Sugar vs Mustard 05


 一糸まとわぬ美しい女体が、名残惜しそうに愛妻への抱擁を解いた。
「ほら、せつな。早くベッドに」
「……わかってる」
 ベッドに上がる前に、ラブに叱られたくて、少しだけグズグズしてみる。すぐさま強い平手打ち
が、カタチの良い臀部に飛んできた。「あんッ」と色っぽく喘ぐせつなが、ゆったりとした動作で、
ピチピチとした尻の肉付きを強調するように前かがみになって、ベッドに両手を着いた。
 再び尻がビンタされ、ぎゅっと詰まった肉を叩く音が鳴り響く。
 せつなは媚笑を浮かべて、右ひざをベッドの上に乗せた。ラブの反応をうかがいつつ、腰か
ら後ろを小さくくねらせた。その挑発的なしぐさを受け、また尻に強烈なビンタが弾けた。
「ううっ…うっ」
 被虐の悦びにゾクゾクと震え、唇から快楽のうめき声が洩れた。
 ようやく左ひざもベッドに乗った。 ――― これで四つん這いの姿勢になった。ベッドの傍らに
立つラブに尻を向けたまま、誘惑の貌(かお)で肩越しに振り返り、熱い吐息をこぼす。
「ん〜? せつなはコレがほしいのかなぁッ!」
 量感のある丸みを描く尻へ鋭く振り下ろした手の平が、派手な音を鳴らした。「あぁっ!」とい
う熱く濡れた声に加え、痛みに悶えて腰を揺する姿が、ラブの嗜虐心をあおった。
「ほらほらッ! 奴隷らしく、もっと躾(しつけ)けてあげる!」
 せつなの尻に平手打ちを食らわせながら、自分もベッドに上がった。逃げようとする腰を左手
で捕まえ、右手で烈(はげ)しく何度もぶった。
 せつなは、精神が気高く、母親としての責任感も非常に強い女性だ。……なのに、スマートに
鍛えられた手足は全くの無抵抗を示し、汗にまみれたカラダ全体で恥辱を受け入れている。
 ――― せつなは、あたしと混ざり合いたいのかな。
 ふと、いまいち自分でも意味の解らない事を考えてしまう。すっかり赤く染まった尻に手を置
き、そして、思い出した。
(あ、そうそう、せつなを『犯す』んだっけ。忘れそうになってた)
 せつなの尻を叩いて屈服させるのが楽しくて、つい夢中になっていた。
 はあっ、はあっ…と荒く息を乱す彼女の腰を解放すると、両ひざがペタンと崩れてしまった。
本人も気付かない内にイッていたのかもしれない。
「ダメだよ、せ〜つ〜な〜。んー、それともご褒美はいらないのかなぁ」
 股の下から手を差し入れ、ぐちゅぐちゅに濡れそぼった秘所の肉を優しく撫でさする。せつな
が回復するまでの時間、とろけた恥肉と粘膜をゆっくりといらう。

「せつな、もう一頑張り…いける?」
「うん、ラブに犯してもらうためだもの。精一杯頑張るわ」
 そう言ってカラダを横向きに寝そべらせ、左脚を高く上げて、淫臭の匂い立つ秘部を大きくさ
らけ出した。陰毛はベトベトに汚れ、熱くほてった陰唇も淫蜜まみれ ――― 清冽な美貌と雰囲
気の持ち主である桃園せつなという女性からは、想像もつかない猥褻さがそこにはあった。
 せつなのトロトロにぬかるんだ女性器を眺めつつ、彼女の右太ももをまたいで両ひざをベッド
に着け、静かに腰を下ろした。
「今日も一緒に池を作ろうね♪」
 口もとを笑みで緩ませるラブが、腰をモゾモゾ動かして前へ移動する。ちなみに池とは、二人
が激しく愛し合った際に、ちょうど彼女たちの腰の下辺りに出来る大きなシミの事だ。
「ラブのせいで、今夜は湖が出来ちゃいそう」
「ふふっ、わかった。じゃあ湖になるまで……せつなのココをいっぱい泣かせてあげる」
 ラブの手がせつなの左脚を掴んで、さらにググーッと大きく股を開かせた。新体操選手並み
に柔軟で、しなやかな身体は、母親になった今もたゆまぬ自己鍛錬によって維持されている。
 せつなの左脚を自分の肩に乗せるように抱えたラブが、座位の体勢から彼女の表情をうっと
りと見下ろした。
「こーんなに脚広げさせられて…、ふふっ、恥ずかしい格好だよね、せつなぁ」
 愛液で粘つく部分を、しどけなく蜜汁を垂らす秘所に重ねた。濡れ肉同士をくっつける卑猥な
感触が、お互いの性器に妖しい悦びを響かせる。
「ンン…ッ、せつなのココ……すっごく熱くなってる」
「ラブのも……すごい…イヤラシイ。ねえ、ラブ…、もう待てない。早く……」
 興奮のせいで、せつなの声が熱くかすれていた。両眉を悩ましげに寄せて、高熱に喘いでい
るような顔だ。それを見つめるラブの背筋に、ぞくっ…と、痺れが這い登ってきた。
「せつなが赤ちゃんを産んだ場所を、今からたっぷり犯してあげる」
 ヌルリ…と蜜まみれになった秘貝の口をなめらかにこすりながら、腰をこまかく揺するように
動かした。まずはゆっくり、時折、荒々しくむさぼりにかかるみたいに腰使いを強め、すぐに元
の緩やかなペースに落とす。
「ああ゛ぁっ…ラブのいじわる、すごいっ、アアアッ…ア゛アーーッ……そんな事ずっとされたら、
おかしくなるっ」
 せつなの秘所が一番欲しがっている快感 ――― それに届きそうになった途端、スッと遠ざ
けられてしまう。いわゆる生殺しの責めだ。
 唇だけではなく、こういう性器同士のキスも数え切れないほど味わい尽くしてきた間柄だ。どう
すれば彼女をよがり狂わせられるか、その程度のことは身体で覚えてしまっている。
「そろそろ本気で腰使っちゃおっか。フフッ、うーん……どうしよっかな〜〜?」
 なめらかに腰を使いつつ、言葉による焦(じ)らしも組み合わせる。
 せつなは瞳を大粒の涙で濡らし、股間からは恥液を漏らし、情けなく喘いでラブに身を任せる
しか出来ない。
「ああ゛ぁんっ、おねがいっ、私…イキたいっ、ラブに強引に攻め落とされたいっ」
「あははっ、だーめ」
「はあ゛ああっ、アッ…、お…おねがい、イカせて……ラブぅ」
 くちゅくちゅくちゅ……と、密着した二人の股間から、淫らな水音が小さく鳴り続いていた。ラ
ブの腰の動きで、粘液にまみれた秘貝がこね合わされているのだ。
 双方の恥裂が垂らす愛蜜を潤滑油にして、軟らかに蕩けた媚肉がヌルヌルと愛撫しあうみた
いにキスを繰り返す。ラブの腰使いに微妙に加えられる変化が、これを単調なものにしない。
「あっ、ああっ、ラブぅ、耐えられないっ、気持ちよすぎて…無理ぃっ」
 腰の奥に快感のさざ波が打ち寄せてくる。涙に濡れた瞳が、イカせてほしいと許しを請う。そ
れに対して、ラブは意地の悪い眼差しを返し、わざと淫らに腰を揺すり ――― そして、せつな
がその気になった所で、急に腰の動きを緩めた。
「あははっ、イキそこねたでしょ、せつな。まだまだ、もーっとイジメてあげるから覚悟して!」

 ねっとりとした腰の動きで、せつなの秘所を支配する。彼女がガマンできないよう、濡れた性
器の感触で猥褻なキスを繰り返し、絶頂に昇り詰めようとする気配が出た所で、生殺しに方向
転換。
「ああ゛―っ、そんな…ダメっ、ダメっ、あぁぁんっ、ラブぅ、ああっ、もうダメぇッ…、もう無理ぃぃ
っ、あンンッ……ンンン゛ッ! おねがいだから、もうイジメないでぇっ!」
 ベッドの上で乱れる汗だくの女体が、びくんっ、びくんっ、と快楽の痙攣で跳ねる。ラブの腰も
少しずつだが、せつなを攻め狂わせる動きに入っている。
「イジメないで? イジメられて、そんな嬉しそうな表情(カオ)になってるクセに! ねえっ、イカ
せてもらえないほうが気持ちいいんだよね、せつなはっ!」
 すすり泣くせつなが黒髪をかき上げて、弱々しくかぶりを振った。その裸体が、またビクンッと
跳ねる。そのせつなの姿が哀れだと思うと同時に、彼女をメチャクチャにしたいという乱暴な欲
情がラブの胸に湧いた。
「赤ちゃんを産む大切な場所を、こんなにベトベトに汚して…。でも、そんなせつなが好き」
 抱えていたせつなの左脚を離して、ラブもカラダをベッドに倒した。ほんのわずかでも深く、股
間同士を食い込ませるために。
「ほーら、せつなも一緒にダンスして。あたしが気持ちよくなれたらご褒美あげる」
 秘所を交わらせて、さっきよりも意地悪く腰を使う。しかし、もう生殺しは無しだ。せつなも腰を
使い始めたが、熱くなった性器を舐めまわすようなラブの腰の動きに悶えさせられ、ただ尻を
揺すった程度の無様な結果を残したのみだ。
「あああ……だめ、ラブぅぅ、私っ、もう…………」
 深く股間で交わった二人の下半身が、粘っこい音を鳴らしてベッドの上で淫らにくねる。混ざ
り合う愛液がベッドに垂れて、ぐっしょりとシミを濃くする。
「…いい? イク? ほら、せつな、返事はっ?」
 ラブも随分と昂(たかぶ)っていた。腰使いにも乱暴さがにじみ出て ――― しかし、それがせ
つなの秘所を熱く沸かせた。肉襞が恍惚に酔いしれ、膣がビクッ、ビクッと収縮する。
 ――― もうダメっ!
 女性器同士を激しいキスで愛し合わせる行為に、ついにせつなが降参した。 ――― ほぼ同
時にラブも。
「イクッ、ラブに犯されてイクッ…、はああっ、ああラブも一緒にっ!」
「イクよっ、ああぁんっ……せつなが赤ちゃん産む場所犯してイクよっ!」
「ああああイクううっっ! い…くううっ、赤ちゃん産む場所でイクううッッ!!」
「あああっ、すごいよッ、あ゛あ゛あ゛あ゛っっ、せつなッ、あああぁぁああああ……!!」

 ビクンッ!……ビクンッ!

 ラブとせつなの手足が ――― 汗に濡れた肌が、電気に打たれたみたいに痙攣した。あまり
にも快感が強くて、二人の秘部がそろって潮を噴いてしまう。
 絶頂の感覚に意識を塗りつぶされていく中で、せつなの鼓膜に、やや虚ろな響きの声が届い
た。
「……ねえ、せつな、今、しあわせ?」
 全力疾走直後のように、せわしく息をしているせつなが苦笑して答えた。
「決まってるじゃない。こんなの……しあわせすぎる」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 熔けそうなほどに火照った肌で強く抱き合う。
 二人とも、セックスの余韻が消える前に、汗だくのカラダでお互いの熱くなった体温を味わい
尽くすのが一番好きだった。
 まだ呼吸の乱れが治(おさ)まらない口で、ラブが睦言をつぶやくように声を紡いだ。
「ねえ…、せつな」
「うん…」
 やや気だるそうに、せつながうっすらとまぶたを開いた。
「なーに、ラブ?」
「あのね、昔のあたしたち……ピーチとイースが最後に闘った後も、こんな風に抱きしめてあげ
ればよかったなぁって……」
「ふふっ…、あの時にこんな事してきたら、たぶんラブを張り倒してるわ」
「せつなになら張り倒されてもいいよ」
「張り倒す代わりに、こういうのはどう?」
 ラブに抱きついたまま、その裸身を愛しそうに頬擦りしながら、身を下げていく。そして、ベッ
タリと汚れた股間までたどり着いた唇が、「ちゅちゅちゅ…チュッ、ちゅちゅちゅっ」と甘やかな
音を小刻みに鳴らし、くすぐったいキスを連発。
「やっ…、アッ、こら、せつなっ」
 下半身をくねらせ、嬉しそうに悶えるラブ。サァッ、と右手で前髪をかき上げたせつなが、愛
情たっぷりに舌も使い出す。
 ラブは「あんっ…」とよろこびの声を洩らし ――― 同時に、今日までの経験則から、このあ
と、せつなが取るであろう行動を予測した。
「あっ、だめ…待ってせつな…だめっ、だめっ……」
 ラブの喘ぎに、微かな焦りが混じった。
 右の太ももを片腕で抱きかかえ、内側の白い肌を舌の先でこまやかに舐め洗っていたせつ
なだが、やがて我慢できなくなったみたいに、その部分へ乱暴に噛みついた。
「はあああっっ…!」
 ベッドの上で、ラブが汗だくの上半身をビクッと仰け反らせた。せつなは何回か噛みついてか
ら、今度は抵抗する左の太ももを強引に抱き、荒々しく舐めてきた。そして、やっぱり噛みつい
てきた。
「もおっ! 痛いよ、せつな……だめだってばあ!」
 痛がるラブの反応を無視して、左右の太ももの内側を交互に噛み続ける。「ううっ」と悩ましく
両目を閉じて耐えていたラブが、しかたないなあ……、とまぶたを上げ、両手の平を『ぽんぽん
っ』と打ち鳴らして、せつなの気を惹いた。
「ほら、もういいでしょ? こっち来て。ギュッてしてあげる。ほらっ、せつな……ギュッ、だよ?」
「んっ…」
 太ももを噛んだまま、せつなが動きをとめた。少し経ってから口を離して、ラブの両腕の間へ
と身体を移動させる。
「ハイッ、せつな捕まえたっ。ギュウウウウ〜〜っっ」
 愛妻のやわらかな裸身を抱きしめ、汗で湿った彼女の髪に顔の下半分を強く押しつける。好
きな相手の頭皮のにおいを胸いっぱい嗅いで愉しむ。
「せつなってさ、すごい気持ちいい状態でイッたあと、攻撃的になる時あるよね?」
「そう?」
 優しくラブの両腕をほどいて、まだ快感の熱に支配されているカラダを起こした。情愛の時間
を終えて、徐々に母親の顔へと戻っている。
「どうしたの、せーつーなー?」
 ラブの手が伸びて、せつなの髪をいらう。
 聴覚を鋭敏に澄ましてみるが、子供部屋で眠っている娘がぐずついたりしている気配はな
い。それでも母親としての本能がうずいてきて、どうしても気になってしまって仕方がない。
「ラブはそのまま寝てて。私が様子見てくるから」
「あ、待って。あたしね ――― 」
 一度言葉を切ったラブが、仰向けの姿勢からせつなを見上げて続けた。
「仕事の都合を見ながらなんだけど……来年の頭あたり、せつなの赤ちゃんを身ごもってみよ
うかって考えてるの」
「ラブ…」
 思わずせつなの瞳が潤む。心が、愛しい気持ちであふれかえりそうなほど……。
 二人が再びベッドの上で裸身を重ね、強く抱き合う。
「あと10秒…ううん、あと1分だけ……こうさせて」
「わかった。1分ね」
 カラダのやわらかさとぬくもりを感じながら、二人の母親はゆっくりと60秒を数え始めた。
 
 
 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 画用紙代わりの厚めの白紙に、真っ赤な色が塗りたくられる。娘が手に持っているのは、せ
つな手作りのクレヨンだ。
「あー、こら、クレヨンを口に入れちゃ、めっ。…ほら、せつなママを描こうね」
 ラブに手伝ってもらいながら人生初めての絵を描く娘の姿を、椅子に腰掛けさせられたせつ
なは、身じろぎ一つ許されないまま見つめていた。
 気合を入れて最高のコーディネイトでモデルとして挑んだものの、これではせっかくの製作過
程を見ることが出来ない。 ――― しかし、すごく気になる。
「じゃあ、ここに描いたおめめに色付けよっか。…ん、今度は黄色にするの?」
 基本、一歳二ヶ月の娘のやりたいようにさせているため、紙の上はキムチ鍋をぶち撒けたご
ときの有様だ。もしくは人間としてのカタチを破壊された惨殺死体か。所々に散りばめられた謎
の青色や緑色は、見た者の心の中から猟奇的な恐れを引き上げようとしているかのようだ。
 しかし、親バカをこじらせたラブにとっては、これは天上で描かれた名画に等しい。
「うわー、ホントに上手に描けたねー。ん、もっと描きたいの? じゃあ、描こっか」
 娘と一緒に仲睦まじい芸術活動に勤しむラブの姿に、せつながとうとう我慢できなくなった。
「ね…ねえ、二人とも、どんな絵が描けたの? 私にも見せて」
 椅子から軽く腰を浮かせた途端、ラブの声が飛んでくる。
「モデルは動いちゃダメでしょっ!」
「だめーっ」
 あどけない天使の声で、娘がラブの援護射撃に回る。自分が産んだ娘に裏切られた気分
で、せつながショックを受けてしまう。しかし可愛い我が子を責める事は不可能。なので、怒り
は全てラブへと向かった。
(……お…おのれええ〜〜。ラブ、とにかく絶対に許すまじ!)
 今すぐ愛妻にボストンクラブを仕掛けたいという衝動を押さえ込み、せつなは物静かな雰囲
気で絵のモデルを続けた。今夜、寝室で『Sugar vs Mustard』の枕を投げて、『S』の面を出すこ
とを固く心に誓いながら。
 赤い色は飽きたのか、二枚目の白紙にはやたらと黄色とオレンジ色が塗りたくられた。

 二人の母と娘 ――― 三人一緒の、幸せな時間。
 きっと来年には、家族が一人増えている。

(おわり)