逢 瀬 06


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 せつなのカラダ。やわらかで、熱い体温。まるで湯に浸かっているみたいに心地よい。
 後ろから抱き包んでくれる感触に支えられて、床に腰を下ろしてゆく。
 ちゅっ。
 耳たぶでキスの音が鳴る。一緒に座るせつなが、そのまま上半身を抱き支えてくれていた。
 ちゅっ…ちゅっ…とついばむようなキスの音が、間隔を置いて繰り返される。
 肩の丸みを経て鎖骨へ、そこから背中へと滑り落ちていく左手。右手はカラダの前を這い降
りて、胸のふくらみを撫でてくる。
「ん…ぁ……っ」
 自然とラブの口が開き、桃色に蕩けた吐息をつく。
 上半身をまんべんなく愛撫する手の感触によって、絶頂時の快楽にさらわれていたラブの意
識が、こちら側へと優しく揺り戻されてきた。
「目が覚めた、ラブ?」
「んっ…」
 名を呼ばれた子犬のように、ラブが頭をすり寄せる。せつなの汗ばんだ黒髪に頬が触れる。
頬に手が添えられると、ラブは首を後ろにめぐらせて、半開きになった唇を差し出した。
 上唇、下唇と分けて、こまかくチュッ、チュッ、と何度も吸われるのがくすぐったかった。
(あたし、せつなに愛されてる)
 甘いひと時を愉しむ。
 けれど、せつなの冷淡な声の響きが、その時間をブツンと断ち切った。
「ラブ、どうして勝手にイッたりなんかするの?」
 カラダをまさぐる手の動きが気持ちよくて、すぐには答えられない。
 詰問の調子が強まる。
「なぜすぐ答えないの? わたしの質問を無視できるほど偉いのかしら、ラブは?」
「ごめんなさい…」
「それは質問の答えじゃないでしょう?」

 このあたりから、わざと声に苛立たしげな雰囲気を含ませていった。
「どうして、勝手に、イッたの? ……答えなさい」
 質問の言葉を区切って、最後に静かな命令口調をラブにぶつける。しかし、それとは裏腹
に、彼女の乳房をいらう手つきは、奉仕ともいえる程の丁寧さだ。
 乳房の丸みに沿って上下する五指のくすぐったさに耐えながら、ラブが喘ぎ混じりに答える。
「ガマン…できなくて……」
「なぜ?」
「せつなに……いじめられて……気持ちいいから……」
「気持ちよかったら、勝手にイッてもいいの?」
「…だめ」
「駄目なのにどうしてイッちゃうの?」
 やわらかな乳房の先端を、中指でくりんくりんと円を描くみたいに転がす。喘ぐラブが「…ごめ
んなさい」と謝ってくると、すぐさませつなが質問に対する答えじゃないと撥ねつけた。
 全裸のラブが、びくっ、と身をすくめた。「…でも」と小声で言い訳しようとするも、せつなの指
使いに「…くうっ!」と悶えさせられて、言葉を続けられない。
 明らかに感じている反応で、ほっそりした腰を支える柔尻が、びく…びく…と小さく痙攣する。
せつなの口や喉を思いっきりベタベタにした熱い蜜がポタリ…と落ちて、床を汚す。
「うう〜〜っ、ゴメンッ、も…もう二度とせつなの許しなしにイカないから……っ」
「そんなことは聞いてないわ。わたしが訊いているのは、駄目なのになぜイッたのか、よ」
「わ、わかんないっ…ひっ、ああ…ぁぁぁっっ」
 せつなが、わき腹に直角に当てた人差し指を上下に往復させてきた。そのくすぐったさに、ゾ
ゾゾッ…と背筋を震わせている所へ、せつなの静かな叱責がきた。
「いい加減にしてっ。この程度の質問にも答えられないなんて……あなた歳は一体いくつ?」
 トゲの生えた言葉が、ラブの精神の脆い部分に刺さってゆく。
 それで充分だった。はなから答えがほしい、というワケでもない。ただ、言葉でラブをなぶりも
のにしたかっただけ。
 せつなの瞳の底には、意地の悪い微笑が漂っていた。
(だって、ラブのかわいい反応を見たいんだもの♪)
 謝っても許してもらえず、答えてもすぐに質問で切り返される。
 そんな状況で、まだ15歳の少女が心折れてしまうのは時間の問題だった。

 堂々巡りを続ける言葉にいたぶられる一方のラブが、ついに両目を涙ぐませた。その可愛ら
しさに、せつなが別の意味で涙ぐむ。
「…ああっ、いいのよ、いいのよ、ラブ。あなたが悪いわけじゃないのっ」
 感極まったかのごとく声を上擦らせて、ラブのカラダを『ぎゅううっ』と力強く抱きしめる。理不
尽なイジメに涙を浮かべる彼女の可愛らしさに、せつなが頬を熱く上気させていた。
「ラブは悪くないのよね。それなのに責めてごめんなさい。……いけないのは ――― 」
 獲物に這い寄る蜘蛛のように、せつなの手が指を動かしながらラブの肌を滑り落ちる。なま
っちろい下腹のあたりでいったん手を止め、そこからはさらにゆっくりと移動。
 まだ薄い恥毛の縮れた感触。指先に軽く絡めてもてあそびつつ、焦らす。
「ふふっ、そうよね。本当にいけないのは……ふふふっ」
 ラブが我慢しきれずに腰を、もじっ、とくねらせたのを合図に、せつなの手が一気に股間へと
滑りこんだ。ラブの背筋がビクンッ!と跳ねる。
「そう、いけないのは勝手にイッてしまうここよ。だらしのないここのせいで、ラブが怒られて…
…かわいそうに」
 ぬるっ…と潤んだ秘貝に添わせた指先が、『くちゅっ…』と濡れた音を立てて肉唇を割る。敏
感な粘膜を内側からなぞり上げ、「そうでしょ?」とラブの顔を覗き込んで同意を求める。
 せつな視線に促(うなが)されて、ラブがうなずく。
「うん、そうだよ」
 感じやすい部分を可愛がってくれる指の動きに心奪われているのか、ぽうっとした抑揚のな
い返事だった。
 ラブの背中に張り付くせつなが、両胸のふくらみをグッと押しつぶしながら、さらにきつく密
着。ヌプッ…と引き抜いた指で、今度はクリトリスにちょんっ…と触れる。
「…あう゛っ!」
「まったく、ラブのここは情けないわね。ほら、こっちもこんなに腫らしちゃって……」
 愛液をローションにして、過敏な肉粒の上をスリスリと指が滑る。
「あっ…あああ、せつなぁ…ふあっ…ん…」
「いけないわ。本当にラブのここはダメね。こんなにいやらしく悦んじゃって……」
 唐突にせつなの指が離れた。同時に、背中に密着していた裸身のぬくもりも。
「あんっ、せつな、だめぇ…」
 ラブが切ない表情で『きゅっ』と腕をつかんできた。離れないで、と言っているのだ。
 せつなが優しげな微笑を口もとに吹かせてささやく。
「ラブはいい子よ。だから言うことを聞いて」
 両肩に添えられた手が、そっと体を押してきた。ラブは抵抗せずに、仰向けになっていく。身
体は離れても、視線だけはせつなから外さない。床から見上げるせつなの裸身は、部屋の薄
闇に溶けてしまいそうな白さで、とても綺麗だった。

「ラブ、見える?」
 ひざ立ちになったせつなが、慎ましやかに開かれた両太ももの間へ手を這わせた。ぐっしょり
と湿った感触。ラブへの言葉責めで昂ぶった秘所は、ずいぶんと涎(よだれ)を垂らしていた。
「見て、わたしの…ここ」
 羞恥的な興奮で、せつなの言葉は震えていた。ラブの視線の先が自分の恥部へと向いたの
を確認して、ほっそりした二本の指で、淫らに蕩けた恥裂を『くちゅ…』と左右に広げてみせる。
 瞬間、ゾクッ ―― と背筋を駆け上ってきた妖しい甘美さに、唇を噛んで耐えるせつな。
(ン……っ……)
 ゾクゾク…と腰で何かが沸き立つのを我慢して、表情にゆっくりと強ばった笑みを広げていっ
た。熱く潤んだ瞳でラブを見つめ、悩ましげな溜息と共に口を開く。
「今から……わたしのここでお説教してあげる」
 ひどく淫らな響きで、ひどく卑猥な意味を帯びて、その言葉はラブの鼓膜を甘く舐め上げた。
耳に息を吹きかけられたみたいにゾクゾクくる。
(この言葉だけで……あたしのここ、また熱く……今度は、せつなも一緒に……)
 情欲の潤みをたたえた眼差しで、せつなを見返す。
「せつな…、あたしのここに、たっぷりと…お説教を……おねがい」
 横向きで寝そべる姿勢になったラブが、両手を床に添えて、ひざを曲げた左脚を高々と持ち
上げてみせた。無防備に大きく開放されたスペースが、せつなを内側へと招く。
「本当にいい子ね、ラブは」
 ラブの左脚に腕を絡ませ、それを肩に担ぐような体勢で深くカラダを侵入させる。二人の濡れ
た貝を合わせるために、両ひざを床に落として、彼女の右脚にペタンと尻を着けた。
 厳しいダンスレッスンに磨かれた肉厚の太ももは、むっちりとした柔らかさの下に、しなやか
な筋肉を『ぎゅうっ』と敷き詰めていて、座り心地がすごくいい。
(ふふっ、いいクッションね、これは)
 せつなが腰を揺すって、微調整。愛液で濡れそぼった感触が、いやらしく重なり合う。
「さあ、お説教を始めるわよ。いいわね、ラブ?」
「……今度はあたし、せつなと一緒に……イクね……」
 まずはゆっくりと動き出す。
 二人の少女の粘液が、くちゃ…くちゃ…と小さな水音を立てて混ざってゆく。
「あっ、せつなのと……擦れてる……」
「少しずつ……ペースを上げていくわよ」
 せつなの額から、汗のしずくがポタリ…と落ちた。ほんの少しだけ、腰の動きが力強さを増
す。にゅるんっ…と恥肉が滑りあう感触に、少女たちのカラダの芯が同時に、ぞわっ、と震え
た。
「くっ…!」
 ラブが左手でこぶしを強く握って、それを下唇に当てる。
(今度は、一人じゃイカないんだから……っ!)
 その様子を細めた両目で眺めつつ、せつなの腰の動きがペースを上げる。
「ラブのここは……いつまでわたしのお説教に耐えられるかしら?」
 にゅちゅっ、ちゅっ、にゅぷっ、くちゅっ……と絶えず愛液の糸引く粘っこい水音が変化する。
優しく単調な腰振りから、ラブの我慢を乱すための変則的な腰の動きへ。
「んっ、ラブの情けないここは、…くっ、……ふふっ、もう泣きべそをかいてるでしょ?」
「泣いてても……がまんっ、する…からっ、あっくっ…ハァ、ハァ…せつなと…一緒にっ」
 下半身同士の激しいキス。
 たっぷりと濡れた処女の性器をこすり合わせながら、淫靡な快楽に昂ぶってゆく。
「はぁっ、はぁっ、熱いわ、ラブのここ…、ふふふっ、わたしのお説教が効いてるのかしら」
「きもち…いいのっ」
「また勝手にイク?」
「あっ、せつなの…お説教が、終わるまでっ…うっ、ちゃんと……あ゛あ゛っ!」
 ラブの健気な態度に、せつなが腰の動きをまた速めた。
「ふああぁぁああ…っ、やっ、せつな…アアアッ!」
 腕の中でラブの左脚がビクンッ!ビクンッ!と暴れる。
(いいわ、ラブ、我慢するなら……もっといじめてあげるっ!)
 嗜虐的な恍惚が、せつなの背筋を電流のように駆け貫いた。一番大切な相手を、一番ひどく
貶めたいという矛盾した欲求。
 ほっそりした腰から魅力的なカーブで盛り上がる尻部が、激しく動いてラブを責め立てる。
「お説教の最中に……こんなに感じて……本当にだらしないわねっ、ラブのここはっ!」
「せつなっ…ヒィッ、だめっ、あっ、あ゛ッ、やっ…ガマン……できなっ ――― ふああぁっ」
 ようやく弱音を吐いたラブが可愛くて、もっといじめ抜きたくなる。
 くっつき合う二人の秘貝が、お互いの分泌液でどろどろになっていく。濡れた音が部屋中に
響いて、二人の興奮を刺激した。
「やだっ…あたしたちのここが……こんなにいやらしい音……ぐしょぐしょだよぉっ…」
「ふふっ、これって、ラブの…ンッ…気持ちよくなってる音よ。すごいわっ、ほら、聞こえる? こ
の音だけで、どれだけラブが感じているか分かるわ」
「いやぁっ、やっ、せつな……聞かないでぇっ!」
「恥ずかしいのっ? ――― でしょうね。ラブのここが…今度はこんなイヤラシイ音!」
 ぴちゃっ…くちゅっ! ピチャッ! 
 濡れた肉のぶつかり合う響きが、ラブの羞恥心を貫いた。
「あぁんっ、こんな大きな音っ、だめぇっ!」
「それは嘘よ。ラブの声……すごく悦んでるじゃない。ここをこんなにされて……そんないやらし
い声を出しちゃう子なのよ、あなたは。…ああ、なんてすごい……うっ…」
 一方的に責めている側のせつなも、声に滲んでいる気持ちよさが隠せなくなってきた。腰を
使うたび、秘所の恥肉が快感でとろけそうだ。
「本当に好きよ、ラブのここ。もっといっぱいお説教したい……ああぁっっ!」
 官能的な喘ぎを喉からほとばしらせ、せつながびくっ…びくっ…と裸身を痙攣させた。
 はぁっ…はぁっ…と呼吸を乱したせつなが、ラブに命じる。
「そろそろイクわよ、ラブ。 ――― いい? タイミングを合わせて。わたしより早かったり遅かっ
たりしたら、許さないっ!」
「はひっ…」
「イク時は、愛してるって叫んで合図するのよ」
 閉じた両目の端から快楽の涙をこぼして、ラブがこくこくとうなずく。
「いくわっ、ほらっ、ラブのここをメチャクチャにしてあげる!」
 せつなが狂ったように腰を振り乱す。汗の粒が流れる背中で黒髪がばさばさと跳ねる。
 ――― 激しい腰使い。
 ラブの一番敏感な部分を、しどけなく濡れそぼった恥肉で摩擦してイジメ抜く。その腰の動き
は速く、力強く、ラブを一気に攻め落とそうとする。
「あっ…あああっっ……ン゛ンンッッ…だめっ、アアアアッッ……!」
 ラブの裸身が、せつなと同じく汗まみれになって、びくっ!びくっ!と床の上で跳ね悶える。気
持ちよさのあまりに、閉じた両目の端からは涙を流していた。
(イキなさいっ、イキなさいっ、ほら早くイッてみせて!?)
 ラブの悲鳴じみた喘ぎ声を聞きながら、せつなが眉間にきつくシワを寄せ、両目を固く閉じ
る。ねばつく蜜でぬめった恥肉がこすれ合う感触に、膣の内側が『きゅううっ』と熱く滾(たぎ)っ
てきた。
(わたしも、これ以上はもたない ――― 早く愛してるって言葉を聞かせて!)

 桃園ラブという少女の全てを打ち負かそうとするせつなの腰の動きは攻撃的だった。
 恥ずかしい部分で繋がった股間同士が、愛液の滑りを利用して、少女たちの秘貝の口をネ
チャネチャとこね回す。
 やわらかにとろけた肉のこすり合い……その淫らな刺激に、ラブの秘所の奥がついに耐え切
れなくなった。ビクンッ!と一際大きくカラダを跳ねさせたあと、泣くような声で叫んだ。
「ごめんっ! せつな……あたしっ ――― あっ…愛してるッ、せつな!!」
「わたしもよ、愛してるわっ、愛してるっ、ラブ!」
 処女の膣壁を甘い陶酔感で貫かれるラブに続いて、せつなも、まるで電気に打たれたみたい
に全身を激しくわななかせた。
(だめっ…あっ…死ぬッ……!)
 閉じたまぶたの裏で、強烈なめまいに襲われた。秘所の粘膜が、強すぎる快感でビリビリと
震えている。気が狂いそうなほどの気持ちよさに、白い肌が何度もびくんっ…びくんっ…と痙
攣。
「だめ……たすけて……」
 息も絶え絶えな声で、せつなが体勢を崩した。まだ絶頂の余韻をむさぼっているラブが、気だ
るげな動きで腕を伸ばし、そのカラダを自分の裸身の上に抱き寄せた。
 ぎゅうっ。
 ラブの両腕が、せつなのカラダをしっかりと抱き包む。
「もう大丈夫だよ……せつな」
「…………」
 せつなはまだ返事もできない。けれど温かい抱擁の感触が、彼女の全身を震わせていた快
楽の電流を徐々に鎮めてくれた。
 ちろっ…。
 ラブが肩の辺りに感じたくすぐったさを視線で追うと、せつなの口から可愛らしい舌がのぞい
て、汗の粒を舐め取っていた。
「のど渇いた…?」
 せつな、と呼びかけた口を彼女の唇へ近づける。弱々しく応じるせつなの唇へ、ラブの口が
粘りのある唾液を受け渡した。せつなの喉が小さく動いて、それを嚥下する。
「……ラブ、もっと……」
 せつなの体がもぞもぞ動いて、とラブの眦(まなじり)にキス。にじんでいた涙を、ちゅっ、と吸
いとる。その反対側にも同じことをする。
「ラブは全部……わたしだけのものよ」
「うん。あたしはせつなだけの所有物(モノ)だよ」
 力を抜いて体重を預けてきた裸身をぐっと強く抱きしめる。せつなのカラダには、まだ少し余
韻の痙攣が残っていた。時折、ピクッ…ピクンッ…と愛らしく震えていた。
 情事の余熱が残っているカラダが汗を噴出す。
「ラブのここは……やっぱりだらしなかったわね」
 せつなが、ぐったりと疲れきった調子でつぶやく。
「……今度また、厳しくお説教してあげるわ」
「うん、しあわせ……げっと。ふふっ」
 甘い砂糖菓子を含んだような口調で答えて、ラブが微笑んだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 

 朝の訪れを感じて、身体が自然と目を覚ました。気だるさが全身にべったりと張り付いてい
て、重い。このまま再び眠りに落ちてしまいたい誘惑に駆られる。
(それでも……起きなきゃ)
 そして帰らないと。

 せつなが掛け布団をめくって、その下にあった裸身をゆっくりと起こし……。
(これ…、ラブが掛けてくれたのね)
 情事のあと、あのまま床で眠ってしまったらしい。
 寝ているせつなに、枕と掛け布団を提供してくれた相手の姿が見当たらない。 ――― と思っ
たら、部屋のドアが開いて、ラブが顔を覗かせた。
「あっ、せつな、起きたんだ」
 ラブが静かにドアを閉め、そっとせつなの傍らに両ひざをついて、しとやかに腰を下ろす。パ
ジャマに包まれた肢体は、肉体的に燃え上がった夜のなごりを残しているのかもしれない。
 せつなの白い裸身から微妙に目をそらしているのは、それが理由だろうか。
「せつなの荷物まとめといてあげようと思ったんだけど、昨日のうちにやってたんだよね」
 彼女の部屋を確認してきたラブが、小ざっぱりとまとめられた手荷物に寄せた寂しさを思い
出す。本当にせつなが帰ってしまうんだと、改めて感じた。
「もうすぐ朝ごはんの用意できるみたいだから、その前に……」
 枕の傍に置いていたウエットティッシュのボックスを、スッと差し出して、
「匂いでお母さんたちにバレちゃうといけないから……」
 肌に残る体液の匂い。シャワーで洗い流してしまうのが一番だが、それだと怪しまれるかもし
れないと用心したらしい。ラブ自身はもう拭き終えている。
 せつなが、くすっ、と子猫みたいに愛らしく微笑んでみせた。
「ラブが拭いて」
「…だめだよ、だって」
「 ――― また、したくなっちゃうかもしれないから?」
 せつなが視線を細めて、ラブを見つめる。
「命令よ。ラブ、わたしの身体をキレイにして」
「……わかった」
 もじっ…と、さらに大きく視線をそらせたラブが小さくうなずくのを見て、せつながクスクスと満
足げな笑みを洩らす。
「頬が赤くなってる。そんなラブ、可愛い」
 自分の所有物(モノ)であるのをいいことに、そんな言葉で彼女をからかう。ムッとした感じ
で、つん…と両目を閉じてみせるラブも、本当は怒ってなんていない。

 透けるように白い肌の上を、ウエットティッシュのひやっとした感触が滑り、愛撫めいた動きで
這い回る。その度に、せつなの感度の良い裸体が、ぴくっ、ぴくんっ…、と可愛らしく反応。
「…んッ、ラブ……わざとくすぐったいところを狙ってない?」
 せつなの右の腕を持ち上げて、腋(わき)の下を拭きにかかったラブが「だって…」と、艶っぽ
く表情を和ませる。
「せつなのカラダは、何をされたいか……正直だもん」
「ラブのカラダよりも?」
 しなやかに身体の距離を縮めたせつなが、パジャマの裾(すそ)から左手をすべり込ませ、あ
っという間にブラジャーに包まれたふくらみにまで到達。
「確かめてあげるわ」
 ブラジャーの内側にスルリと潜った手の平が、うら若い乳房を優しく揉み、その先端をつま
む。指で挟んでスリスリとしごいてやると、敏感な乳頭はすぐにぷっくりとこわばってしまう。
 せつなが物言いたげにラブの顔を見つめる。
「…………」
 ラブは短い無言。
 恥ずかしそうに視線を落として逡巡したのち、あきらめて口を開く。
「……せつなの指で、もっとイジメてほしい」
「時間がないから、拭く手は休めないで」
 ラブに身体を拭かせながら、せつながパジャマの裾を両手でめくり上げていき、さらにブラジ
ャーも上にずらす。プリンみたいに軟らかに震えて双乳がまろび出る。
「あっ…」と小さな声を上げて、一瞬だけラブの手が止まった。
 舌の先から根元までを使った大きな舐め方で、たちまちもう一方の乳首も固くさせられる。

 乳頭の先端ぎりぎりを『ちろちろ…』と細やかに責めてくる舌使い……、
 乳首のこりこりした感触を、焦らすようにゆっくりと転がす指使い……、
 両乳房の先っぽに、官能的なうずきが『ゾクゾクッ…』と甘やかに走る。

「んん〜〜……せつなぁ…」
 背筋を撫で上げる歓喜。
 眉間に悩ましげなシワを寄せた顔は、恍惚の色に溶け始めていた。
「ふぁあ…、朝ごはん……間に合わなくなっちゃうよぉ〜……あっ…あっ」
 上擦った声が跳ねる。
 ラブの指からウエットティッシュが、はらり、と落ちた。そして、自由になった手で、せつなの柔
肌を愛しそうにまさぐってゆく。
「ンッ…ふっ…んん……」
 皮膚にじゃれついてくる指のこそばゆさに、せつなの呼吸がなまめかしい乱れをみせた。
 腰から下 ――― 健康的な肉付きの下半身が、くね…くね…と白い尻部や太ももを微妙に悶
えさせているのが印象的だ。
 乳首の根元に前歯を当てたまま、軽く頭を左右に振って、こする。今までと違う快感に、ラブ
の上半身がビクンッ!と跳ねた。
『ちゅちゅぅぅっ』と乳首を吸引。すぼめた唇できつく吸い搾りつつ、ちゅぱっ、と口が離れた。反
対側の乳房の先も同じようについばんで、いやらしく音を立てて吸う。
「あっ…はぁっ……だめ、それ以上はっ……もう…、は…うっ…」
「ラブったら、乳首をこんなにして、ふふっ」
 ラブの左右の乳房を、せつなの両手が正面から優しく揉み掴む。やわらかな乳肉の重みを
感じながら、その丸みに沿ってゆっくりと上下に撫でさする。
「こんな正直なカラダのラブは……大好きよ。このままラビリンスに連れて帰って、毎日いじめ
てあげたくなるくらい」
 乳房を愛でる手の動きに合わせて、硬くなった胸先の突起が手の平にこすれる。それが気
持ちよく、せつながうっとりと両目を閉じた。
 そして、うたうように口ずさむ。
「ねえ、今、ラブの下のほうは……どうなっているのかしら?」
 目を開かなくても、ラブが両ひざの間をギュッと締めたのがわかる。
「……そうなのね」
 秘所を微かに湿らせて、甘美にうずき始めた快感を味わっているのだろう。
 せつなは ―――― 唐突に乳房から両手を離した。

「さっ、ラブが拭いてくれないから、自分で拭かなくちゃ」
 サァッと潮が引くみたいに、せつなが態度を改めた。「えっ…」という顔になるラブを放置して、
そそくさとウエットティッシュで裸身をぬぐい始める。
「待って、せつな……時間がないからって、こんなのは……」
 すがりついてくるラブの声に、用意しておいたとびっきりの笑顔を向けて、
「じゃあ、自分ですれば?」
 ただし、とせつなが言葉を続ける。
「今日は……ううん、今日と明日は駄目。許してあげない。ラブ、これは命令よ」
「そっ ――― 」
 そんなっ……と口走ろうとする唇をつぐんで、ややしてから、ラブが再び口を開いた。
「せつなの命令じゃ仕方ないよね。だって、あたしはせつなの所有物(モノ) ――― 」
 自分が口にしたその言葉が、ラブにとっては幸せの鍵。
 心が、甘い痺れを感じた。
 乳房を愛撫されていた時以上に、股間のうずきは切なさを増してくる。けれどラブは、あさっ
てまでそれを慰めることは出来ないのだ。
 そう思えば思うほどに ―――――― 。
 肌を拭き終え、パジャマを身に着けていくせつなに、ラブがそっと抱きつく。

「あたしをこんなイジワルな目に合わせてくれるせつなを…………最高に愛してる」


 互いに身体を抱き寄せあい、濃厚なキスを交わしながら部屋を出た。
 パジャマを着てから部屋を出るまでの短い時間に、二人の少女たちは将来を決めていた。
「お母さんたち、許してくれるかなぁ」
「真剣にわたしたちの気持ちを伝えれば、きっと理解してくれるわ」
「駆け落ち……っていうのもありかな、せつなと一緒なら……」
「そういうお母さんたちを悲しませそうなことは、わたしが許さない」
「ごめん。…じゃあ、つまらないこと言ったあたしの唇にお仕置き…して」
 つっ…と顔を上げて唇を差し出すラブに、甘ったるいキスで罰を与える。
 やわらかに唇同士がとろけあう感触をたっぷり堪能してから、せつながキスを解いた。
「ごめんなさい、ラブ。またしばらく寂しい思いをさせるけど……」
「ううん、大丈夫っ! あたし、せつながラビリンスに帰っている間にガンガン女を磨いて…」
 勢いのついていた言葉が、尻すぼみに消えていった。
 至近距離で見つめ合って、ラブが言葉の出ない唇を震わせた。
 ――― やはり、行かないで…とは言えなかった。
「待ってる…ね」
「必ずあなたを迎えに来るわ、ラブ」
 二人の唇が静かに重なりあう。
 いつもの数倍の時間をかけて、二人はゆっくりと階段を下りていった。


(おわり)