nameless Flower 01


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 意識しているわけではないが、どきどきと、いつもと違う鼓動。
 自分の部屋に友達を泊めるという、初めての体験。 ――― しかも一緒のベッド。
 花咲つぼみは、寝たふりを続けながら背中を気にする。
 自分と同じくらい、ほそっこすぎる背の感触。
 ベッドの広さに余裕はあるが、一個の枕の上に頭を二つ並べるのは少々せまい。
 腰まで届く自分の長い髪と、ウェーブのかかった彼女の髪とが、二つの背中に挟まれてしっと
り重なりあっている。
(えりかの……においがします……)
 同じ中学二年生。でも、彼女はまだ13歳で、自分よりもちょっとだけ年下。背丈に関しても、
自分に比べて10センチ近くちっちゃくてかわいい。
 そして、そのかわいさを振りちぎるほどにアクティブで、だらしのない部分も目立つが、いざと
なれば誰よりも自分を支えてくれる。
 来海えりかという、個性のかたまりみたいな少女。つぼみが副部長を務めるファッション部の
部長。つぼみの一番の親友だ。

「ね、つぼみ」
 不意に名前を呼ばれてドキリとする。
 触れ合う背中に、かすかな圧力。掛け布団の下で、背中同士が温かく密着。
「あのさ、つぼみは子供…?」
「まだ14歳です」
 思わず生真面目に答えてしまうつぼみに、「あー、そうじゃなくて…」と、えりかが言葉を選び
なおす。
「 ――― エッチなこととかに興味ある?」
 シプレがいなくて助かった、とつぼみは小さく安堵の溜息をついた。今頃コフレと一緒に、窓
のすぐ向こうに見えるえりかの部屋でぐっすりお休み中のはずだ。
「全く興味ありませんっ」
 やや語気が強めなのは、内心の動揺をごまかすためだ。……いきなり変な事を聞かないで
ほしいと思う。
「そっか…」
 妙に元気のないえりかの声。その反応がつい気になって、つぼみが次の言葉をじっと待つ。
 えりかの口の開き方は重かった。
「つぼみは…さ、そういうのに興味ある子って『汚い』と思う……?」

 ………… くっついた彼女の背中が小さく震えている。
 それに気付いた瞬間、つぼみはやわらかい声音で即答していた。

「そんなこと、ありませんよ」
 えりかに聞かせるよう、しっかりと声に意思を含ませる。
「全然汚くなんてないです。わ、私だって、その…エッチなこととやらには、いつかは興味を持た
ねばならないことですし ――― そう、女として避けては通れぬ道なのですっ! ハイッ!」
 そっち方面の知識に関しては小学生以下……そんなつぼみの暑苦しい語りに、えりかが軽く
引いてしまう。
「いや……その、別に避けてもいいんじゃ ――― っていうかさぁ、つぼみって、エッチな興味持
ちたくなるような相手がいるんだ?」
「いいい、いませんってば!」
「あははは……つぼみったら慌ててるーっ♪」
 ベッドに入ってから、初めてえりかが笑ってくれた。
 つられて、つぼみ自身もくすくす笑い出す。
 枕に並べた後頭部を、こつっ、と優しく当てて会話を続けた。
「つまり、えりかは私の大先輩ですね」
「あーっ、何それ? あたしがエッチなことばっかりしてるみたいじゃん」
「いえいえ、そんなこと……ふふふっ。気にせず邁進(まいしん)してください」
「ううう、つぼみめぇ〜」
 いつもと違って、えりかの勢いが弱い。くやしげに歯噛みするどころか、恥ずかしさで顔が真
っ赤になっている。
「……プリキュアになってからは一回もしてないもん……」
 妖精のパートナー・コフレと一緒の部屋で暮らしつつでは、さすがのえりかも……と、つぼみ
がほほえましく想像する。
「ファイトですよっ、えりかっ」
「〜〜〜〜〜〜っっ!!」
 さらなる羞恥心に責められて、えりかが顔から火を噴きそうになっている。そんな彼女の気配
を察したのか、もうつぼみは何も言ってこなかった。
 その代わり、腕を後ろに……えりかのほうに伸ばした。その動きに反応して、えりかもためら
いながら手を後ろに。 ――― 当たり前のように、つぼみが手を握ってきた。
 ぎゅっ、と強く……少女たちが手をつなぐ。
「つぼみ、ありがとね」
「親友ですから」
 さりげない、でも温かい言葉でつぼみが返してくれる。彼女の言葉が何だかこそばゆくて、え
りかが照れ隠しの笑いを浮かべた。
「あのさっ、つぼみ…」
「なんです?」
「んーー……やっぱ何でもない。これからもあたしたち、一緒にプリキュアだよっ」
 後ろめたさが吹っ切れた。その勢いに乗って、つないでいた手をいったん解き、強引に腕同
士を絡める。密着状態からさらに強く押し付けられる背中の感触に、つぼみが苦笑した。
「もうっ、そんな押してこないでください〜っ」
「だいじょうぶだいじょうぶっ、落ちやしないからっ♪」

 花の彩りがまぶしい、春の季節。
 やがて来る梅雨の帳(とばり)を抜けて、ゆるやかな加速で夏を目指す。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 隣り合う花咲家と来海家。
 気軽さも手伝って、えりかはたまに泊まりにくるようになった。家出した猫が、ふらり…と気ま
ぐれで帰ってくるみたいに。
 夏が終わりかける頃には、しばらく泊まりにこないと、つぼみの母が「最近どうしたのかしら、
えりかちゃん?」と心配するようになってしまったほどだ。
 お風呂も晩ご飯も自宅で済ませて、本当に寝るだけのお泊り。
 その度、パートナーのシプレにはえりかの部屋に泊まってもらうことになった。

 部屋の電気は消え、やがて物音も絶える。
 少女たちのほそっこい肢体は、ひとつのベッドに収まっている。
 夜が静まっていくのを肌で感じて、えりかが自分のパジャマに手をかけた。
 つぼみは、まるで寝ているかのように反応しない。えりかに背中を向けたまま、しかしその両
目をうっすらと開いていた。
 自分の身体の上を、えりかの腕が通り過ぎる。その手には、彼女のパジャマの上だけが掴ま
れていた。ベッドの外へ突き出された手が、パジャマをはらりと落とす。
 心を落ち着かせようと、小さな深呼吸を一つ。
 つぼみも自分のパジャマに手をかけた。いつものようにえりかが後ろから手伝ってくれる。
(うっ…)
 恥ずかしさが喉につかえて、呼吸が止まりそうになる。毎回えりかが先に脱いでくれるので、
それで羞恥心も少しは緩和されているとはいえ……まだまだ慣れない。
 脱ぎたての温かいパジャマが、えりかのパジャマの上に、ふぁさっ…と落ちて重なる。

 掛け布団の下で、つぼみが自分のカラダを、きゅっ…と抱く。
 人形みたいな細身で、首や腕などは折れてしまいそうに華奢だ。豊かな髪は、腰の辺りまで
つややかに流れ落ちて、ほっそりした背中を覆い隠していた。
 ブラジャーはしていない。
 肉付きのほぼ平らな、乳房と呼ぶにはまだ早い両胸のふくらみ。先端には、淡い桜色がきれ
いな乳暈(にゅううん)を描いていて、可愛らしい乳頭の尖りを中心に据えている。
 薄い胸板の下では、心臓がバクバク跳ね狂っている。緊張のせいか、手の平も妙に汗ばん
できていた。
(ううう〜〜……せっかくえりかがしてくれるんですから……がまんですっ)
 いずれは母親に似た、穏やかな美貌に育つであろうと感じさせる可憐な面立ちは、半分泣き
顔に崩れていた。それくらいの恥ずかしさを彼女は味わっている。
「つぼみの髪の匂い……」
 背後では、えりかが髪に鼻をうずめて、スンスンと匂いを愉しんでいた。つぼみがベッドに横
たえた肢体を、怯えたみたいに縮める。
 すべすべとした肩に、そぉっ…とえりかの指先がふれてきた。つぼみが『びくんっ!』と過激に
反応してしまう。
「ひぁぁっ…」
「ちょっとつぼみぃ……イヤラシイ声ださないでよ」
「い、い、いやらしくなんて全然ありませんよっ?」
「そーかなぁ」
 大慌てで取り繕うつぼみの肩をグッと抱きしめ、えりかが裸の上半身を密着させる。
 乳房としての形が整い始めたばかりの小ぶりな果実が、クリームのような軟らかさで、フニッ
とつぶれる。
「えりかのおっぱいは、ずるい…です…」
 声には劣等感がにじみ出ていた。
 それに対して、えりかが微苦笑をにじませて答える。
「だーかーらーさー、これからおっきくなるんじゃん、つぼみのおっぱいも」
 えりかの手がスルスル…と白い肩をすべり落ちてゆく。二の腕の柔らかさを愉しむ指先の動
きに、ぴくっ…ぴく…と、つぼみがカラダを小さく悶えさせた。
「そ、そこじゃないですよぉ…えりか…」
「わかってるって」
 するり…と、えりかの手が胸の前方へと回りこんできた。上からも、下からも。
(あっ…)
 思わず両目を閉じて、まつげを震わせる。
 何も身を隠すものがない上半身が、その真っ白な肌を微かに上気させて恥らう。
(ベッドの中でするのは……お風呂でした時の百倍恥ずかしいです……)
   
 二つの浅いふくらみの稜線を這い登ってくる指の感触。つぼみが横向きで寝そべったまま、
ビクッ…と電流が走ったみたいに、痩せっぽちな細い肢体を硬直させた。
「ヒッ…」
 悲鳴にも似た声がつぼみの喉から洩れる。 ――― が、えりかの指の動きは止まってくれな
い。親友のこわばったカラダを解きほぐすように、ゆったりしたペースで両胸に指を這わせ続け
る。
 ぞぞぞっ…。           
 背中の肌を、無数の蟻が這い登ってくるような……怖気(おぞけ)と紙一重の甘美さ。いまだ
慣れぬ感覚に、つぼみの心が戸惑い、揺れる。
(あっ…えりかの指が……)
 吐く息の温度が微かに上昇した。
(ほ…本当にこれって豊胸マッサージなんでしょうか?)
 胸の先端を這う指の感触が……。
「え、えりか…」
 つぼみがうっすらとまぶたを持ち上げた。ベッドの外に投げかける眼差しは、今にも泣き出し
そうな湿りを帯びていた。
「先っぽばっかりいじってて、私の胸は大きくなるんですか?」
「ん〜、でもさ、つぼみの胸って他にいじれそうなトコ無いじゃん」
「ひとの胸を全滅してるみたいに言わないでください〜〜っ」
 身長では勝っているのに……、とつぼみが悔し涙を呑む。そんな彼女に対して、えりかはあく
までもゴーイング・マイペース。
「大丈夫大丈夫、あたしの魔法の指にかかれば全滅胸の一つや二つ……とりゃあっ」
「ヒイッッ!?」
「とにかくっ、この胸の具合をもっとセクシーにしないと駄目っ。あたしのデザインした大
人っぽいカンジの服が全然似合わないっ」
「私情ですかぁっ!」
 えりかの断言に、つぼみがショックを受ける。二人のあつい友情に基づいてこの胸を助けてく
れているのだとばかり思っていたのに……。
「ひどいですっ! あんまりですっ! うううぅ」
「……ま、それだけじゃないんだけど」

 ほっぺたをつぼみの髪にすりつける。
 しっとりと、そしてつやつやした感触。
 気持ちよさそうに目を細める様子は猫みたいだった。

 指先の感触を頼りに、親友の胸を隅々までなぞってゆく。透けるような真っ白い肌はやわら
かい。わずかな乳肉も『ふにふに…』と脂肪の軟らかみを一応は備えている。
 敏感な突起は、えりかの指を感じてすぐに固くなってしまう。今の指ざわりは、真珠の表面を
思わすなめらかさだ。
「…………」
 つぼみの細い肩に頬を乗せ、ソフトな指タッチを彼女の胸にすべらせる。
 乳頭を軽く指でなぞったあとは、胸の頂(いただき)を徹底的に避けて、なだらかなふくらみに
這わせた優しい指使いを、上から下へ…下から上へと往復させる。
「うっ…う、く、くすぐったいです…」
 つぼみが背中を小さく丸めて、恥ずかしげな身悶えの反応を少しでも隠そうとする。…と、え
りかの指が胸の中心に向かってくる気配がした。
「…っ!」
 とっさに声を押し殺して、裸身を緊張させるつぼみ。しかし、その指は胸の頂点をするりと避
けていってしまう。
(ふうっ…)
 心の中で安堵の息をこぼした。だが次の瞬間、
「……隙ありっ」「うひぃっ!?」
 見事にえりかとつぼみの声が重なった。
 ちょんっ、と指の腹で叩いただけのタッチなのに、感じやすい状態になった乳首は、まるで電
気でも当てられたみたいに過激に驚く。
 つぼみが顔を真っ赤にして、そそくさと両腕で胸を覆った。
「いじわるするのなら、もう終了です! 胸なんておっきくならなくてもかまいませんっ!」
 背後のえりかにそう宣言する。
 態度も声も、ツンと尖っていた。 ――― えりかの指に優しくつままれた胸の先も。
 つぼみの全身が、びくっ!となった。
「な、なにやって……終わりですっ、終わりですよっ、えりか!」
 あわてふためくつぼみが、両腕にぎゅっと力をこめる。その腕の下で、えりかの両手がゆっく
りと胸肉の愛撫を続けてきた。
「えりかっ、だから…その…もう終わ…り……」
「やだ。続けさせて」
 少女の指先が、つぼみの胸の一番感度が高い部分を狙う。
「そこっ、だめ…です……」
 乳頭を舐めるようになぞってくる爪の先 ――― 硬い感触。つぼみの全身が『ぶるるっ…』と
震えた。もう一度、「だめ…」という言葉を口にした。けれど、その響きはさっきよりも弱々しい。

 乳首に当てられた爪の感触は、細やかな動きで変化を続ける。
 ――― くすぐったくて。
 ――― 甘くて。
 ――― その次は、ちょっといじわる気味に…。
 つぼみが声を抑えていたら、指使いがどんどんいじわるさを増してきた。
(ううっ…う…うっ……)
 胸の先が変になってしまいそうだった。
「ねえ、つぼみー、こういう風にされると?」
 乳首の根元から先っぽまでを、爪の先で器用になぞり上げる。ゾクッ…と鳥肌が立ちそうなこ
そばゆさで胸先が甘く痺れる。
「はあっ…あ゛ぁぁ……っ」
 喘ぎと一緒に、つぼみが、熱く潤ませた両眼を大きく開いた。
「んっ、つぼみがようやく声出した」
 親友の白い肩に添わせた唇で、えりかがつぶやく。指の動きは、胸先の可憐な突起をもてあ
そび続けている。
「え…えりか、いつもより……いっぱいさわってませんか?」
「そうかなぁ?」
「……あの……」
「こういうの…嫌い?」
 えりかにしては、歯切れ悪く尋ねてきた。
 つぼみは眼差しを細めて、あの頃を懐かしむ。

『しゃーないなぁ、あたしも脱いであげるからさー。はい、これでおあいこ。よーっし、それじゃあ
つぼみのバスト大きくしちゃうぞぉっ! うおりゃああっ』
 ぐりぐりと無遠慮に善意を押しつけてくる親友の勢いに呑まれて、過剰なスキンシップが始ま
った。恥ずかしかったけれど、いやらしさを微塵も感じさせない……まるでじゃれあっているよう
な雰囲気。

「今のえりかは……少しだけ、エッチだと思います」
 心臓が激しく跳ねている。
「けどっ…、き、きらいだとかは……思ってません」
 びくっ、と胸先をいらう指が止まった。
 えりかの心臓もドキドキしていた。
「あのさ…」
 言葉が続かない。
 ごくっ、と唾を飲み干す。
 ゆっくりとだが、手の位置が下がってゆく。
 か細い腰に指が触れた。
 思いきって両腕で抱きしめてみる。力を込めて。きゅうっ。
(やだっ、あたし……すっごく顔が熱くなってる)
 両頬が火照っているのが、自分でもはっきりとわかる。恥ずかしすぎて身体が震えだしてしま
いそうだった。
「あたし、つぼみの声とか、反応とか、全部カワイイと思う。きらいじゃ…ないよ」
「……。そこは、出来れば好きって言ってくれたほうが…うれしいです」
「ん…。じゃあ、好き」
「…いつからですか?」
「わかんないや。でも、昔はともかく、今はすごく好き」
 左腕はつぼみの腰に残したまま、右手だけがさらに下がる。
 パジャマのボトムに指先が触れた。
「 ――――― っ!」
 知識はなくとも、えりかが何をしようとしているのかを感じ取ったのか、つぼみが腰に残された
左腕をギュッと強くつかんだ。
 身体が怯えているみたいに萎縮する。
 こうやって強く抱きしめてもらっていることだけが心の支えだった。
「えりか……この手を離さないで……絶対に離しちゃ駄目ですよっ」
「わかった。ずっとこうしてるから大丈夫。離さないから。 ――― つぼみ、すぐに気持ちよくして
あげるね」

 皮膚を撫でるくすぐったさ。
 下腹を、えりかの指が滑り落ちてくる。
(私、このままだと、とんでもない所をさわられちゃうんじゃ……、でも…でも……)
 相手がえりかだから。
 心の表面はひどくざわついているのに、逃げ出したいとは思わないのは、それが理由。
 彼女の指がショーツの縁(ふち)をいらいつつ、つぼみの反応を確かめてくる。
「…いい?」
 えりかの声に、つぼみが小さくうなずく。
 指の動きがショーツの内側に潜りこんできた。
「うっ…うッ…」
 身体を縮こまらせるつぼみを『ギュウッ』と強く抱きしめて安心させる。
「平気だよ、あたしがついてる。自分でするとき以上に上手くやるから」
 えりかの手首から先が、すっぽりとショーツの中に隠れてしまった。彼女の小さな手の平全体
に、蒸れているみたいな肌のぬくもりが感じられる。
(つぼみのここ、もうエッチな状態に……なってたり…とか)
 心拍数が上がった。
 心臓が興奮して、胸が苦しくなってくる。
(う…うわ〜〜…自分でしてるときと全然違うんだけど?)
 本当に大丈夫かな?と自分でも不安になりつつも、恥じらいに身震いしている乙女の秘部
へ、緊張した指を伸ばしてゆく。
 すべすべとした秘貝。無垢な指触りだと感じたのは、まだ産毛ほども陰毛が生えてないせい
か。えりかの全身が、自制できない熱を帯びてくる。
「さわるよ、ほら…」
 ススッ…と指先を動かして、秘貝の口を優しくなぞってやる。「ひあぁっ…」という甘い悲鳴が
つぼみの口から飛び出した。
 つぼみの後ろで、えりかが両目を微かに細める。
「今のつぼみの声、すごくかわいかった」
 耳の裏に吹きかけられたその声に、つぼみが『ぞくっ…』と背中を震わす。
 少女は切なげに瞳を潤ませ、後ろのえりかに向かって小さく喘いだ。
「あ、んっ…指……くすぐった…い…っ」
「まだ濡れてないね」
「あのっ…私……このあと何をすれば……?」
「つぼみは何もしなくていいって。あたしが全部してあげるから」

 ゆっくりと……。
 ゆっくりと……。
 優しさとくすぐったさが絶妙に溶け合わさった指使いで、処女の秘部をほぐしてゆく。……け
れどまだ濡れない。ほっそりした肩に這わせた唇で、イタズラっぽく『ちゅっ』とキスの音を鳴ら
してみた。こっちは効果覿面(てきめん)。
「あっ…ああっ!」
 8回目のキスで、つぼみが全身をブルブルッ…と強く震わせた。えりかの指先がようやく湿り
気を捉える。
「ふ〜ん、つぼみはキスされるのがいいんだ?」
 そこからはキスと指の両方を使い始めた。
 濡れだした秘貝の口を、細やかな指の動きでまさぐる。くすぐったいだけだったのが、つぼみ
の中で甘美な感覚に変わってくる。
「ん…ふぁ……ああ…きもちいいです……こんな所…さわられてるのにぃ……」
 ゆるんだ喘ぎ声を洩らしながら、なまめかしく腰から下を悶えさせる。
 指で一番敏感な部分を責めてやってもこの程度だが、白い肩で『チュッ』とキスの音を弾けさ
せると、喘ぎ声と反応が一段階跳ね上がる。
「アアッ!?」
 くちづけの感触。
 ビクッ!と電流を通されたみたいに、つぼみがカラダを震わす。
(もっと強く吸っちゃお)
 もぞもぞと身を乗り出したえりかが、つぼみの首筋に唇を押しつけた。『ちゅちゅぅぅ…』と音を
鳴らして、長めに吸いついてみせる。音が響いている間、つぼみはずっとピクピクピク…と小刻
みに震えていた。
「あああぁ…だめです、そんなに吸っちゃ…」
「そんな気持ちよさそうな声で『だめ』って言っても、ダメ。ゆるしてあげない」
 両腕がふさがっているので、おでこを上手く使って長い髪を払いのける。露(あら)わにになっ
た白いうなじへ、さっき以上に熱いキスを。
「ひ、あ…あ゛あ゛あ゛あ゛っ……!」
 つぼみの喉から絞り出される声は、甘やかなヨロコビを帯びていた。
 ぬるっとした体液の感触が、指の第一関節までをべったりと濡らしている。他人のものだけ
ど、汚いとは思わなかった。むしろ、つぼみをもっと濡らしてあげたい。
(ンン……つぼみを気持ちよくしてたら、あたしも…なんだか……)
 きゅうっと力を入れて両脚を閉じる。
 左腕はつぼみの腰を抱きしめていて、右手は彼女を気持ちよくさせるために忙しく動いてい
る。火照りだした部分を慰めてやるのは必然と後回しになる。
(……でも、ガマンしてたら変な気分になっちゃいそう)
 ショーツに深く潜らせた右手のペースが上がった。知らぬ間にえりかの興奮が伝わっている。
ウブなつぼみには、ちょっと刺激が強いか。
「えり…か…、そこっ…指が…アッ……ふああっ、そんなにしちゃ…そんなっ…ンンンンッ!」
 透明な汁でぬかるんだ秘貝の口を、くちゅくちゅ…と優しく責められ、つぼみが背筋をゾゾゾ
とわななせた。
 がんばって耐えようと思い、腰を抱いてくれているえりかの左手を強く掴む。
(どんどん……、私、どんどんエッチになっていきます……! んんんっ!)
 小鳥のさえずりみたいな『ちゅっちゅっ…ちゅちゅちゅっ…』というキスの音を鳴らして、えりか
の唇が首筋を這い登ってきた。全身が溶けそうなほど甘く震えだす。

「やめて、えりか……これ以上は、私……もう…、あんッ」
 言葉の途中で、つぼみの声が甘く跳ねた。
 キスの雨を細かく降らすえりかの唇が、つぼみの耳の裏を言葉でくすぐる。
「我慢できないくらい気持ちいいんでしょ? つぼみのここ、こんなになってるもんね」
「そんな、言わないで…ください…、あっ…だめです、そこはぁ…」
「だめっていうことは……つまり……」
「あっ、本当にダメですっ、えりか、指を……ふあああっ!?」
 えりかの指先が探り当てた、極めて小さな性感帯 ――― 包皮で隠された敏感すぎる部分。
そこをスリスリと優しくこすられる。
「クリトリスって言うの。知ってた? ……あたし、ここさわるの、すごく好き」
「ひ、あ、ああっ……あああっ……ン、だめ…アアッ! えりかっ、だめっ、こわいですっ!」
 腰の内側が熱くなって弾けてしまいそうだった。
 ……えりかの指はすぐに止まってくれたけれど、下半身を溶かしてしまいそうなほどの甘い痺
れは止まらない。
 つぼみの瞳から興奮の涙が枕へとこぼれ落ちた。
 すぐにえりかは察してくれて、ショーツから右手を抜いてくれた。
 何も言わずにつぼみの身体を乗り越え、正面へと回り込んできた。

 ぎゅううっ。

 つぼみの上半身が、自分より小さな少女の両腕で強く抱きしめられる。
「後ろからよりも、こっちのほうが落ち着くっしょ?」
「……はい」
「まだこわい?」
「いいえ。えりかがこうしてくれるなら平気の平左衛門です」
「なにそれ。あはは……」
「ふふふっ」
 えりかの眼差しが、つぼみの潤んだ瞳に強く惹かれた。
 お互いに微笑みながら見つめ合う。
 ぽう…と頬を上気させたつぼみは、とても可愛らしい色香に満ちていて、まぶしいものを見た
みたいにえりかのまぶたが閉じられた。
 あとは、スッ…と静かに顔を寄せるだけで事足りた。
 つぼみの唇 ――― やわらかい感触。
「……ッ!」
 声も出せず、ただ表情に驚きを残して、反射的につぼみも両目を閉じた。
 えりかの唇の感触。
 やわらかくて……熱い。
(んんっ!)
 つぼみの身体が不自然に硬直して、ビクッ!…ビクッ!…という強い痙攣に襲われる。
 震源地は、えりかの右手がさっきまでさわっていた部分。
 甘美すぎる波に本当に腰が溶けてしまいそうで、こわい。思いっきりえりかの身体に抱きつい
た。もっと強く唇同士を重ねあう。
 生まれて初めての性の絶頂。
 引き金となったのは、一番の親友と交わしたキスだった。