お姫様と狼は一夜限り… 05

 ぶるっ……ぶるるっ……。
 りんの全身を瘧(おこり)のような震えが襲う。悦びに屈服するのは、快感だった。自ら大きく
開脚して、ひざを深く曲げた両脚をベッドから浮かせる。オシメを変えてもらう時の赤ちゃんの
ような姿勢。
(こんな……かっこうで……あー、ダメだ、あたし人生終わっちゃってる……)
 恥ずかしさのあまり、全身がブルブルと震えているのが自分でもわかる。でも、その恥ずかし
い格好をやめる気はない。
 てらてらとぬめった処女の媚粘膜を舐めいらう熱くて、やわらかな舌。興奮している鼻息が包
皮の上からクリトリスをくすぐってくる。蜜で濡れた膣穴をすすられるたび、りんは自分から尻を
揺すって嬉びを伝えた。
「あんっ、のぞみ……のぞみぃ、すごいよ……あ……は…あぁぁ……そこいい……、あああ、す
ごい……ふああぁぁ」
 あまりの気持ちよさに、りんは表情を悩ましく歪めてすすり泣いていた。上気して汗ばんだ裸
身をくねらし、腰を振り、ベッドの上で淫靡にカラダを踊らせる。
 スポーツに打ち込んで均整良く引き締めた身体は、りんのような健全な少女には宝だった。
それをあさましく貶めながら快楽に酔いしれる ――― そんな自分への軽蔑も、欲情を昂ぶら
せる燃料となった。
(あ゛ああ……あたし、こんなに生き恥晒して……もう二度とサッカーボール蹴れない。こんなイ
ヤラシイあたし……もう部活のみんなに顔見せられない)
 膣の入り口を、すぼめた舌先でほじくられる。乙女の恥じらいを捨てて、りんが大きな嬌声を
部屋中に響かせた。
(ふふっ、りんちゃん大きな声)
 溢れてくるうす酸っぱい蜜を、恥裂にくちづけして『ぢゅるるっ…ぢゅるるるっ!』とワザと淫ら
な吸い音を響かせながらすする。その音と股間に沸き上がる快感とのセットで、りんの脳をか
き回してやるのだ。
「いやあぁ……あああ…ああ……すごいよ、たまんないっ、死んじゃうっ」
 りんの両手の指が狂おしい動きで、のぞみの髪を乱暴にかき乱していく。
(あぁ、りんちゃんっ)
 りんの興奮が伝染したかのごとく、のぞみも乱れてきた。右手を自分の股の間に差し入れ
て、熱くなった恥部を一撫ですると、
(……うくぅっ!)
 りんの熱く蕩けた股間に、がくんっ、と顔をうずめて、のぞみが声にならない喘ぎを洩らした。
ジンッ!と突き上げてきた快感が頭を痺れさせる。
(ふあぁん……あたしのほうが先にまいっちゃいそうだよぉ)
 いやらしい所をいじる指が、自分の意思を離れて勝手に動く。さんざんイジメてくれたりんの
指戯を、のぞみの指が忠実に再現して秘所を犯そうとする。
 にゅぷり…。とろける恥裂の内側へ指が滑った。
(やだやだっ……またあたしの中に指が入ってきちゃうよぉ〜)
 自分の指なのに止められない。りんの股間に鼻面を押し付けて、舌をピチャピチャ鳴らしな
がら手淫に没頭していく。ぶるるっ、と震えるか細い裸身。
「あっ」
 りんの秘所にくっつけた口が、熱い溜め息をこぼした。右手の中指が第一関節まで膣内に侵
入していた。
「あっ……こら、のぞみ……自分でしちゃだめ……」
「だってぇ…んっ」
 のぞみが甘やかな声を上げる。発情して濡れそぼった膣穴が、咥えこんだ指をキュッと締め
付ける。ぶるっ、と悦びの震えが全身に走ると、のぞみの表情が恍惚に溶けた。
「はああ……指が奥まで入っちゃうよぉ……」
「だめ…あたしがしてあげるから……ちゃんと気持ちよくしてあげるから……」
 自分でしちゃうなんて可哀想……。涙で曇った両目を手の甲で拭いて、りんが後ろ手をつい
て身を起こした。そして、ジャムでべたつくのぞみの背中をペシペシと手の平で叩く。
「ほら、ちょっとだけ交代」
「んんぅ〜っ」
 抵抗するみたいに、さっきよりも深く股間に顔をうずめ、「嫌嫌」と首を横に振るのぞみ。左腕
でスルリとりんの太ももを抱え込んで、なおも右手の指を動かし続ける。
 その様子をしばらく見ていたりんがニ〜ッと両目を細めた。
「ふぅん、そんなにあたしのお股から離れたくないんだ? だったら ――― 」
 りんの両手がのぞみの後頭部を掴んで、ぐいっ、と思いっきり股間へ押さえつけた。
「ふぐっ ―― !」
 いきなり暴力じみた力で押さえつけられ、驚いているうちに、顔の下半分がやわらかい恥部
に埋もれてしまった。熱い軟泥にも似た蕩けた肉が口と鼻に密着して、のぞみの呼吸を完全に
塞ぐ。
「ずーっとそこに顔を埋めてなさい!」
 りんが意地悪い笑みを顔にうっすら広げて言った。
 頭を掴む両手に容赦なく力を込め、ぐりぐりと股間に顔を押し当てる。息苦しさに喘ぐ少女の
裸身がベッドの上で妖しくのたうった。
(苦しい? 苦しい? ……死にそう?)
 ほんの少しだけ手の力を緩めて、酸素を吸わしてやる。けれど、十秒もせぬうちに再び押さ
えつけ、のぞみから呼吸を奪った。密着した口で許しを乞うているのか、もごもごという動きが
秘所に伝わってくる。
(反省した、のぞみ?)
 りんが手を離して解放してやると、のぞみが「ぷはっ」と股間から顔を上げて、大きく息を吸っ
た。りんの手が、すっ、と伸びて、その鼻をぎゅむっとつまんだ。
「はひっ!?」
 反射的に目を合わせてきたのぞみに、りんが凄みのある光を湛えた瞳を重ねた。
「いい? 狼さん、こっちだってねぇ、いつまでもおしとやかなお姫様じゃいられないってーの。
…ったく、あたしがイキたいのを我慢して、気持ち良くしてあげるって言ってるのに」
 わずかながらドスのきいた声。お姫様というよりも軍事国家に君臨する女王様だ。眼光で威
圧されたのぞみが震え上がる。
「あたしにされるよりも、自分の手でするほうが気持ちよかったって? ……へぇ、ずいぶんい
い度胸してるじゃない。あたしの股の間で窒息死させてあげよっか?」
 のぞみが鼻をつままれたまま、ガクガクブルブルと首を横に振った。りんが「ふんっ」と鼻を離
した。
 お姫様が、びっ、と無言でベッドを指差す。狼はその指示に従って、よく訓練された軍用犬の
動きでベッドに仰向けに寝そべった。ピン!と両脚をそろえて伸ばし、両手の指も綺麗にそろ
えて腰の横に。全身がちがちに緊張している。
「……ちゃんとイイことしてあげるから」
 硬い態度を解き、りんが艶のある微笑で口もとをほころばせた。すぐ隣には、白くてやわらか
な肢体。ほんのり汗ばんだ肌にジャムやら生クリームやらがくっついて美味しそう。
(しっかしまぁ、のぞみはともかく、ベッドの上、本当にとんでもない事になってるよ。これ……の
ぞみのお母さんにどう説明しよう?)
 あちこちにすり付けられ、染み込んだジャムやら生クリームやら。洗って落ちるものなのだろ
うか? りんが首をゆっくり左右に振って、その懸念を頭から追い出す。
(あとで考えよ。今は『二人が一番気持ち良く』だよね、のぞみ)
 それにしても……。ふわふわの砂糖菓子みたいな性格の彼女には、甘い姿の良く似合うこ
と。いつか科学技術が進化して、ジャムや蜂蜜で服が作れるようになったら、是非プレゼントし
てあげねば。かわいらしい自分の想像に、りんがクスクス忍び笑いを洩らした。
 戦々恐々とベッドに寝ていたのぞみが、不思議そうにりんを見上げた。
「りんちゃん…」
「んっ?」
「じっとあたしのカラダ見てるけど……食べたい? ……狼の役、代わっちゃう?」
「ううん。せっかくだから、あたしはお姫様でいくよ。今日を逃したら、お姫様になれる機会なん
て一生ないもん」
 甘い甘いカラダのお姫様。引き締められた胴に支えられた小ぶりな胸を悩ましげに揺らして
みせ、誘惑的に微笑みかける。
「乗るよ? 狼さん」
 りんの脚が持ち上がって、のぞみの首をまたいだ。彼女の顔に背中を向ける格好でひざ立ち
になる。ポタ…ポタ…と愛液に溶かされた生クリームがのぞみの顔に落ちていった。
(お姫様の甘い蜜……)
 唇の上に落ちてきたしずくを、ぺろりと舐めとる。甘くて、ちょっと酸っぱい。
 りんが背筋をそらしながら、後ろを覗き込むように首を巡らせる。
「のぞみ、もっと大きく脚広げて」
「うん」
 素直な返事と共に、両ひざを立てて、出来得る限り大きく脚を開いた。いやらしく粘つく股の
間を、りんの視線が舐めてゆく。
「んっ…」
 恥ずかしそうな声を小さく洩らしたのぞみが、両目を閉じて睫毛を震わせた。視線の辱めを
受けて、秘所が熱く疼いてくる。
「のぞみの中、見〜ちゃおっと」
 腰を突き出すような姿勢で前のめりになったりんが、両手の指で粘液にまみれた恥裂を左右
に広げた。熱くぬめったサーモンピンクの淫肉が、欲情した視線に犯されてひくつく。
 発情した性器から立ち昇る、むせ返るような生々しい淫臭。興奮を高めるその匂いを、りん
がゆっくり呼吸した。
「りんちゃん、りんちゃんっ!」
 ぐいっ、と腰を強く抱き寄せられる。たまらなくなったのぞみが、りんの秘所を求めてきたの
だ。舌を精一杯のばしても届かぬ高さにある股間を、のぞみが切なげな視線で見上げる。
「こーらっ、がっつかないのっ。ふふっ」
 大好きな相手に、そんなに強く求められると、ついイジワルして焦らしたくなる。でも、さすが
にそれは可哀想かと思い直し、片方ずつひざを崩した。
 ぐっしょりと濡れた肉の感触が顔面に被さるやいなや、のぞみが飢えた舌使いで猛烈に恥裂
を舐めまわしてきた。ぞぞぞ…と膣を蕩かす快感に、りんが淫靡に瞳を潤ませた。
「やだっ! 激し……そんな…、も、もっとゆっくり……あああ、やだぁ、もっと……あくっ、こわ
れ……ううっ!」
 りんの腰がビクッと跳ね、両足の指が、ぎゅっ、と強く丸められた。頑張って舌を伸ばし、のぞ
みの内側をペロリ、ペロリ、と舐め上げるが、それが限度。とろけた肉の味を感じる余裕さえな
い。
(頭……痺れるっ!)
 膣口を舌先でほじられ、ガマン出来ない気持ち良さにたまらずキュッと締めると、今度はむさ
ぼるようなキスで吸い付かれた。『ぷぢゅううっ!』と痛いほどの吸引。
「あ゛っ…あ゛っ…!」
 腰がガクガクと震えて、りんが目を見開いた。気持ち良さのあまり大粒の涙をこぼしながらも
歯を食いしばる。
(のぞみを気持ち良く……してあげなきゃ!)
 のぞみの股間に再び顔をうずめる。けれども、熱くとろけた恥裂の肉に唇を這わせただけで
力尽きてしまう。
(ああぁ、がんばらないと……のぞみのためにも……アッ! そこ駄目ッ……死ぬっ!)
 びくっ、とりんの表情が歪んだ。
 クリトリスを舐めまわし、優しく包皮をむく舌使い。ぷっくりとした無防備な弱点に唇が『ちゅっ
ちゅっ』と吸い付く。一番敏感な官能器官を、甘美な電流が強く貫いた。
「ああ゛、死ぬ…死んじゃうッ!!」
 りんに目から涙が飛び散る。自然と括約筋が、キュウッ、と締まって、腰からつま先までを大
きな痙攣が一気に走り抜けた。りんの口から狂ったように何度も「死ぬっ」という言葉が吐き出
される。
(りんちゃん……まだ死んじゃダメ!)
 ごろり…と体勢が入れ替わった。今度はのぞみが上になる。
「ねぇ、りんちゃん、あたしも……んんっ!……気持ち良く……!」
 びちっ。びちっ。びちっ。
 しどけなく濡れそぼった熱い肉が、りんの顔面を叩いた。のぞみが犬のようにあさましく腰を
前後に振って、たまらなくなった股間の火照りを慰撫する。
「んんっ!」「んーっ!」
 二人のうめき声が重なる。りんの顔にぐりぐりと押し付けられた股間。濡れた肉の密着で呼
吸が出来なくなる。のぞみがそのまま腰を左右にくねらせた。
 顔の上で、ぬめぬめといやらしい肉が滑る感触。
(あたしの顔……のぞみに犯されてるっ)
 息苦しさに襲われながら、りんは全身を震わすほどの官能的な悦びに浸っていた。口を開い
て、垂れてくる愛液を喉で受け止める。
「うぅ…くぅっ……!」
 のぞみが上気した表情を震わせた。一番大事な人の顔に、猥褻な性器を擦り付ける背徳感
は、今までに味わった事のない興奮を彼女に与えた。
(りんちゃん……)
 いやらしく腰をくねらせながら、すぐ鼻先にある性器に激しくむしゃぶりついた。とろとろになっ
た恥裂を夢中になって舐めまわす。りんの分泌する愛液の味が、のぞみの脳をかき乱し、昂
ぶらせていた。
「…ぐっ! ……げほっ! けほっ!」
 りんの脚が、ぴんっ!と突っ張って、直後激しく咳き込む声が聞こえた。気道に愛液が入った
らしい。のぞみが少しだけ腰を浮かし、呼吸する隙間を作ってやる。
 ぜぇぜぇ、と苦しげに喘いでいたりんが呼吸を持ち直すまでの間、のぞみはしっとりと舌使い
を緩めて、優しく舐め続けていた。まるで、生まれたての子猫を母猫が舐めてあげるみたい
に。
 いやらしく舐めまわられるのとは別種の快感。じんわりと、気持ち良さが秘所の奥深くにまで
溶けてゆく。
「んんっ……のぞみぃ」
 甘い声で名を呼んで、両方の太ももを持ち上げ、彼女の顔をきゅっと挟み込む。蜜を溢れさ
せる部分を愛情たっぷりに舐めてくれているお返しをしたいと思った。
 瑞々しい桃の丸みを描く尻に両手を這わせた。汁気をたっぷり含んだ果実の代わりに、やわ
らかな脂肪が詰まって触り心地がいい。思わず撫で回してしまう。
(ンッ…!)
 りんの淫らな部分に舌を踊らせていたのぞみが、胸のうちで甘くうめいた。尻がグイッと下に
引き寄せられる感触に続き、りんが軽く上体を上げて、熱く潤んだ秘所に唇を重ねてきた。熱く
とろけていた部分が、さらに熱くとろける。
(りんちゃん……好き。愛してる)
 のぞみの舌使いが、ほんの少し速くなった。りんも、とろけた恥肉に唇を強く押し付けてくる。
 共通の興奮が二人を繋いでいた。<好き>という想いに端(たん)を発した淫らな興奮。
 のぞみがもっともっと舌使いを速くした。恥裂を浅くえぐって、粘膜を直接舐め上げる。
「あっ、やだ……こわれちゃ……ンッ、やっ、奥は……あっ、ああっ……」
 これは、どんな勝ち気な女の子でも、か弱いお姫様に変えてしまう魔法。のぞみの唇が愛液
のぬかるみを『ぢゅぅぅっ』と吸い上げる。
 ゾクゾク ――― ッッ。
 りんがベッドの上で裸身を仰け反らせた。眉間に深く刻まれたシワが、股間を嬲る快感の度
合いを物語っている。
 のぞみの舌で責められる度、甘い電気が処女の膣内を這いずり回った。触れた事のない内
側から来る感覚は、おぞましくて、甘美で、りんのように気の強い少女でもすすり泣いてしまう。
「あああぁっ、だめっ、こわれるっ、あああ……こわれるっ、くぅっ、…あはぁぁっ」
 部屋中に響き渡っていた嬌声は、そこで途切れた。再びりんの顔に押し付けられた股間。鼻
と唇の間を、濡れた肉のやわらかさが滑るように往復する。
(犯して ――― もっとあたしの顔犯してッ!)
 顔に淫らな蜜をなすり付けられる行為に異様な興奮を覚えたのか、りん自らも、愛液で粘つく
股間に顔をより深く密着させて、のぞみの腰振りにあわせて揺すり始めた。
(んんっ、りんちゃんてば積極的……)
 のぞみもりんの股間に顔をすり寄せた。額や鼻、頬からあごの先まで、べったりと愛液をこす
り付けて汚し抜く。愛しい人の淫蜜にまみれたのぞみの表情が恍惚と輝いた。
「……りんちゃん、り〜んちゃん」
 すっかり力の抜けた太ももを両手で押し広げ、いつもと変わらぬ調子で呼びかける。返事は
返ってこなかった。のぞみの股の下で、自ら顔を汚す行為に没頭し続けている。毛穴のひとつ
ひとつまで、のぞみの分泌したイヤラシイもので汚そうと耽っていた。
 お互い逆さ向きで、その顔は見えないけれど……。のぞみからりんへ、愛しげな微笑が届く。
(いこっ!)
 りんが何度も「死ぬっ」と口にしたクリトリス ―― さっきよりも充血している ―― を、舌先で
優しく洗うように舐め転がしてやる。
「くうっ!!」
 ひと声うめいて、りんが汗の噴き出す裸身を強張らせた。優しく扱われているが、ひときわ感
度の高い陰核への刺激は、とろけてしまった性器全体を沸かすほどに気持ちがいい。
(ふわぁっ……)
 のぞみの尻を抱えていた両手から力が抜け、ベッドの上に落ちた。閉じたまぶたの裏から溢
れる涙と、塗りたくった愛液でグショグショになった顔。口周りにこびりついた液には、自分の唾
液も混じっていた。
 犯された後のように弛緩した虚ろな表情。しかし、すぼめた唇でクリトリスにキュッと吸いつか
れると、途端に眉間に厳しいシワを刻んで喘いだ。
「ひっ…あ゛っ!」
 のぞみがクリトリスに吸い付いたまま、軽く顔を左右にねじった。感じきった官能器官に、そ
の刺激が電気のように走る。
「うっ、死んじゃう……死んじゃ…ふぐっ……死んじゃうぅっ、やだっ、あ゛っ、こわいこわいっ! 
ああああぁんッ!」
 顔の上で激しさを増した股間の往復に時折息をふさがれながら、りんはクリトリスを責められ
る快感に泣きじゃくった。
 敏感すぎてたまらない官能器官を、のぞみの舌が延々と弄ぶ。こりこりした小粒な神経の塊
が、ピチャピチャと粘つく音を立ててねぶりまわされた。
 りんが一段と高い泣き声で「お願い許してっ」と叫ぶと、逆に舌先による愛撫がさらに激しくク
リトリスに集中した。
(狼さんっ、狼さんッ! お願いだからもうっ……あああっ!)
 お姫様が声を詰まらせて、何度も心の中で許しを乞う。感じすぎて霞みがかった脳を、クリト
リスの上げる悲鳴だけが鮮明に貫いてくる。
 もう限界なのに、熱い息をこぼすのぞみの唇が、クリトリスを『きゅううっっ!』と吸い上げ、き
つく締め付けてきた。
「 ――― ッッ!!」
 声も出せずにりんの顔が仰け反った。甘やかな電気ショックが、ジ ―― ンッ!とクリトリスを
強烈に打ち据え、りんの脳を狂わんばかりの快感でひっかきまわしてゆく。
「ひぎっ! 死ぬっ、死ぬっ、それ以上されたらあたし本当にっ……だめっ、もう…あああああ
っ!!」
 荒波に打たれたように激しく痙攣するカラダの上で、のぞみも卑猥な腰使いをさらに速めた。
熱く蕩けた秘所を快感で溶かし尽くそうと、りんの顔に密着させた腰を振り乱す。
「りんちゃんっ、あたしも……あっ……一緒に…死ぬからっ……くっ、あっあっ、もう……もう…
…アアッ!! 来ちゃうっっ!!」
 その瞬間、お互いの腕が、今までで一番強く身体を抱き締めあった。お互いの股間にうずめ
た顔が、ベトベトになりながらも法悦の表情にとろける。
 ほぼ同時に絶頂を迎えた二人の少女は、全身をさらう甘い余韻の波の中で、夢見るように相
手のカラダの熱さを感じ続けた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 意識が朦朧とたゆたっていた。眠りと目覚めの狭間を……。
「りんちゃん、あ〜ん」
 優しく顔を抱きかかえられて、うながされるままに唇を開いた。のぞみの口から、たらり…と垂
れてきた唾液が、その唇の中に吸い込まれていった。
 りんが、こくんっ、と喉を鳴らして飲み干す。うっすらと目を開いた先に、愛しげに微笑んでくる
のぞみの顔があった。
 まるで、優雅にベッドに腰を下ろした聖母像だった。
 りんの上体を優しく抱き起こし、首後ろにそっと手を添えて、彼女が目覚めるのをじっと待っ
ていたのだ。あどけない無防備な顔を、静かな眼差しで見守りながら。
「あたし……どれぐらい寝ちゃってた? まだ夜なのかな……」
「朝は来ないよ。あたしがおまじないをかけたから」
 二人が顔を見合わせて、花蕾がほころぶように笑った。
「せっかく作ってくれたのに、ベトベトになっちゃった」
 のぞみが左腕を上げて、言葉通りひどいことになっているウェディングブレスレットを見せて
苦笑した。
「ホントだ。あたしのも……うっわ、どうしよう……」
 りんも右手首に通したブレスレットに視線を向けて、ただ笑うことしか出来なかった。
「ベッドだって……ジャムや生クリームやら……」
「それに、りんちゃんのエッチなお汁とか」
「あたしたちの、でしょ?」
 甘くデコレートされたベッドの上で、少女たちがキスを交わした。何度も、何度も、唇のやわら
かさが溶け合うほどに。
 まだ一夜限りの魔法が効いているから、お姫様と狼は誰よりも強く愛で結ばれていた。
「あのね、お姫様にお願いがあるの」
「なに?」
「二人が生まれ変わったら、その時は ――― 」
 それは遥か未来へと続いてゆく二人の約束。
「あたしが誰かを好きになる前に見つけ出して。そして、あたしを『愛してる』って抱き締めて。
初めてのキスも……りんちゃんが奪って。そうしたら今度は……」
 一夜限りの魔法が、永遠のものになるから。
「約束する」
 りんがのぞみのカラダから身を起こして、真正面から向き合った。一糸まとわぬ姿で、真摯に
誓いの言葉を紡いでいく。
「約束する。世界のどこにいたって、あたしがすぐに探し出して、最高のファーストキスをのぞみ
にあげる。……もう二度と、のぞみを他の人に渡したりなんかしない。あたしが生涯愛してあげ
る」
 のぞみが両目にこぼれそうなほど涙を溜めて、とても嬉しそうな顔でうなずいた。幸せに震え
る手で、左手からウェディングブレスレットを抜き、右手に通し変える。
 そして、ぴょこっ、と可愛らしく小指を立てた右手を、りんの顔の前に差し出した。
 ジャムや生クリームのついた顔に爽やかな笑みを吹かせ、りんもまた右手の小指を立てて、
のぞみと小指を絡めあった。
「「ゆーびきりげんまんっ ――― 」」
 二人の元気のいい声が、そこで途切れた。
 りんが大きな瞳に、いたずらっ子みたいな光をたたえて訊いた。
「うそついたら?」
 のぞみが顔中に華やかな笑みを咲かせて答える。
「狼が食べちゃう!」
 のぞみが勢いよく身体をりんに預けた。二人ともベッドにひっくり返る。

 二人の顔の間に、繋がったままの約束の小指。

「朝が来るまでは、お姫様を食べててもいいんだよね」
「うん」
 夜天の帳(とばり)が明けるまで、お姫様と狼は甘い愛を交し合う ――― 。


(おわり)