その次の瞬間には、強いバネの力で、乳首がバヂンッと
ギザギザの口に挟まれてしまう。
「い゛っ…ああぁッ、痛いッ……あああぁ……」
せつなが上半身を折り曲げて、両胸の先を痛みで焼かれる感覚に耐える。
ラブの指が、あごの下に添う。わずかな力が加えられた。逆らわず、せつなが顔を上げる。
「目、開けて。せつなの顔……ちゃんと見せて」
せつながゆっくりと……涙に濡れた瞳を開く。痛みに震えながら、その双眸から覗くのは恍惚
の色。白い面立ちは、うっとりと上気していた。
パシッ。
軽くだが、右乳房を飾る洗濯バサミがラブの平手にはたかれた。強烈な責め苦に喘いでいる
乳首を、さらなる痛みが貫く。続けざまに、左側の洗濯バサミにも平手打ちが来た。
「痛い……痛い、本当に……っ」
「ほら、せつな、ほらっ、ほらっ、ねえ、痛いの? ほらっ、ほらぁっ!」
パシッ、パシッ、パシ……パシッ、パシ、パシッ、パシッッ!
最後の強い平手打ちで、せつなの右乳房の先から洗濯バサミが弾け飛んだ。
「あい゛ッ……あ、あ、あぁぁあ、ああ……」
感電したような痛みに続いて、乳首がジンジンと熱い痛みにうずき始める。ハッ…ハッ…と全
力疾走後のごとく、呼吸は乱れる。
(死んじゃう……これっ……)
それでも、せつなに顔には自然とほほ笑みが浮かんでくる。痛みによる辱めに全てのプライ
ドを剥ぎ取られて、ただ泣き悶えるだけの存在に貶(おとし)められたとしても。
(こんなにすぐそばにラブがいてくれるのなら……ここがわたしの地獄でもかまわない)
二人の少女が眼差しを重ねて、意思確認を行った。
「……続けよっか、せつな」
「ええ」
せつなの白い手が、ベッドの上に飛んだ洗濯バサミを拾い、ラブに手渡した。
ラブの手が乱暴に動く。…苦痛。右乳房の先っぽに、左乳房の先端に。
洗濯バサミの口に添えられたラブの指に、『ぎゅうぅぅ…』と力がこもってくる。
つぶらな乳頭が、ギザギザしたアゴに上下から押し潰される。
「はあ…あっ、ああぁああああ……!」
胸の先端に、"痛み"が激しく感電してくる。
不意にラブの指の力が緩んだ。痛みが少し下がった分、ジリジリと乳首を炙(あぶ)られるよ
うな熱がうずいてくる。
拷問ともいえる仕打ちに、せつなのほっそりした全身は悲鳴を上げていた。白い素肌には、
あぶら汗さえにじんでいた。でも、彼女のカラダの芯は、次を期待してやまない。
「はぁ…はぁぁ…はぁ…はぁ……、あ゛っ!」
パシッ!
平手打ち。白い乳房が激しくぶれて、せつながポロポロと涙の粒を頬に落とす。
言うはずのなかった「許して」という言葉が、彼女の口から思わず洩れてしまう。
可憐な二つの突起が、その敏感さを後悔するほどの痛みでいたぶられているのだ。
それでも、
せつなの両胸の先が味わう痛みは、じわじわと恍惚の感触に溶け崩れてくる。
「ラブ、死んじゃう……こんな……」
――― 気持ちいい。
「ああっ!」
ラブの左右の手が、両胸の先を飾る洗濯バサミのリングをつまんで引っぱった。ギザギザの
口できつく乳頭をくわえ込んだ安っぽい責め具は外れない。
強制的に前方へ引っぱり伸ばされた乳房は、やわらかな餅のようにも見えた。
「どっちだと思う?」
ラブの……興奮で潤んだ瞳が、せつなの哀れな上目遣いの眼差しと交差する。
「どっちの洗濯バサミが先に外れると思う? 答えを間違えたら、お尻ぺんぺんだよ?」
子どもに言って聞かせるみたいな優しい口振りだが、声の響きには回避できない意地悪さが
潜んでいた。
せつなは、どちらを選んだとしても……。
「右よ」
「こっち? 本当に?」
洗濯バサミに先っぽを抓(つま)まれた右の乳房が、ふるふる…と物柔らかに揺らされた。白
くなめらかな皮膚の内側には、たっぷりと肉の軟らかさが詰まっていて、重たげだ。
焦らすみたいに、ラブが右乳房を揺すってくる。
「こっちでいいの? 間違ってたら、せつなのお尻も痛い目に合うよ?」
「………………」
せつなは全てを受け入れて、無言。雪解け水のように澄んだ顔立ちに、ラブの熱っぽい視線
が注がれる。
ぞぞぞっ ―― と腰の奥で、得も言われぬ甘美さが這い回った。身体全体が羞恥心に焼き尽
くされそうなほどの、卑猥な……幸せ。
洗濯バサミのリングに指かけた手が、何度も引っぱる動作を繰り返した。そのたびに、右乳
房の先に新たな弱い痛みが生まれる。でも ――― 。
(あ…あああ……っ)
せつなの心の中が歓喜で満ちてくる。同時に、右乳房とは逆の、左乳房に噛みついている洗
濯バサミが一気に引かれた。
「 ――――――― ッッッッ!!!!」
胸先を突き抜ける痛みに声も出せず、真っ白な裸身が扇情的に痙攣した。
「ざんねん。逆だったね」
すぐ間近でささやくラブの声が、ひどく遠くに聞こえる……。
せつなの口もとに淡い微笑が刻まれる。その首がゆっくり縦に振られた。
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