Friendful party 03


 ようやくトワの指が止まった時には、ひめは笑いすぎて涙をこぼしていた。
 レジーナが右手を離して、ひめのくちびるを拭いてやる。こっちはヨダレをこぼしていた。
「トワワンってひどいよねー、ひめ?」
「レジーナだってひどいよね!?」
 ひめが怒りのまなざしをレジーナにぶつける。 ――― でも、まだ右手はレジーナの左手と握
りあったままだ。温泉の湯の下で、しっかりと繋がっている。
 ぎろりっ…と視線を巡らせて、ひめが背後のトワにも怒りを向ける。
「……で、トワはわたしに何かいう事ないの?」
「ごっ、ごめんなさいっ」
 身を縮こまらせて、トワが謝る。こちらは真摯に自身の行為を反省しているようだった。
「わたくし、ひめを気持ちよくして差し上げるつもりが、ついイジワルするのに夢中になってしま
って。ああ、なんということを……」
「いや…、別に、そんなに怒ってないんだけど」
 トワが泣いてしまうんじゃないかと思って、あわてて怒りを引っ込めるひめ。
「本当ですかっ!?」
 実際にトワは涙を流す寸前だった。そんな彼女をフォローすべく、レジーナがあさっての方向
を向いて嘯(うそぶ)く。
「ま、ひめって三人の中じゃ一番の美少女だし、可愛すぎてイジワルしたくなっちゃうもんねー」
「美少女!!?」
 ひめが飛び上がらんばかりに反応。そして、さらりと口からつぶやきをこぼす。
「プリキュアの中で……わたしが一番の美少女……」

 ――― いや、あたし、そこまで言ってないでしょ。
 レジーナが憮然とした表情になるが、ひめをノせる事には成功したようで、さっそくトワに謝っ
ている。先のくすぐり責めに関しては、ひめの可愛らしさが原因で、それに惑わされたトワは無
罪ということで一件落着。
「あ、でもね、もうちょっと…ちゃんと、気持ちよくなってみたいんだけど……」
 ひめがもじもじと顔を赤らめて、やや上目遣いでトワとレジーナを交互に見る。
「まあ確かに、ひめの場合、なんかひどかった気がする。……うん、よし、じゃあトワワンは、ひ
めの胸をお願い」
「こんな感じでしょうか……?」
 ひめの背中にぴったりと裸身を寄せて、両腕を彼女のカラダの正面へ回す。
 さっきの暴走を反省しているのか、さわり方はおとなしめ。
 なだらかなふくらみを愛でるようにすべる手の平。肌の白さに半ば溶けているような薄い色の
乳輪へと伸ばした指先で、その中心を指先で優しく刺激。とても小さな円をクルクルと何度も描
いているうちに、敏感な突起に固さが生まれ始めた。
「あぁ…はあっ、くすぐったいけど……気持ちいいよう」
「優しくしますね、ひめ」
 そう言って、感じやすい可憐な乳首を、人差し指と中指でそっと挟みこんで、そのまま手を左
右にすべらせる。胸の先っぽが人差し指と中指の先まで来たら、今度は逆に二本の指の付け
根まで。そして、また指の先まで。
 トワのなめらかな指の感触が、ずっと乳突起に触れながら、すー…、すー…、と優しい愛撫の
往復を繰り返す。
「ふう…ん、…あっ、はあっ…あ……あっ、トワの指……すごく…きもちいい……」
 胸先の甘いくすぐったさに、緩やかに酔いしれてゆくひめ。思わずまぶたを閉じてしまった少
女の耳を、愛くるしい声音が撫でてきた。
「素敵な夢を見させてあげるって言ったの、憶えてる? ――― 赤ちゃんを産む大切な場所
に、ひめが幸せになれるおまじないをかけてあげる」
 ひめがうっすらと双眸を開くと同時に、レジーナの金色の髪が湯に没した。ふとももの間に侵
入してくるこそばゆさ。ひめがくすぐったそうに裸身を震わせて喘ぐ。湯に潜ったレジーナが何
をしようとしているかなんて全然分からなくて、
 ――― でも、
 さっきからずっとレジーナの左手と繋がったままの右手を信じているから。
 両太ももの間に強引に顔をねじ込まれた時は、正直恥ずかしすぎて情けない表情を晒したも
のの、レジーナになら何をされても怖くはなかった。

 心臓がいつもよりも大きく、速く、脈を打っている。
 最初に感じたのは、こそばゆさだった。軟らかいものが何度も肌をなぞっている。直感でそれ
がくちびるだと悟った。
 しばらくして、レジーナの頭が湯の表面を「ざっぱん」と割って出てきた。
「あぁ〜ん、もう! 髪の毛重ーいっ!」
 プンスカと苛立ちを振り撒いたレジーナだが、ひめと視線が合うと、青い瞳に浮かぶ表情をコ
ロリと変えて、チャーミングな笑顔になった。そして、自分のくちびるを指差す、
「このくちびるはね、四葉財閥や海藤財閥でも買えない、最強に価値のある宝石なんだから」
 それだけを言って、また唐突に温泉に潜るレジーナ。
 今度は、ひめが自分から左右のふとももを大きく開いて、レジーナの顔を招き入れる。
 軟らかな感触 ――― くちびるが、ひめのこそばゆい部分を何度もなぞってくる。くすぐったい
けれど、右手が握った大切な手の平を頼りに耐える。
 ――― ぶるっ。
 カラダの奥 ――― 正確には腰の奥に、甘美とも言える震えが湧き上がった。レジーナのくち
びるが触れている部分のすぐ近くだ。
「ひめ…」
「うん、平気。レジーナがね、わたしに幸せな気持ちよさをくれているの」
 ……トワの指も、だね。
 幼い乳頭をスリスリと指の腹で擦(す)り転がして、たまにキュッとイジワル気味につまんでき
たりもする。まるで宝物と戯れているような甘い指使い。
「あぁっ……こんなの…カラダ溶けちゃうよ……」
「レジーナは随分と甘い夢で、ひめを酔わせてくれているようですわね」
「レジーナだけじゃないよ。トワの指も……ふふっ、テクニシャンだから」
「まあ。ではせっかくですから、女の子専門のマッサージ師を目指してみようかしら」
 トワと一緒に笑うひめが彼女に「ねえっ」と呼びかけて、左手を肩の高さまで持ち上げた。
 後ろにいるトワが自然な所作で、ひめの手に自分の左手を重ねて、淑やかに握る。
――― ひめもトワも、手と手で繋がっているのが幸せだった。

 ぷくっ…ぶくっ、ぶくっ……。
 湯の表面に弾ける気泡に続いて、潜っていたレジーナが派手に湯を散らして顔を出した。

「ぷはっ。あー、やっぱり髪重ぉ。ねえ、ひめ、上がったら、あたしの髪乾かすの手伝ってよ」
「うん、手伝うから……その、もう少しだけレジーナの宝石で素敵な夢を見させてもらってもいい
かな?」
「フフフッ、もし本気で気に入ったんなら、この宝石、奪って独り占めしてくれてもいいよ。買うこ
とは誰にも出来ないけど、奪うことは出来るの。……まあ、マナぐらい素敵な人じゃないと無理
な話だけど」
 美しい金髪が湯に沈んで、開かれた脚の間に近づいてくる。ひめがチラッと振り向いて、トワ
と視線を合わせた。トワが優しく左手を握り直す。
 まなざしを湯の下に戻したひめは、軟らかな感触が触れる前から、ぶるっ…と腰の奥に震え
が走るのを感じた。トワに見られているのが恥ずかしいけれど、そのせいで少しゾクゾクする。
 ――― レジーナの左手と繋いだ右手に、微かだけれど、その反応が現れてしまったらしい。

(ああ、そういうことね。おっけー♪)
 ひめの心の奥底で疼いた願望を読み取ったレジーナが、青い瞳をいじわるい色に染めた。
(トワに見られながらイジメられたいんだ)
 友だちになったばかりの少女の無垢な秘部に愛しげなまなざしを這わせ、彼女をシアワセに
導くためのおまじないを開始する。

「うっ! ……くっ…あはぁっ!」
 軟らかなレジーナの宝石は、ひめの大切な所に吸い付いてきた。湯の下で顔を左右に小さく
振りつつ、そのくちづけが淫らな愛撫へと化ける。まだ性器として扱ったことのない処女の秘肉
が、恍惚の痺れになぶられた。
「あっ…あっ…何これ? ふあぁ…、とまんないよぉ……」
 腰の奥で、ぶるっ…ぶるっ…と震えが断続的に湧き上がっている。切ない火にチロリと神経
を炙られたような感覚。熱くて……溶けそう。
「あああっ、レジーナっ……あああああっ!」
 あきらかに脱衣場にまで聞こえている声で、ひめが大きく喘いだ。
 腰から突き上がってくる快感に、背中がゾクゾクと痺れる。
 小学生並みに細く、肉付きの少ない裸体が悶えて、湯の表面に荒っぽく波を立てた。


 大切な場所が ――― 愛されている ――― 。
 その姿を見られている ――― トワに ――― 。


 ザパッ!と湯を割って上がってきたレジーナの頭。金髪を頭部のカタチに沿って張り付かせ
た彼女が、ひめを見つめながら、トワへと呼びかける。
「ブルースカイ王国王女のいやらしい姿、トワにたっぷりと見せてあげる」
「ふふっ、わたくしだけでは勿体無いですわ。ひめのいやらしい姿、是非、めぐみにも……」
「えっ、やだっ! めぐみにだけはっ ――― 」
 
 顔色を変えたひめの前で、レジーナが温泉に潜る。
 大親友の名前のせいで恥じらいを呼び戻されたらしく、ひめが腰を軽く後ろへ引くのが見え
た。
(許してなんか、あ・げ・な・い)
 ひめの敏感な所へ、くちびるの軟らかさを何度も激しく押しつけた。むさぼるようなキスによる
愛撫。肉の悦びを掘り起こすためだけのくちづけ。
 ――― ビクンッ!
 と、、ひめの腰の奥で甘美な痺れが跳ねた。
「ああっ、やっ…だぁっ」
 思わず閉じてしまいそうになった両太もも。
 レジーナが一番こそばゆい部分に狙いを定め、頭を小さく振って軟らかなくちびるをこすり付
けてくる。全身に広がった敏感さのために、ひめはもうどんな声もガマンできない。
「あああ……あ゛あ゛あ゛っ、トワっ、見て…っ、気持ちよすぎて…ふあああっ、すごいのぉぉっ!」
「あらあら、そんなに大きな声を上げては、めぐみに聞こえてしまいますわよ?」
 ぎゅっ。レジーナの手を握るひめの右手にチカラがこもった。
 耳たぶの裏へ甘くささやきかけられる、いじわるな言葉。
「……ほらほら、脱衣場のほうに誰か来てしまいましたわ。……めぐみでしょうか?
 ふふふっ、大変なコトになりましたわね。二人がかりでイジメられている恥ずかしい姿を、今か
ら一番大切な人に見られてしまうのですよ。どうです、ひめ、気分は? …ふふっ」
「やだっ…やだぁっ…」
 弱々しくかぶりを振るひめ。トワの言葉が嘘だと分かっていても、こみ上げてくる恥ずかしさを
抑えられない。 ――― そのカラダがいきなり硬直した。
 
 トワの指が優しくひめの胸先を ――― なめらかな乳突起の感触を撫で転がしながら、甘く噛
んだ耳たぶから、ゆっくりと口を離した。
「……興奮してますわよ。ひめの…胸の先っぽ」
「トワ……、あっ…、アアアアッッ!」

 胸先を愛撫する指使いも一瞬忘れてしまうほどのうずき。
 腰の奥深くを責められているような感覚。
 甘やかに蕩けた秘肉を、レジーナのくちびるがさらに甘く口説き落とそうとしてくる。

「だめっ、そこ……本当にわたし、いやらしくなっちゃ……ひいッッ、あああっ!」
 薄い皮膚の上から恥骨を嬲るように繰り返されるキス。……ずりずりと後ろへ下がろうとする
王女の腰を捕まえて、レジーナが両太ももの間へ頭を突っ込ませてきた。
「ああ…あああっ……ああ……」
「ふふっ。さあ、ひめ、レジーナに全てを委ねて、存分にいやらしくおなりなさい」
 金髪を湯にたゆたわせつつ、ブクブクと空気の泡を洩らすくちびるが、処女の性器へと優しく
こすり付けられる。軟らかな感触で舐めまわされているみたいで気持ちいい。
 女の子の秘部を愛撫され、閉じたまぶたの裏で、ゾクっ…ゾクッ…と夢見心地に浸っていた
ひめが、「…あっっ」と声を上げて、急に裸身をこわばらせた。
 クリトリス ――― 小粒な突起を覆い隠す包皮の上を偶然になぞったくちびるの感触。それは
腰を溶かしそうなぐらい甘美に響いた。
 気持ちよすぎて ――― 狂う。
「ああ゛あっ…腰っ、くっ……溶けちゃ…う……あぁぁっ、これっ、だめっ、うっ…くううぅっっ!」
 腰の奥で響いていた震えは、今はもう、びくっ…びくんっ!という断続的な痙攣の段階に跳ね
上がっていた。
 ――― この瞬間、左手はトワに、右手はレジーナによって強く握りしめられた。
「……ふあああっっ!!」
 興奮の涙を頬に伝わせ、ふにゃっ…と緩んだ口で甘い啼き声を上げる。
 絶頂と呼ぶにはあまりに浅い快感の波だが、中学生の少女には充分すぎる官能体験だ。

 なによりも、
 湯の下から姿を現したレジーナへ全力で抱きついた時の幸福感、
 快楽の残り火でカラダをほてらせたまま、トワと静かに抱きあった時の陶酔感、
 カラダが感じた気持ちよさ以上に、
 白雪ひめの心は、あたたかな気持ちよさで満たされた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


< エピソード1 白雪ひめ >

 ひめの宝物 ――― それは、友だち。
 だからブルースカイ王国で、王女兼教師として、そういう学校作りを目指してみようと思った。
 勉強やスポーツなどはもちろん大切だけど、
 それ以上に大切なのは、誰もが誰とでも友だちになれること。

 正直、王女と教師の兼任なんて出来るかどうか解からないし、そもそも教師になれる自信す
ら無かった。でも、やってみたい。精一杯頑張ってみたい。
 これは、友達が一人もいなかった頃の自分には見れなかった夢だ。
 めぐみやみんなと一緒の自分だからこそ見れた夢だ。
 だから諦めたくない。もし教師になれないのだったら、なれる自分に変わればいい。
 めぐみに向かって「頑張ってるよ!」と胸を張れる未来のために。

「う…うーー、頑張ります…ですぞ」
 夢を叶える決心はしたものの、その過程を考えると、だんだん気持ちが後ろ向きになってき
てしまうのが情けなかった。
 だが、ここで心が折れては脱衣所で見送ってくれたトワとレジーナに申し訳ない。
 温泉にダイブした際にずぶ濡れになってしまった髪を二人がかりで乾かしてくれて、
「さあさあ、善は急げですわ!」
「めぐみに話したら、次はあたしたちにもちゃーんと教えてよね」
 と、背中を押してくれた友だちのためにも。

「あっ、ひめっ!」
「めぐみっ!」
 今頃は部屋にいるだろうと向かっていたら、バッタリ廊下で遭遇。
 めぐみの顔を見た途端、後ろ向きな気持ちは吹き飛んだ。まるで何かの魔法がかけられた
みたいに。……この最高の友だちに、早く夢のことを話したくてたまらなくなってしまう。
 ――― でも、今はそれ以上に、めぐみに話したいことがあった。
「めぐみ聞いてっ、今日、わたしに素敵な友だちが二人も出来たんだよ!」


< エピソード2 紅城トワ >

 ……翌日。

「あーあ、トワっち、顔真っ赤だよ。湯冷めして風邪引いちゃったんじゃない?」
 同じ部屋に泊まっているきららが、布団から出て来られなくなったトワを心配する。
 トワは掛け布団を口もとまで引き上げて、
「も…問題ありませんわ」
 と、答えた。
 そう。体調には、確かに問題はない。
 ただ、昨日あんなコトがあったせいで、どうしても意識してしまうのだ。
 きららのほっそりした手足とか、スマートなボディラインとか、爪の手入れが行き届いた美しい
指先とか、さらさらした髪から漂う匂いとか。
 ――― あと、つややかなくちびる。

 きららに視線を向けずとも、近くに彼女がいるだけで心拍数が上がってしまうような状態だっ
た。

「問題ないワケないでしょ?」
 トワが寝込んでいる布団の脇に手を付いて、きららが覆いかぶさってくるように……。
 きららの手がトワの前髪を払って、そして自分の前髪も手で押さえて、おでこ同士をくっつけ
る。
 顔の距離に近さに、トワが思わず呼吸をとめてしまう。
「ほら、トワっち、けっこう熱あるじゃん。……しばらくはあたしが付きっ切りで看病してあげるか
ら、無理しないで」

 トワが布団を顔まで引き上げて、「……くうううっ」と小さな声でうめく。

 ――― あなたに付きっ切りで看病されている限り、わたくし、布団から出られませんわぁぁ!


< エピソード3 レジーナ >

 ……同じく翌日。
 
 大広間での朝食は特に時間は定まっておらず、すでに朝食を終えて部屋に戻ろうとしている
少女たちの姿もチラホラ見受けられた。
 そこへ、レジーナはマナの左腕に両手を絡ませ、必要以上に身体を押し付けた姿で現れた。
二人の数歩後ろには、ドス黒いオーラのような雰囲気を放つ六花が続いている。
「じゃ…じゃあ、食べよっか」
 宿泊客一人に付き一つずつ、料理の乗せられた膳が等間隔で並べられている。レジーナは
当然といった顔でマナと一緒に腰を下ろそうとする。
「レ、レジーナのお膳はそっちだよ」
「何言ってんのよ、マナ。ほら見て、あたし両腕ふさがってるのよ」
 と、マナの左腕に絡ませた両手をアピール。
「ね? マナに食べさせてもらわなきゃ、あたし朝食抜きになっちゃうじゃない」
「そ…、そうだねぇ」

 結局、「あーん」と幸せそうに口を開くレジーナに、マナが子煩悩な母のごとく箸を動かして食
べさせてあげる。そんなマナへ、六花がすぐ右隣の膳から剣山のごとき視線を飛ばしまくって
いる。
 しかし……。

(あ、これ、レジーナがこの前おいしいおいしいって ――― )
 自分の膳に並べられた小鉢のひとつに、たまたま視線を落とした六花が、ふと思い出した。そ
して、くすっ、と小さく笑って隣の膳を見た。思ったとおり、マナの膳にあるその小鉢の中身は、
きれいに食べられてしまっていた。
「ねえ、マナ、これ。レジーナに食べさせてあげて」
 ごく自然に。
 自分と大切な人の間に強引に割って入る少女のために。

「ありがとう、六花」
 マナが、手渡された小鉢と交換に、空になった小鉢を六花に差し出す。……と同時に、六花
の両手が流れるように受け取って、それを自身の膳へ。
「よかったね、レジーナ。はい、あーんして」
 と、微笑みながら食べさせてくれるマナ。
「そうだ。どうせならレジーナのお膳をこっちにくっつけちゃおっか」
 と、二人の食事のために甲斐甲斐しく動く六花。

 レジーナのために、マナと六花の心の向きが綺麗に揃う。

 ――― なによ、もうっ!
 マナの左腕にしがみついて、さらに強く身体を密着させる。「な…なんで怒ってるの?」とマナ
が腕の痛みに戸惑いの笑みを浮かべるけれど、レジーナは無視。
 こんなにくっついているのに、ちっとも近くなれない。
 マナと六花みたいには。

「今度は六花があたしに食べさせて。はい、あーん」
「へ? マナじゃなくて、わたしが…?」
 少しでも六花を困らせてやりたくて、こんな事をする。
 
 六花のせいで、マナが自分のものにならないというのに……。

「はい、レジーナ。……どう、おいしい?」
「ん…、じゃあ、次はマナに食べさせてあげて」
「え…ええっと。……えっ?」
「ほら、六花、みんなの前だからって照れないの。マナも早く、あーんって口開いて」

 きっと六花はどんな時でも、マナの心に寄り添ってくれる。 ――― そう思うと、胸が温かくな
るような安心感を覚えた。

(おわり)