nameless Flower 02
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二人の唇が ――― ねっとりと煮詰められた軟らかさが吸い付きあって、湿った音を奏でる。
くちづけの溶け合う感触に続いて、えりかの舌先が唇を割って侵入してくる。
虫歯一つ無い綺麗な歯並び。エナメル質の硬いつややかさを舌でなぞって、奥側の一本をチ
ロチロと舐め上げてから口を離した。
「これは?」
「え…と、第一大臼歯です…」
えりかの舌のだいたいの位置を思い出しながら、つぼみがやや自信なさげに答える。
「正解。んじゃ次は?」
またキスを交わしつつ舌を差し入れてきた。歯茎まで深く舐めてくれると解りやすいのだが、
歯の部分だけ舐められると、感覚がかなり曖昧。
「どう、わかった?」
「……第一小臼歯か…第二小臼歯でしょうか?」
「第二小臼歯が正解。半分ハズレ♪」
「ううー、惜しいです」
残念がるつぼみが「もう一度!」と気合を入れなおす。
永久歯の数と名前と位置。えりかが舌と言葉を使って丁寧に教えてくれた知識。
くちづけされると、自分から唇を開いてえりかの舌を待つ。……待ち遠しくてウズウズする。
口の中に入ってきた舌の動きに集中。
ちろっ…と小さな動きで舐められたのは犬歯の一つ手前。今回は簡単。
「側切歯ですねっ」
「おっし、正解!」
ご褒美のつもりなのか、えりかが「ンンン〜〜〜」と熱烈すぎるキスを唇にしてくれた。ぷは
っ、と少女たちの唇が離れる。
「ま、ココなら解って当然てカンジだけどね。それを差し引いても随分と出来る子になってきたじ
ゃん。うん、つぼみは優秀だよ」
「そうですか? …ふふっ」
くすぐったい気分で照れ笑いをこぼす。
永久歯の数は、生えていない親知らずを除けば、上あごと下あごをあわせて28本。上下そ
れぞれの歯は同じ名称で、さらに一番手前の中切歯の二本から左右対称で生えているため、
奥の第二大臼歯までの計7本の名前さえ憶えてしまえば事足りる。
問題は、隙間のない美しい歯並びだ。歯の表面 ――― エナメル質に触覚が無いことも手伝
って、奥歯のほうへ行くほど位置の特定が微妙になってくる。何度も舐めてもらって、少しずつ
経験的に憶えていくしかない。
舐める側も、舌の感覚だけを頼りに、目的の歯をピンポイントで探り当てなければならない。
他人の口の中なんて初めてであるにもかかわらず、これを一回も間違えずにやってのけたえり
かの技量もすごい。
「舐められるのが歯の裏側だと、ちょっと難しいですね」
「ダイジョウブだって。すぐ慣れるから」
「しかし歯の名前を全部憶えていたり位置まで知っていたり、えりかは変な事には詳しいんです
ね。私、変な意味で感心しました」
「変ってなんだよぉーっ」
「よーしっ、今度はこちらから行きますよ。口を開けてください、えりか」
…………。
夢が不意に途切れて、つぼみがぼんやりとまぶたを開いた。
意識はまだ、まどろみの中を行き来している感じだった。
(よくわかりませんが、変な夢を見ちゃいました。 ――― ああ、そうだ。アレもきっと悪い夢に
違いありません!)
現実逃避をしようとしても、両腕に抱いた細い腕の感触が……。
この気持ちいい体温のぬくもり…。
頬をくすぐる穏やかな寝息。
えりかが軽い身体を、つぼみの上に重ねて眠っている。二人とも上半身はハダカのままだ。
「こちらは夢じゃなかったです…ハァ」
つぼみが重い溜息をつく。
――― いつか心から愛しえる人と。
乙女の唇に託していたロマンチックな甘い夢は、もう戻ってこない。
『なななっ…なんで私にキスを、…というか私の初めてのキスが…えりかああっ!?』
『…いやー、ゴメンゴメン。つい雰囲気に流されてつーか、その…ノリでやっちった』
『ノリでっ!?』
親友の寝息に引き寄せられるみたいに、つぼみは唇を重ねにいった。ファーストキスが無残
に散った昨晩から、えりかとのキスは『唇同士のスキンシップ』と、半ばやけっぱちになって割り
切っていた。
「ん…」
キスの優しい感触に意識を揺り戻されたらしく、えりかが可愛らしく反応して目覚める。
「つぼみぃ…。眠い……。学校行きたくない……」
「何を言ってるんです。全部えりかのせいですからね」
指先でえりかの髪を撫でる。私のファーストキスが……と思い出すと憎いほどの相手だが、
彼女の髪のさらさらとした感触をいらうのはとても気持ちがいい。
「つぼみー、まだ時間あるでしょ? ……昨日の続きしようよ」
「や・り・ま・せ・ん! もおっ、私の上からのいてください」
「やだ」
「こ、こらぁ、えりかっ、どこさわってるんですかっ」
「脱いじゃおか、これも」
「やめてください〜〜〜っ」
パジャマのボトムをずり下げようとする手に対して、はかない抵抗。太もも半ばまで下ろされ
たあとは、あっさりとショーツの中へ侵入を許してしまう。
「……抵抗しなくなったね、つぼみ」
「してますよ、してるじゃないですか」
「でも全然本気じゃないでしょ、それ」
えりかの言葉で、彼女の体を押しのけようとしていた両手の力が一段と弱まる。
「本当はしたいんでしょ、つぼみも」
「いじわるなこと…言わないで」
ほんのりと恥じらいを含んだ懇願。つぼみの声があまりにも可愛くて、えりかが唇を強く重ね
にいく。やわらかさを貪るみたいな、少し乱暴なくちづけ。
お互いの鼻がちょっとだけ邪魔だな、とえりかは思った。
(ん…苦しいです…っ)
なかなか唇を離してもらえない ――― その強引さに煽(あお)られて、つぼみの心が官能的
にざわついた。気持ちが昂ぶるのが抑えきれない。
「…んっ…ンッ……」
キスで閉ざされた唇から、つぼみのくぐもった喘ぎ声が洩れて部屋に響く。
「ん……んんっ」
えりかのキスに酔わされて、どんどん甘い気分に溶けてゆくつぼみ。
唇とショーツの内側をえりかに占領されて、好き放題されるがままだ。
軟らかな唇と唇。
いつの間にか二人の唾液で濡れて、ニュルニュルとした滑りも加わっていた。
『ちゅぷ…ちゅぶっ…』と吸いしゃぶる音を響かせて、顔をねじりながら色んな角度からつぼみ
の唇を求めるえりか。親友を感じさせつつ、自分もまた悦びに溺れていこうとしていた。
(ううう〜…つぼみの声のせいで耳の奥がくすぐったくなってきちゃった。がまんできない)
キスで唇を繋げたまま、えりかが上半身をもぞもぞと悶えさせた。生で触れ合う胸の先の感
覚。ピンと硬くなった二人の突起が互いの柔肌でこすれる。
「ん…ン゛…ンン……ッ」
つぼみもくすぐったいのか、声を上げてハダカの上半身を跳ねさせた。でも、えりかの下から
逃げようとはしない。むしろ、それに興奮したのか、自分からも積極的に唇を押し付けてきた。
(うわ〜〜、つぼみったらすごいや…)
昨日まで性の欲求に縁もなかった少女が、唇を溶かしてしまいそうな熱いキスで、えりかをゾ
クゾクと悦ばせていた。
(つぼみがこんなにがっつくなんてカワイイねっ、…と)
次はこっちの番だと言わんばかりに、はむっ…はむっ…と軟らかに上下の唇を動かして、つ
ぼみの唇をむさぼり味わう。
(ほらほら、キスだけじゃないよ? こっちでもちゃんと感じて)
ショーツの表面がモコモコとうごめいて、そこに潜りこんだ手の動きが活発化する。
無垢な秘所へ這わせた淫らな指使い。
すでにいやらしいよだれでベトベトになっている秘貝の口を、慣れた指先の動作でなぶり、時
には焦らす。感じやすい場所をコチョコチョくすぐってやると、つぼみがなまめかしく腰をくねら
せて悶える。
(こそばゆいのかなぁ〜? それともキモチイイのかな〜〜?)
きっと両方だよね、つぼみ。
ぷはっ、とえりかの口が離れた。
「…苦しかった?」と尋ねると、その声に反応して、つぼみがうっすらとまぶたを開く。完全に涙
目になっていた。
このままだとマトモにしゃべれないかな…と思い、彼女の秘部をもてあそんでいた指の動きを
とめてやる。ようやくつぼみの口から「私…」と言葉がこぼれた。
「これ以上されたら……私、本当にもう……お腹の下がキュウって熱くて……」
途切れ途切れの訴えが、逆にえりかの嗜虐心を高まらせた。
ニィィ、と口を緩ませて、声を上げずに笑う。
(つぼみを本気でいじめたくなってきちゃった)
えりかの眼差しに不安を感じたつぼみは、「駄目です…」という小さなつぶやきと共に首を横
に振った。許してもらえる可能性は無いと知りながら。
ショーツの中で指がまた動き始めた。
わざと時間をかけて、たどたどしく秘所をまさぐってゆく。
「ん〜、どこかなぁ、つぼみがイジメてほしい所は〜〜?」
観念したみたいにつぼみが目をつむる。
細いカラダは、えりかの下で震えていた。昨日、下半身を襲った甘美すぎる痺れを予感して、
まるで怯えているように。もしくはそれを待ちきれないみたいに。
(あっ…くぅっ…)
うずく部分を微妙にそれて、こまやかに踊るえりかの細指。つぼみの表情が、そのじれったさ
に歪む。ついには秘所のあちこちがこそばゆくなって、たまらず、自ら腰を動かして位置を合わ
せようとする。
「えりか……ここを…もっと……」
カァッ…と顔が熱くなってきた。あいまいに言葉を濁(にご)して、恥ずかしげに顔を伏せてし
まう。けれど、えりかが強引に唇を重ねてきて『チュッ』と音を鳴らす。
(ダーメだよ〜、ちゃんと最後まで言わなくちゃ)
すぐに離れた顔がニッコリとつぼみに笑いかける。
数秒の後、可憐な唇が覚悟を決めた。
「えりかの指で…いやらしいこと……いっぱいしてくださいっ」
「んっ、よろしい」
満悦の表情でうなずき、まずは、トロトロ…と蜜を溢れさす処女の部分を本格的に責め抜き
にかかる。イカせる前の仕込みの段階だ。
クチュ…と粘つく肉の感触。指先に力を加え、愛液にまみれた秘貝の口をほじってやる。
「うくううっ…!」
悩ましい声を上げて、つぼみが両手でしっかりとすがり付いてきた。大事な所へ侵入してくる
指の動きに興奮しているのか、やや息遣いが乱れている。
(ふふっ、つぼみったらこんなにハァハァ言って……もっと感じちゃえ!)
熱くぬかるんだ内側を指ですり上げてみると、つぼみの腰が『ビクンッ』とバネ仕掛けみたい
に激しく跳ねた。
「 ―――― ッッ!」
未知の刺激に、まともに声も上げられなかった。腰の奥に電気でも流されたみたいに、ブル
ブルと震えが止まらない。
後頭部を枕に擦りつけ、大粒の涙をこぼしながらえりかを見上げる。
「泣いちゃうくらい気持ちいいんだ?」
えりかの唇が近づいてきて、涙の跡を這う。指の動きは変化して、処女の秘唇へ『ニュプニュ
プ…』と浅く出し入れをくり返す。
「つぼみ、こっち向いて…。キスしてあげる」
つぼみは小さく首を縦に振って両目をつむった。
唇に軟らかい感触が重なる。自分の涙のせいか、少ししょっぱい。
つぼみが落ち着いてきたのを感じて、えりかがキスを解いた。
「ペース速めてみよっか?」
「はい…」
単調にゆっくりと抽送を続けていた指が、徐々にリズムを上げてゆく。速くなりすぎないよう、
つぼみの様子を窺いつつだが。
「あっ、あぁっ…あッ!」
思わずキスで口をふさいで上げたくなるような、断続的な甘い喘ぎ。
(うひゃーーっ、もうつぼみの反応ったらカワイすぎ!!)
えりかがギュッと強くまぶたを閉じて、心の中で嬉しそうに叫んだ。
(なんか、こう……ギュウウウウって抱きしめて振り回してやりたい気分だよ!)
ぐいぐいと高揚する愛しさは、暴走を起こす一歩手前。
純潔の乙女を口説き落とした指さばきは、性器の敏感さを執拗になぶり、辱めて、甘い被虐
の悦びを与える。
「私の腰がぁ、ヒッ…ふああっ、ああー……、えりかの指っ…すごすぎますっ…」
えりかの裸身の下で、ほそっこい肢体が、ぴくんっぴくんっ…と小さく跳ね回る。昨日まで性欲
を知らなかった無垢な部分を淫らな蜜で溢れさせて、表情を恍惚と上気させる。
「そろそろいいかな、クリトリスのほうも……」
ショーツの生地がモコモコといやらしくうごめく。股間を隠す薄絹一枚の下 ――― 恥裂への
指責めと並行して、器用に親指の付け根辺りでクリトリスを探り当ててみせる。
「ふあ゛ッ…」
つぼみの全身が、ガクンッ、と震えた。またたびを口に押し込まれた猫みたいな声を上げた
あとは、ひたすらえりかの裸身にしがみつきながら、腰から突き上がってくる快楽にどっぷりと
溺れていった。
(あ゛あああ、腰がジンジンして……溶けちゃいそうに熱いですっ!)
えりかが手をもぞもぞ動かすたび、甘美な欲情に目覚めた小さな肉突起が優しく刺激され
る。母指球のふっくらした肉厚を利用して、丁寧な圧迫と摩擦。
地味な愛撫だが、クリトリスは感覚の響き方が、まるでガラス製の神経の塊だ。包皮越しにと
はいえ、甘ったるい快感が『ジ…ン』と強く打ちつけてきて、少女を腰砕けにする。
「ううう…、んうううっ、あはぁッ……あっ、あ゛あ゛ーっ……」
クリトリスと性器を同時にもてあそぶ手馴れた動き ――― これまでに味わった何倍もの快
感でつぼみを犯し、彼女の精神を陥落させる。
(こんなに気持ちよくなって、わ…私はイケナイ子ですっ…)
その背徳感がスパイスとなって、生真面目な女子中学生の理性をゾクゾクと刺激してくる。も
う、つぼみには止められなかった。
「えりかっ」
「んー?」
「私っ、 ――― もっといやらしい女の子になりたいですっ」
……最初は、何をされているのか全く分からなかった。
下腹部に違和感。その正体がつぼみの右手だと分かった瞬間、「えっ?」という顔になって彼
女を見返した。
切なげに見上げてくる潤んだ眼差し。
パジャマのボトムに潜ってきた手は、下着の内側にまで入りこもうとしていた。
「………………」
えりかが珍しく黙って、ごくっ、とツバを飲んだ。
(うわー…、あたし、ちょっと震えてない?)
緊張と期待で、表情が固まってしまっている。
自分以外の手の侵入は、もちろん初めてだった。
ショーツの伸縮で柔らかに締め付けられた手を動かして、おずおずとまさぐってくる指の感
触。まだ右も左も分からないといった感じで、とりあえず性器を撫でている。
「き、きもちいいですか、えりか?」
「ううん、全然!」
つぼみの稚拙な愛撫をバッサリ一刀両断してのけてから、「でもさ…」と明るい声で続ける。
「つぼみがさわってくれて、あたし超ウレシイよっ。えと……なんてゆーかさぁー、全身爆発して
心臓がどっかに飛んでいっちゃいそうなくらいスゴク嬉しい気分♪」
お菓子を山ほどもらった子供みたいな笑顔だった。
それにつられて、つぼみも小さくニコッと微笑んでみせる。
「私、覚えますね、今のえりかの指使い。えりかを……ちゃんと気持ちよくできるように」
「いいよねえ、こういう友情!」
つぼみの言葉が嬉しくて、調子に乗ったえりかが「ウリャッ」とハダカの上半身を投げ出した。
十代前半の瑞々しい肌が、やわらかにこすれ合う。
「ひゃっ、くすぐったいじゃないですか、えりか!」
擦れた胸の先をかばおうと身をよじるつぼみに、面白がってさらに密着しようとするえりか。
逃げようとしても、その度にえりかの手の動きが速まって、
「ふああぁぁ〜〜〜…」
下半身が思うようにならない。くたぁっ…と力が抜けたかと思えば、急にビクンッと力(りき)ん
でしまったり、腰から太ももにかけて終始モゾモゾくねくねと悶えるばかり。
ベッドの上で戯れる半裸の少女たち。その肌がだんだんと火照ってきて、汗ばむ。
「つぼみの手、完全に止まっちゃったね」
「だって…だって……」
「つぼみのカラダにね、さっきからおっぱいの先っぽがこすれてるの…分かる? キモチイイん
だ、これ…すごく……」
「エ…エッチですよぉ、えりか…」
「つぼみはもっとエッチだけどね♪」
「えっ、アッ…いやっ、ちょっとえりかっ…ふああッ、ああぁっ、ンン!!」
喘ぐつぼみの背が、ビクッ!と弓反った。
ショーツに差し込まれた手が、濡れそぼった性器を一気に沸き立たせてゆく。
理性では対抗できない快感が、つぼみの全身を甘く痺れさせてしまう。
「だめっ、ううっ…あはぁっ……あっ、ン゛ンン……あ、だめ…です……はあああっ!」
絞り出した声もまた甘く崩れ落ちて、ただの喘ぎに転じる。
「いいよ、つぼみ。……イッちゃえ!」
『ちゅくちゅくちゅくちゅくっ……』と粘つく水音が、自分の恥ずかしい所から響く。これをえりかに
聞かれていると思うと、腰の奥が火がついたみたいに熱くなる。
(こ、こんな恥ずかしい私の姿、全部えりかに……知られちゃいましたっ……)
身も心もえりかの指に辱められて、
しかし、自分はそれを悦んでいると感じた瞬間 ―――― 、
「あああああ…ああああっ、あああああッッ……!!」
腰の奥が、どこまでも深く落下していくような妖しい感触。つぼみの肢体が『ゾゾゾゾッ…』と
総毛立つ。昨日味わった感覚よりもずっと気持ちがいい。えりかが触ってくれている部分には、
まだビクンビクンと快感の電流が弱く流れている。
イク寸前、片手で『ギュッ』としがみついてきた親友の反応が、完全に無くなった。
「つぼみー?」
呼びかけてみるも返事はない。彼女の胸にピトッと耳を当ててみると、心臓がえらく早鐘を打
っていた。
(興奮しすぎて気絶しちゃったか。あっ、そうだ)
ぐったりとしているつぼみの顔を覗きこんだ。いまだ法悦の表情で、唇からは悩ましく乱れた
呼吸が洩れている。
(つぼみ、キス好きだよね。目を覚ますまで、ずっとキスしててあげる……)
素敵な思いつきだった。
つぼみを起こさないよう静かに抱きしめ、まぶたを下ろした。
眠り姫へ優しいくちづけ。
やわらかな唇を重ねあう。彼女が目覚めなければ、いつまでも、ずっと。
つぼみの上半身 ――― 運動直後みたいに熱くなった体温が心地良く、抱きついたえりかを
幸せなまどろみにいざなってゆく。
数十秒後、呼吸をふさがれたつぼみが気絶状態のまま苦しげにうめきだした頃には、すっか
り二度寝に入って軽くいびきを立てていた。
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