fusion06

 少し安心したのか、徐々に力を解いていくなぎさの体に、ほのかの両腕が愛しげに巻きつけ
られた。涙にぼやけた視界になぎさを映しながら、ぐしょぐしょに濡れたままの顔に華の笑みを
咲かせ、ほのかが甘い声でおねだりした。
「あのね……私、なぎさとキスしたい……」
 目蓋を下ろすと、溜まっていた涙が真珠の粒のように目尻からこぼれ落ちていった。そのま
ま両目を静かに閉じ、なぎさに唇を捧げる瞬間を待った。
 いじらしく待ち続けるほのかの表情に、まぶしいものでも見るかのようになぎさが目を細めて
微笑む。そして、この幸せな時の一瞬一瞬を思い出に刻んでいくかのごとく、ゆっくりと唇の距
離を縮めていった。
 ほぼゼロに近い、紙一枚ほどの距離で二人の言葉が重なった。
「……じゃ、するよ」「うん……」
 なぎさの両目が閉じられ、瑞々しい唇同士がひとつに溶けた。柔らかい……それだけが、な
ぎさにとっての初めてのキスの感想だった。優しい余韻を唇に残しながら、ゆっくりと顔を離し
ていく。うっすらと目を開いて、ほのかを顔を見つめ……そこで急に心臓が早鐘を打ち始め
た。
(えぇっ!? 今頃になって胸がドキドキしてきたよ……)
 キスの余韻から醒めた眠り姫が、急速に上気していくなぎさの顔を見て、ニッコリと微笑ん
だ。
「どっ……、どうっ? 良かった?」
 思わず下らない事を訊いてしまってから、慌てて取り繕おうとしてオロオロしているなぎさの姿
に、ほのかはクスクスと笑いで表情を綻ばせた。なぎさがこれ以上取り乱さないうちに、今度は
ほのかのほうから顔を近づけていった。なぎさは慌ててギュッと両目をつぶった。
 ほのかにとって二度目のキスは、蜂蜜のように柔らかかった。胸にジ〜ン…と染み渡ってくる
陶酔感に体が脱力してしまう。離れていくほのかの唇に、なぎさが追いついてきた。恋人に両
肩を抱かれながら、唇が甘ったるく溶け合っていく感触に浸る。
 二人はベッドの上で裸身を重ね合わせ、ゆったりとキスを楽しんだ。そのうち、キスに酔った
のか、なぎさの体から力が抜けて、心地よい重みがほのかの肢体にかかってきた。ほのかの
唇の柔らかさに溺れて、なぎさの唇が弛緩する。顔を動かし、より深くひとつになろうと深いキ
スを求めてくるなぎさの唇から、生ぬるい唾液が洩れてきた。舌先で受けたそれを、ほのかは
ゆっくりと嚥下してみた。
(なぎさの唾……飲んじゃった……)
 そっと両目を開けて様子を窺うも、なぎさがそれに気付いた様子はない。再び目を閉じたほ
のかが、すぼめた舌をなぎさの口内へと伸ばす。喘ぎで大きく割れた唇をこっそりと抜け、盲目
の状態で唾液の滴りを探るほのかの舌に、何も知らないなぎさの舌が触れて、二人同時にビ
クッ!となった。驚いたなぎさが両目を開くも、すぐにほのかの舌だと理解して、安心したように
目蓋を下ろす。
 驚いた拍子に舌を抜いてしまったほのかが、再びなぎさの口内に舌を差し込んでいった。唇
を開いたまま、じっとしてくれているなぎさの口内を、今度は少し大胆な動きで探ってみる。白い
歯並びや健康的な歯ぐき、柔らかな頬の内側をゆっくりと舌でなぞっていく。
(なぎさの口の中……、なぎさの味がする……)
 いったん舌を引いて、自分の口の中に「なぎさの味」を転がしてみる。味覚的には全くの無味
だが、口の中でそっと溶けるような、優しい官能の味わいに頬が緩む。
(なぎさの……もっと欲しい……)
 歯並びを越え、さらに奥へと舌を入れる。ほのかの舌先が、なぎさの舌をちろり…と舐め上
げた。突然のくすぐったさに、なぎさの舌が奥へ逃れようとするも、所詮は狭い口の中だ。すぐ
にほのかの舌に捕まって、絡めとられてしまう。
(やだっ、ほのか…何する気よっ!?)
 唾液でぬめる舌が、何度もなぎさの舌に絡み付いて、ほのかの口の中へ吸い上げようとして
いた。最初は事情が分からず足掻いていたなぎさの舌も、徐々に落ち着きを見せ始め、その
少々強引なエスコートに従ったまま、恋人の口の中へと招待されていった。
(ほのかの口の中に…舌入っちゃったよ)
 ほのかの口の中で、なぎさの舌が丁重なもてなしを受ける。ほのかが、舌先をちろちろっと踊
らせ、なぎさの舌の前も後ろも洗っていく。「んぅー…んんー…」とくぐもった声を上げながら、な
ぎさがこそばゆさを我慢する。そして、綺麗になった(?)なぎさの舌に、ほのかの舌が絡み付
いてきた。舌全体を擦り付けて、なぎさの舌をきつく抱き締めながら、その弾力のある柔らかさ
をむさぼった。
「んむぅーっ!」
 舌を強く引っ張られ、なぎさが思わず呻き声を出した。少し乱暴なほのかに、言葉無き抗議
だ。それを受けて、ほのかがなぎさの舌を解放したが、ディープキスを解く気配はまだ無い。ほ
のかの口内で、なおも享楽は続く。ねっとりと糸を引くような淫らさを孕む動きで、なぎさの舌が
ゆっくりと舐め回された。
「ん……んっ!」
 密着した口から、なぎさの喘ぎが漏れた。これまで味わったことのない柔らかな刺激の責め
に、ビクッ!となった舌が反射的に自分の口の中へ引っ込んでしまった。しかし、一呼吸も置
かずにほのかの舌が口内に押し入ってきて、なぎさの舌を絡め取る。
「ん゛…ッ」
 ほのかの頬がすぼんで、ぢゅぢゅ…っという唾液が擦れる音と共に、なぎさの舌が再びほの
かの口内に吸い出された。母乳をねだって、さんざんほのかの胸先に吸い付いていたなぎさに
倣い、彼女の舌を執拗に吸いしゃぶった。
(そういえば、牛タンて、ぷりぷりしてて美味しいよねー…)
 舌をしゃぶられながら、なぎさの口元が緩む。この性的な興奮を喚起すべき状況で、舌という
キーワードから、網焼きにした牛の舌肉の弾力ある歯応えを思い出すのが、何ともなぎさらし
いと言うべきか。牛タンの記憶と共に、猛烈に湧いてきた唾液がだらりと一斉に唇を垂れ、重
なり合っているほのかの唇へと流れ込んでいった。
「うっ…」
 キスを続けたまま、なぎさが短くうめいて両目を開く。その声にほのかも目を開けて、至近距
離で視線を交し合う。
(ごめん、ほのか。ほのかの口の中に涎垂らしちゃった)
(うん。飲んじゃった)
(ええっ!?)
 視線で謝るなぎさに、さらりと視線で答えるほのか、さらに視線で驚きを伝えるなぎさ……と、
言葉の無い会話を淀みなく行う二人。
 まじまじとほのかを見つめ返していたなぎさが、しばらく迷った後、自分の口蓋に舌を走らせ
て刺激し、唾液を湧かせる。口の中にたっぷりと唾液を溜めて、口移しでほのかの口内に流し
込んでいった。
(なぎさの唾が、こんなにいっぱい…)
 自分の唾が混じらないうちにと、急いで喉の奥へと送り込む。ごくりと飲み込んだ先で、喉越
しが歓喜を訴えてきた。
(美味しいっ……)
 被さっているなぎさの顔を押し上げる勢いで、ほのかが激しく唇を押し付けてきた。心の底か
らの嬉びの表現だが、キスの過熱っぷりにさすがに辟易としたなぎさが、そのまま背を仰け反
らせ、ほのかの唇から逃げ出した。
「ぷはっ。もう、ほのかってば…ちょっと激しすぎ」
 少し身を起こそうとしたなぎさだが、それを阻止するように、背に回されていたほのかの細腕
に力がこもる。なぎさの背で、自分の両手の指を深く絡ませ合ってガッチリと施錠。軽く何度か
脱出を試してみたなぎさが、諦めたように溜息をついて、再びほのかの身体の上にしなだれか
かった。
「はぁ……分かったわよ。でも、そんなにアタシの唾って美味しい?」
「うん、美味しいよ。なんていうのかな、ん〜、コクが深いっていうか……。それにね、なぎさが
出してくれたものを飲むことで、体の深い部分まで、大好きななぎさと繋がることができるような
気がするの。なぎさのエキスが体の中で吸収されて、私の全身に溶け込んでいくってカンジか
な」
 ふ〜んと耳を傾けていたなぎさだが、突如、天啓のごとく閃いた発想に顔を輝かせた。
「ほのかっ、飲むのよりも大胆なこと……二人でやってみない?」
 何をするのか分からないまま了解したほのかが、腕による拘束を解く。ベッドの上に身を起こ
したなぎさが、ほのかの両脚を割って、愛液の蜜にまみれた性器を覗き込んだ。
「あっ…」
 なぎさの指が、性器にこびりついていた蜜を丁寧にふき取っていく。性器に這う指の動きに、
ほのかがか細い声を上げた。快感のくすぶりに、また、膣がしっとりと潤みだした。
 ほのかの秘所に這うなぎさの指が、そっと陰部の割れ目を裂いて、処女の粘膜をさらけ出し
た。
「見てて…」
 下を向いてすぼめたなぎさの口に、細かい気泡を無数に含んだ唾液が盛り上がり、糸を引き
ながら、ほのかの膣口へと落下していく。ほのかの見ている前で、二度三度と唾液の塊が性器
へと垂らされた。溢れてこぼれそうになるのを、なぎさが手を当てて蓋をする。
「ほのかが大好きなアタシの唾……、ほのかの一番大事なところに擦りこんであげる」
 なぎさの言葉に、ほのかの裸体が淫らな歓喜でぶるるっと震えた。誘惑に堕ちた天使の表情
で、うっとりと両目を閉じる。
 裂いた割れ目を片手でホールドしながら、ぐちゅっ…ぐちゅっ…と唾液を押し潰す音を立て
て、ほのかの秘所を愛撫していく。押し当てた手の平をゆっくりと動かして、膣口に溜まった唾
液を粘膜に擦り付け、ほのかの膣肉に染み込ませようとする。尻の谷間へ滑り落ちていこうと
する唾液も、残らず指ですくい上げられ、膣穴の奥へと押し込まれた。
「はッ…ああ゛っ……」
 ぞくぞくっ…とほのかの膣が快感に疼き、腰の奥から淫靡な熱が滲んできた。汗をかくよう
に、たらたらと愛液が分泌され、なぎさの唾液と混じりあう。