fusion03

 胸先をいじっていた指が離れ、なぎさの膝の上に降りる。膝頭に這うこそばゆさに、なぎさは
ビクッと半裸の体を震わす。なぎさの太ももに沿いながら、ほのかの手がスカートの中を進入し
ていく。
「くっ…くすぐったいっ!」
 敏感な太ももの表面を這う親友の手の動きに、思わず大きな声を漏らしてしまう。上体をよじ
らせてくすぐったさを堪えるなぎさの我慢をよそに、ほのかの手が太ももをゆっくりと撫で上げ
ていく。
(そういえば、ラクロスの試合の時って、この脚であんなに速く走ったり、高く飛んだりしてるの
よね……。なんだか、なぎさの体って素敵なところばっかり……)
 柔らかな皮下脂肪の下に秘められている、鍛錬された筋肉のしなやかな硬さを確認しなが
ら、また、うっとりと溜息をこぼした。
「なぎさの脚って……すっごく気持ちいいね」
 すべすべとした太ももを、ほのかの手が舐めるように滑る。ほのかの手が動くたび、なぎさは
裸の上半身を、陸揚げされた若鮎のようにくねらせ、悩ましく身悶えた。
「ちょ…ちょっとぉー、ダメだよ…んっ、あぁん…っ!」
 ほのかは、その反応をゆったりと愉しみながら、なぎさの太ももをまんべんなく撫で回し、手
の平に跳ね返ってくるような厚い肉感を、飽きることなく味わい続けた。
 瑞々しい触り心地に踊る指先が、なぎさの両足の間へスルリと滑り落ちて、さらに敏感な内
太ももの皮膚をまさぐる。思わぬ寄り道を始めたほのかの手に、ついになぎさが抗議の悲鳴を
上げた。
「ひぃッ!? ちょ……何ッ!? マジくすぐったいってばッ! や…やだもうっ……」
 本来ならば、もうスカートの奥に到達しているはずなのに、なかなか来ようとしないほのかの
手に、焦れた腰の奥が可哀相なほど切なく疼き、なぎさの秘所を官能の毒でじんじんと責め苛
む。半べそをかくような表情で、なぎさの両目がうっすらと開かれ、潤んだ視線がほのかへと向
き合う。
 なぎさの哀れっぽい視線を受けたほのかは、心底申し訳なさそうに眉尻を下げながらも、ちょ
っとしたイタズラを見咎められた時の子供みたく、バツの悪そうな笑みを浮かべて謝った。
「ごめんなさいっ。なぎさの脚があんまりにも気持ちいいから、つい調子に乗っちゃって……」
「もおっ、ほのかってばぁ…」
 なぎさも視線を緩め、仕方ないなぁ…と相好を崩す。親しい者ならではの仲睦まじい雰囲気
に、興奮にのめり込んでいた二人の気持ちがほんわりとなごんだ。
「ほのか…早く来て。アタシが今どんな状態か分かるでしょ? ほのかが触ってくれるの、ずっ
と待ってんだから」
 腰掛けたベッドの後ろに両腕を投げ出して、さっきよりも体をリラックスさせた感じのなぎさ
が、スカートの下で脚を大きく広げた。上半身裸のまま、そんな開けっぴろげな態度を取る彼
女の姿に、ほのかが溜息と共に、諦めたような笑みをこぼした。
「もう……なぎさったら。はしたないわよ、そんな男の子みたいに…」
 交わした視線で微笑み合いながら、ほのかがなぎさの体にかぶさるように身を乗り出した。な
ぎさの膝に片手をついて、もう一方の手をスカートに潜り込ませる。
「……それじゃ、さわるから……いい?」
「うん…お願い」
 蒸れた下着の生地に、ほのかが指先を優しく添わせた。ビクッ!と一瞬、大きく体を跳ねさせ
たなぎさが、股間に触れてるほうの腕の半袖をキュッと掴んできた。声もなく、間近で引かれ合
う二人の瞳が、興奮で潤んでくる。
 はふっ…と漏れたなぎさの熱い吐息が、ほのかの頬をくすぐった。
「ねっ、濡れてるでしょ?」
「うん、濡れてるし……なぎさのここ、すっごく熱くなってる」
 温もりのある愛液が浸透して、じっとりと湿った下着越しに、初めてさわる他人の秘所をおず
おずとまさぐっていった。ぷっくりと柔らかい恥丘から火照った股間の奥へ、下着の上からゆっ
くりと秘所をなぞって往復を繰り返すほのかの手に、なぎさの愛液が染み付いてくる。
(なぎさ……こんなに感じちゃってる)
 ぞくっ…と腰の奥で疼いた妖しい快感に、ほのかはキュッと両脚を閉めた。気持ちよさに溶け
てしまっているなぎさの表情が、悩ましくほのかの興奮を刺激する。
(私も…感じてきちゃったみたい……)
「ほのかの顔、なんか…いやらしくなってきてる」
「だって…エッチなことしてるんだもん…そんなの当然じゃない」
 陶然とした表情で囁いてきたなぎさに、ほのかが艶然と微笑み返した。
「それに……なぎさのほうが、ずっといやらしい顔してるってば」
 いったん、まさぐる手の動きを止めて、なぎさの上気した表情を窺いながら、そーっと下着の
中へ手を差し込んでいく。恥毛の繁みを抜け、ゆっくりと奥へ侵食し、淫らな蜜でぬめった縦筋
に指を滑らせた。
「ン゛…ッ! あああんッ! ほのかぁぁっ、そこぉっ…!」
 股の間にムズムズと溜まっていた性欲が、快感によって引火した。全身に弾ける官能のショ
ックに、大きな嬌声上げ、たまらずほのかの体にしがみついた。
「きゃっ! なぎさ……落ち着いて。これから、ちゃんと気持ちよくしてあげるから、ね?」
 転がり込むように身を預けてきた親友を、優しい声音でなだめる。そして、彼女の膝について
いた手を背中に回し、上半身を支えてやりながら、そーっとベッドの上へと倒していった。
 仰向けに寝転がったなぎさが、汗ばんだ額にかかる前髪をかき上げ、酔いが回ったような艶
っぽい眼差しをほのかへと向ける。なぎさが覗かす女っぽさに、ほのかは女芯をゾクゾクと呼
応させつつ、ベッドからはみ出している両脚の間に体を割り込ませた。
(なぎさったら、ホントに気持ちよさそうな顔して……いいなぁ。私だって……)
 先程から股間の奥が、ほのかを急かすように熱くなってきている。スカートの下で、カタチの
いい尻をもぞもぞと動かしながら、何とかこらえてはいるが…………。
(ほら……ね? もう大変なんだから)
 声に出さず呟いて、なぎさに分からないよう、こっそりと苦笑した。
「……続けるよ、なぎさ」
 とろりと潤んだ秘所に、丁寧な指使いで優しい刺激を送り始めた。快感がオーバーヒートして
しまわないよう、なぎさの体の反応に注意して、時折、秘所に走らす指のリズムを緩める。
「んっ…あっ、……くぅっ! はぁっ、あぅ…ん゛…気持ち…いいっ……っ!」
 発情したメス猫のような声で喘ぐなぎさの表情が、だんだんと艶かしく色気づいていく。腰を溶
け崩してしまいそうな快感が、愛情のこもった指の動きによって掘り起こされる。
 ほのかは下着の中に差し込んだ手を、姫君に仕える侍女のようにかいがいしく動かしなが
ら、愛液のまとわりついた指で、なぎさの幼い陰核を探り当てた。
「あぁッ! ほのかっ、そこいじっちゃダメっ! なんか…変になっちゃうのっ!」
「大丈夫よ、ここはね…こうやって優しく扱えば……ほら、ね? 気持ちいいでしょう?」
 思わず体をよじって逃れようとするなぎさに、落ち着いた手付きで愛撫を続ける。敏感なクリ
トリスを刺激しすぎないように、指の腹でゆっくり撫で転がし、そっとさすり上げる。秘所を蕩か
すように沸く快感に、甘い声を上げて悶えるなぎさを見て、ほのかは心からの嬉しそうな笑みを
浮かべた。
(こんなにいっぱい感じてくれて……。私の手、なぎさが気持ちよく溢れさせた液で、すっかりび
しょびしょ……。あぁ、私も早くしたいなぁ……)
 なおも続くほのかの愛撫に、湧き出る愛液は止むことなく、なぎさの下着を湿らせ続けてい
た。
「なぎさ、下着……脱いじゃおっか? もうだいぶ濡れてきちゃってるみたいだけど」
「うん……なんか、おもらししてるみたいで気持ち悪いし……。ついでにスカートも脱ぐよ。こっ
ちも濡れちゃいそうだから」
 スカートのホックに手をかけつつ、気だるげに上体を起こしたなぎさが、下着を脱がそうとす
るほのかのために、軽く腰を浮かせた。
「ほのか……その、恥ずかしいから、あんまし前見ないでね」
「平気だってば。女の子同士でしょ」
「いや……だからってさ……」
 なぎさの足首からショーツを抜き取るために、ちょうど正面に身を屈めたほのかに、上気して
いる頬をさらに赤らめて、言葉を詰まらせた。スカートも取り払ってしまい、なぎさの一番恥ずか
しい部分が親友の目に晒されていた。
 ほのかから視線を逸らし、そっと手の平を被せて股間を隠す。
「…て、てゆーか、ほのかぁ、なんで靴下まで脱がそうとしてるワケ?」
「だって、ここもずいぶん汗ばんでるわよ……ホラ」
 履いている靴下がじっとりと蒸れてしまっているのを証明するように、ほのかの手が、さぁーっ
と滑るように足の裏を撫でる。瞬間、足の指がビクッ!とバネ仕掛けのように縮こまり、体をよ
じらせたなぎさが、引き攣った笑い声を弾けさせた。
「ひゃはははははッ!? ほ、ほのか…殺す気っ!?」
「ちょっと大袈裟すぎよ、なぎさ」
 何事も無かったかのようにさらりと流して、蒸れた靴下を脱がしにかかった。
「……ゴメンね、アタシの靴下…ちょっと臭うんじゃない?」
「ううん、全然」
 もう片方の足の靴下にも手をかけながら、本心とは違う答えを返した。
(ホントはちょっと臭うけど……なぎさの匂いなんだって思うと全然嫌じゃない。むしろ、もっと嗅
いでみたい…なんて言ったら、絶対変に思われちゃうんだろうなー)
 脱がし終えた黒いソックスを、名残惜しげに手放しながら、一糸纏わぬ姿となった親友へ向
き合う。申し訳程度に股間を隠し、微妙な上目遣いではにかむその可愛らしさに、ほのかの胸
が高鳴りを覚える。
(ホントに可愛いなぁ、なぎさって……)
 ふわり……。
 そよ風のように優しく、なぎさの裸身が、ほのかの両腕の中に包みこまれた。
「ちょっとだけごめんなさい。……少しの間だけでいいから、こうさせていて……」
「う、うんっ、いいよ…」
 間近で嗅ぐほのかの髪の匂いが、蠱惑的に鼻をくすぐってくる。ゆったりとした抱擁に囚われ
ながら、どぎまぎとなぎさが答えた。
「は…ははっ、な…なんかこれってさ、恋人同士みたいだよね……」
 なぎさが冗談めかすも、ほのかは無言で、両腕を少しきつく背に絡ませてきた。その動作に、
なぎさの胸が、急に痛いほどの切なさに突かれた。
(なにこれ……胸が苦しくなって…締め付けられてくみたい……。やだっ、アタシ…変にドキドキ
しちゃってる……!?)
 汗ばんだ背を撫でていくほのかの手が、心臓の裏にあたる位置を這うと、一瞬、なぎさの呼
吸が止まった。肋骨の内側で跳ねるように高まっている鼓動を悟られてしまったのではないか
と、なぎさは妙な焦りにとらわれた。
(うそっ、ちょっと待ってよ。なんで…なんで今、アタシ泣きそうになってるのっ!? 胸が……、
胸がすごく痛い……苦しい……)
 凪のように穏やかな抱擁の中で、激しい動揺がなぎさを翻弄する。湧き上がってくる感情に
胸が溺れ、喘ぐように開いた口から、無意識に声がこぼれた。
「やだ…苦しい……」
 その小さな呟きにハッとなって、とっさに腕を解こうとしたほのかに、なぎさが慌ててすがりつ
いた。
「あッ、違うのっ。そのっ…胸が……、胸が……」
 喉が詰まってしまい、それ以上は言葉にならない。もはやほのかを直視することも出来ず、
かぁ〜っと熱くなる顔をあらぬ方向に逸らして、ただ、ほのかがしゃべってくれるのを待ち続け
た。
 震えが……とても小さくて健気な震えが、ほのかの手に伝わってきた。
 最初は、自分もなぎさと一緒なのだということを示して、元気を取り戻してあげたかった。そし
てそのまま、つい、のめり込んでしまい、ただ気持ちよくなることに夢中になっていった。一番大
切な友達であるなぎさが自分の手で感じてくれるのが無性に嬉しくて……そんななぎさがたまら
なく愛しく思えて、夢のような享楽に心を委ねている間に…………行き過ぎてしまったのだろう
か。二人でまどろんでいた幸せな時間が、波のように引いていく。
「…………ごめんなさい、なぎさ」
 力を無くしたほのかの言葉に鼓膜を打たれ、なぎさは慌てて言葉を返そうとするも、声の出
ぬ喉では儘ならない。子供のように頭をぶんぶんと左右に振ることで、ほのかに意思を伝え
た。
(なぎさ……)
 腕の内に収めた大切な宝物に、ほのかは優しく語りかけた。
「なぎさはどうしたいの? 私ね、なぎさのしたいことなら、何だってしてあげたいの……」
「わっ…わかんないっ、そんなのことっ!」
 戸惑っていた気持ちが窮まった挙句に癇癪を起こし、なぎさの喉につかえていたものを吹き
飛ばしたようだった。荒々しい口調で、ほのかに向かって苛立ちをぶつける。
「ア…アタシに聞かないでよっ! アタシと違って頭いいんだから……ほのかが考えてよっ!」
 奔流となって溢れる激情のままにほのかと顔を付き合わせ、そして、すぐさまバツの悪そうな
表情に転じた。
「ご…ごめん、ほのか。アタシ……」
 一気に興奮が昂ぶってしまったため、感情が混乱して、目尻に涙が浮かんできた。
「アタシ……おかしいよ……。なんか…もうダメなの。胸がすごく痛くて……自分が何したいか
なんて考えられないの……」
 喉までせり上がってきた嗚咽をこらえながら、震える言葉を紡ぐ。
「だ…だからっ、ほのかが…決めてよ。ほのかが決めたことに…絶対文句なんて言わないか
ら。ほのかとだったら……ほのかとだったら何だってしていい。本当にアタシ…約束するから…
…」
 目尻に溜まっていた涙の粒が少しずつ大きくなって、表面張力の限界を超えたあたりで、ぽ
たり…と落ちた。
「…………また泣いちゃったね、なぎさ」
 悲しげに視線を落としていたなぎさが顔を上げると、本当に優しい……何もかも委ねられそう
な表情で、ほのかがとても綺麗に微笑んでいた。
「じゃ、続きする前に、もう一回泣いちゃお……。さっきみたいに、私が抱いていてあげるから」
「でも…でも、ひくっ…、また…ほのかの服が…濡れちゃうよぉ…」
「いいってば、そんなの気にしなくて」
 微笑するほのかが、ぽろぽろと涙を流し始めたなぎさを抱き寄せた。こうやって二人一つに
なっていると、切なさをくすぶらせていた胸が、とても穏やかに落ち着いていく。嗚咽にむせぶ
なぎさをギュッと抱き締めながら、お互いの頬をすり寄せて囁いた。
「私、大好きだからね、本当になぎさのこと大好きだからね」
「……うん。アタシもほのかのこと、……ひくっ……大好きっ」