fusion02

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「はい、なぎさ」
 ほのかの部屋に通されてから、ずっと膝を抱えて座り込んでいるなぎさの前に、冷えた麦茶
を載せたお盆がそっと置かれた。麦茶に浮かぶ氷が、コップの端にカランとぶつかり、涼やか
な音を立てた。そして、その音を最後に、窒息しそうな静寂が部屋の中を支配していった。
 あの後、無事ミップルとメップルの両名を捕獲したほのかは、ネルプのカードをスラッシュして
二人を強制睡眠させ、まだショックが尾を引いているなぎさを、とりあえず自分の家へと連れて
帰った。
 雪城家の留守を預かっていた祖母は、なぎさの様子を目にし、変わらない穏やかな眼差しを
ほのかに向けて、「私は少し、用事がありますから」と外出していった。二人の友情関係を信頼
した上で、気を使ってくれたらしい。
 障子の向こうから染み透ってくる西日の気だるい熱を受けながら、なぎさは石になってしまっ
たように動かない。ただ、どん底に落ちた気分に胸を潰され、鉛のごとく重い呼吸を繰り返して
いた。
 涙の染み込んだ跡が胸の辺りまでこぼれている夏服もそのままに、ほのかは親友のすぐ傍
へ腰を下ろした。柳眉の下を憂いに翳らせた表情で、大切な親友を気遣うように、ただそっと
静かに寄り添う。
 そんなほのかの心遣いが本当にありがたくて…………心の底から申し訳なく思った。
 なぎさは、伏せていた視線を上げ、重く塞いでいた口を、ようやく開いた。
「ごめん、ほのか、迷惑ばっかかけて。なんか……アタシって最低だよね。あんな変態なこと、
外でやっちゃってさ」
 もはや泣く元気もない様子で、慙愧の念に暗く沈んだまま、ぼそっ…と漏らす。
「ホント駄目だよね、アタシって…マジありえない。こんなアタシじゃ、もう…ほのかと……一緒
になんか……」
「ね…ねえ、なぎさ…」
 暗く綴られるモノローグに、ほのかが躊躇いがちな口調で言葉を被せる。なぎさの独白も途
切れたが、しかし、その後の会話も続かない。無言まま流れた一瞬が、部屋の空気を気まずく
する……。
「あっ、そうだ! 私ね、なぎさに見せたいものがあるの」
 わざと明るい声を上げ、状況の打開を試みた。やや強張った面持ちで立ち上がり、机の抽斗
を開け、奥の方に隠していたケースを取り出した。それを机の上に置いて、ごくりと緊張気味に
唾を飲んだ。
「ちょ、ちょっと待ってね……」
 じっとりと手が汗ばんでくる。強張って感覚の薄れた指が、ケースを開けようとしてもたついて
しまう。心の中で停止の赤信号が点灯するが、なぎさのことで頭が一杯になっているほのか
は、迷うことなくルールを犯した。
(そうよ、なぎさを何とかしてあげなくちゃいけないの!)
 緊張ですくむ手を叱咤しながらケースを開き、ぎこちない指で落とさないよう注意して中身を
取り出した。
 綺麗なレモネード色のスケルトンカラーに覆われた楕円の本体と、コードで繋がれたスイッ
チ。本来ならば、なぎさに対してもずっと秘密にしておくべきモノ。平静を保とうと努力している
ほのかの気持ちとは裏腹に、顔中を朱の色で埋める勢いで、かぁぁぁっと血が熱く昇ってくる。
「な、なぎさッ、こ…これ、知って…る…?」
 なぎさの注意を引くために、勢いよく言ってみたつもりだが、恥ずかしくて声がすぼまっていっ
てしまう。
 うつむいていたなぎさが顔を上げ、ほのかの差し出してきたモノに目を向ける。しかし、今の
精神状態では、それが何であろうと全く関心を示す気になれず、黙ったまま首を横に振った。
 逃げ出したくなるような気持ちを抑えて、可哀相なくらい真っ赤になったほのかが説明を行
う。
「あ、あのね、これ、ピンクローターっていう大人のオモチャなの。イケナイことは分かってるん
だけど……その…通販で…こっそり買っちゃって……。わ…私、いつもエ…エッチなことすると
きは、これ使ってるの」
 耳まで真っ赤になりながら、上擦る声で、早口になって説明を終える。顔面が火照って熱い。
本当に顔から火が出そうだ。
「嘘…っ、ほのかがエッチなことって……」
 なぎさの両目が少しだけ見開かれる。そんななぎさから隠れるように赤らんだ顔をそむけ、蚊
の鳴くような声で続けた。
「そ、そりゃあ、私だって…気持ちのいいことくらいするわよ? だ、だって…だって…その、分
かるでしょ? つまり、私もなぎさと同じで…その…………って、もおぉぉっ分かるでしょッ!? 
なぎさーッッ!!」
 空気を入れすぎてしまった風船のように、恥ずかしさが突然に破裂して、目の前のなぎさへと
炸裂した。
「えっ!? あ、はいっ! 分かりますとも!」
 泣き出しそうな表情で身を乗り出して迫ってきたほのかの勢いに弾かれ、思わず敬語で激し
く頷く。
「……そっかぁ。ほのかもエッチなことするんだ」
 取り乱した顔を両手で覆って、上半身をぶんぶんと左右へ振り回している親友を前に、ホッと
したような声を漏らした。なぎさの顔に、少しばかり生気が戻ってきた。
「……で、その…なんだっけ? えっと…それって、どうやって使うの?」
「えっ? あ、うん。これね……」
 動転した気を静めようと深呼吸を繰り返すほのかが、なぎさの膝の間にするりと体を割り込
ませ、身をすり寄せてくる。吐く息が届き合う距離にドキッとして、なぎさが小さな声を上げた。
「わっ…」
 普段から見慣れているはずなのに、二人だけの秘密の戯れに及ぼうとしているこの瞬間、ぐ
っと近づけられた清楚な面立ちに何故かうろたえてしまった。変に意識を続けたまま、さりげな
さを装ってほのかに見入っているなぎさの頬が、うっすらと赤く染まっていく。
「スイッチ入れるね」
 ほのかの手の中で、ローターがおもむろに振動音を立て始める。低周波音を響かすオモチャ
が、自分の体へと近づいてくるのを目で追いながら、若干不安になってきたなぎさが尋ねる。
「ま…まさか、電気ショックとかじゃないよね?」
「ふふっ、大丈夫だってば。そんなのじゃないから」
 夏服の上から添わせるように、なぎさの胸へ、振動するローターを軽くタッチさせた。
「えっ…何っ、なんか、これって……」
 服の生地を通して伝わるバイブレーションに、なぎさが戸惑いの声を上げる。指以外のもの
による初めての感触が、やさしく胸をまさぐってくる。
「ん〜と、この辺?」
 服の上から見当を付けて、ほのかがローターで胸の頂をなぞってきた。敏感な部分を震わす
刺激に、なぎさが驚いて体をよじった。
「ひゃあっ!?」
「ご、ごめんっ、なぎさっ」
 慌ててスイッチを切ったほのかに向けて、なぎさも慌てて首を横に振った。
「ううんっ、こっちこそごめん。その、ちょっと…気持ちよすぎて。アタシ…ほら、指でしかやった
ことないから」
 上目遣いでほのかを見ながら、ハハ…と照れ笑いを浮かべ、上気した頬を指でポリポリと掻
く。ようやく戻ってきた親友の笑顔に、ほのかの表情も自然と緩み、安堵の笑みがこぼれた。
「アタシのやり方って、ホント子供だよね」
「そんなことないわよ。むしろ私のが…その、背伸びしすぎっていうか…」
 仲良く微笑みを交し合っていた二人が、ふと、親密すぎる体の距離を意識して、お互いに笑
みを潜めた。無言のまま、二人の胸の奥で、トクトクトク・・・と鼓動の音が時を刻んでいく。
(なに? なんだろ、女の子同士で…この変な感じ……)
(体の距離とかじゃなくて……、なぎさのこと、いつもよりも近くに感じてる……)
 二人の間で、息苦しい時間が続く。
「……なぎさ、あの…」
 何かを言おうとしてまごつき、いったん言葉を仕舞ってしまったほのかが、しばらくの無言を
経て、再度おずおずと口を開いた。
「なぎさは……指の方がいい?」
「えっ?」
 曖昧に濁した言葉の意味が分からず、二度三度と瞬きするなぎさに、ほのかは少し困った顔
で、気恥ずかしそうに言い直した。
「そのね…だから、なぎさは指で……してほしいの?」
 少しドキッとして、なぎさがほのかの顔を見つめた。なぎさの視線を受けて、ますます困ったよ
うな表情になっていくほのかを前に、先程ローターで触られた胸の先がざわついてくるのを感じ
る。
 ほのかの慎ましやかな誘惑に、なぎさは可愛らしい朱の色を頬に乗せて、こくっと素直に頷い
てみせた。
「じゃあ、ベットに座って」
 なぎさがベッドに腰掛けると、すぐ傍らに立ったほのかが、そっと手を伸ばしてきた。
「…でも、服の上からじゃ感触鈍いかな? ……直接触ったほうがいい?」
「えっ…と、ア…アタシはどっちでも…てゆーか、その……あはっ…あははははっ…………」
 恥ずかしくて答えづらかったのか、視線をあらぬ方向にきょときょと泳がせた挙句に、笑って
誤魔化した。
(なぎさったら、顔真っ赤)
「やっぱり、直接のほうがいいよね」
 白魚を思わすほのかの繊手が、夏服のベストに掛かかる。途端に、恥ずかしさがいたたまれ
ないほど上昇し、なぎさは堪らず両目を瞑って視界を閉じた。視覚を取り払ったことで、ベスト
を脱がしていくほのかの手の運びが、過剰なほど敏感に感じ取れてしまう。ブラウスのボタンを
ひとつひとつ外していく動作にすら、喜悦の溜息を漏らして応えた。
「ブラも取っちゃうね」
 ほのかの言葉に、なぎさはビクッと体をすくませた。服を脱がされただけで、スポーツブラの
下に隠された乳首は、期待のあまり、ビンビンと疼いて硬くなっていた。
(脱がされただけで乳首勃っちゃうなんて…やだぁ、ありえな〜い! ほのかにこんなの見られ
たら……)
 まだ何もされていないのに、既に乳首を勃起させて待っているような娘を、ほのかはどう思う
だろうか。想像すると、恥ずかしくて死にそうになる。しかし、そんな羞恥に苛まれている心とは
裏腹に、まるで借りてきた猫のような無抵抗さで、おとなしくスポーツブラを脱がされていった。
「うぅ…!」
 噛み締めた歯の間から、嗚咽のようなうめきが漏れた。ほのかの目の前で、剥き出しになっ
た胸の先っぽがイヤラシク疼いている……今すぐ両手で隠したい。だが、体を支えるため背後
に突いた両腕は、硬直して動こうともしない。
(あぁぁんっ、もぉっ、ありえないありえないってばーッ!)
 硬くなった乳首に大切な親友の視線を感じ、素肌を晒した上半身をくねくねと身悶えさせる。
(でもでも…よく考えたら、ほのかには外でやってたトコ……あんな恥ずかしい姿見られちゃっ
てるんだし…うん、そうだよね。今更これぐらい、どうってことないよね?)
 ポジティブに立て直した思考で恥ずかしさを和らげるが、それでもまだまだ、眉をたゆませて
耐えている表情がいじらしい。
(ふふっ、なぎさって結構可愛い。乳首ツンとしちゃって……待ちきれなかったのね)
 なぎさが目を瞑っているのをいいことに、羞恥に耐える表情ををまじまじと覗き込んでいたほ
のかが、心の中でクスクスと微笑む。
(それにしても、なぎさの体って引き締まってて素敵。ほんとにスタイルいいなぁ)
 共に戦いを潜り抜けてきた親友の体を、正面から見える限り、隅々まで視線で撫でる。すらり
とした肢体に宿す、しなやかな戦闘力。無駄の無い、均整の取れた裸身を観察の目でなぞりな
がら、うっとりと溜息をつく。
(やだ…私、ちょっとドキドキしてきちゃった)
 なぎさの胸の上で、すべすべとしたラインを描きながら、小さく盛り上がる二つのふくらみ。未
成熟ながらも、健康的な色気を匂わす乳房が、なぎさの呼吸に合わせ、静かに上下を繰り返し
ている。ほのかはそっと手を近づけ、胸先で待ちわびていた突起に、軽く人差し指を触れさせ
てみた。
「あうぅっ!」
 乳首から響いてきた快感のショックに、なぎさの上半身がビクッ!とすくんだ。背後で体を支
えていた両腕が、いきなり崩れそうになる。
「気持ちよかった?」
 ほのかの問いに、なぎさはコクコクと夢中で頷いた。ほのかの指が離れてなお、胸の先で快
感が、じんじん・・・と切なく響いている。
 幼子のように素直な反応を返してくるなぎさがとてもいじらしく思え、ほのかの胸の内に愛しさ
が滲み出てきた。
 なぎさの胸に寄せた両手を、浅い谷間をまたいで実る瑞々しい果実に這わせ、それぞれの
指で左右の乳首を丁寧に摘む。快感に身をすくめるなぎさを慈しむように、親指と人差し指を
交互に優しく動かして、挟みこんだ硬い乳首をすりすりと揉み転がしていく。
「あ…ッ! そんなのされたら…やだっ…! ダメっ、変な声出ちゃうっ……」
「我慢せずに出して。いっぱい聞かせてほしいなぁ、なぎさのエッチな声……」
「あぁぁん…もうやだぁ……」
 なぎさの耳たぶに顔を近づけて、少し冗談めかした囁きを送ると、ほのかが思っていた通り、
恥ずかしさで真っ赤になった顔をしかめて、もぞもぞと裸身をくねらす。普段の弾けるような元
気っぷりとの落差があまりに初々しい。そんななぎさの可愛らしい姿にゾクゾクッ…と興奮を昂
ぶらせつつ、わざとイジワル気味な質問をしてみた。
「ねぇ、なぎさの大事なところって、今どうなってるの? 教えて。もう濡れちゃってる?」
「う…うん。濡れてる…と思う。だって…ほらっ、すっごく気持ちいいんだもんっ……」
 ほのかの声に含まれた興奮に感染したように、じっとりと熱っぽい声で言葉を紡ぐ。
「はぁ…ぁっ…きっと……ヌルヌルにいやらしくなってるよぉ……。やだ……、ほのかの前で…こ
んなの……恥ずかしくて死んじゃうっ……」
 乱れた喘ぎに埋もれてしまいそうな健気な声で答えるなぎさ。ほのかの背筋を、羽虫のざわ
めきのような官能が駆け抜ける。ごくっと唾を飲み下しても、まだ乾きの収まらぬ喉から、ほの
かはかすれた声を絞り出した。
「確かめても……いい?」
 鼓膜をくすぐるほのかの言葉に、潤み始めていた秘所が、ジュッ…と加熱された。なぎさは両
目を固く閉じたまま、緊張に強張る首を、ゆっくりと縦に振った。